中高一貫生の指導のコツを掴んだ2年間

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2025/5/12

最初の勤務校はちょうど20年勤務しました。


この学校は、完全中高一貫制の学校でした。中学1年生で入学した生徒達は、そのまま6年間、メンバーの出入りが一切なく高校3年生の卒業を迎えることになります。


幸い私は、勤務して1年目2年目に私立理系クラスの高校2・3年生の担任をさせていただき、卒業生を出すことができました。実は、高2から高3に進学する際、経験不足が故に担任変更を示唆されたのですが、クラスの生徒達の数学の模擬試験の結果が非常に伸びていたという事実があり、継続して担任をさせていただくことになりました。


中高一貫校では、長い場合は中2から高2まで「中だるみ」期間に入ってしまうことがあります。このクラスの生徒達も長い長い低迷期があり、学校の中では課題とされていたクラスでしたが、うまく上昇気流に乗せることができたのだと思います。私は経験が浅かったので、至らない点が多々あったと思いますが、生徒達とは年齢が近く、いい関係が築けました。


幸い、私立型クラスにも関わらず、大阪市立大(現大阪公立大)の理学部数学科に合格するなどの国公立大合格者も数名出ましたし、関西医科大医学部医学科へ合格した生徒もいました。また、自クラスの生徒ではありませんが、教科担当者として、京都大や大阪大、神戸大の合格者と携わることができました。


中高一貫校の場合、進度がとてもはやく、中3で高校1年生の数学Ⅰを履修する、というのが一般的です。数学Ⅰは高校数学の礎となるような重要科目ですが、この時期がちょうど中だるみの多い時期でもあるので、ここでつまづいて後々まで尾を引いてしまう、というのがよくあるケースです。


私のクラスに、最終的に上智大学に現役合格した生徒がいたのですが、受験期直前になって、実はこの生徒が超基本事項である「たすき掛け」の因数分解がまったくできない、ということを知って驚いたことがありました。彼も、中学時代から高2まで、一切勉強をしない生徒だったようです。彼の場合は幸いにして事なきを得たのですが、積み重ねの教科である数学の場合、一度躓いてしまうと、それが後々まで大きく引きずり、伸び悩みにつながるケースがあります。


最初の生徒達の指導を通じて、中高一貫生のこのような特性を肌で感じ、その指導のコツをつかむことができました。感覚的な話になりますが、「何度も重ね塗りしながら、徐々に絵を完成させていく」というイメージです。知識を習得する際は、「1段ずつ積み重ねていく」というのが理想ではあります。ただ、それがうまくできないままドンドン進んでしまって自信をなくした生徒達は、過去の知識とつなげながら不足している知識を補っていく、という作業が必要です。教員としての最初の2年間で、この手助けをすることが自分自身の得意分野になったように思います。


公立高校出身の自分自身にとって、最初はカルチャーショックの連続だった私学の世界でしたが、その後どっぷりとその世界に浸り、今ではむしろ「自分の体には私学の血が流れている」とすら思っています。長年、この世界でやってこれたのも、最初の生徒達の指導を通じて手に入れたスキルのおかげです。生徒達には本当に感謝しています。

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