“自由時間”が不登校を長引かせる甘いワナ
2025/5/16
はじめに
「ねえ、明日学校どうする?」
「行こうかな…?」
翌朝、もう一度声をかけると――
「やっぱり行きたくない…」
「そうか。わかったよ」
そう言うだけで、子どもはリビングのソファに沈み込み、スマホを手にゲームの世界へ――。
「好きにさせているだけ」と思っている親心。しかし、その何気ない一言が、子どもの生活リズムを夜型に傾け、不登校を長期化させる“甘いワナ”の始まりなのです。
この記事ではその“甘いワナ”について、データと実例を交えて明らかにしたうえで、解決の糸口となる朝のルーチンについて考えていきます。
- 「自由時間」を無制限に与えた結果、どのように一日が崩れていくのか
- ただ好きにさせるだけでは解決にならない理由
- 朝のルーチンがもたらす3つの効果
- 実践ガイド:生活リズムを整える「朝のルーチン」例
- ルーチンを定着させるコツ
1.データで見る「生活リズムの乱れ」と不登校の長期化
文部科学省の調査によると、2023年度に不登校となった児童・生徒のうち約23.0%が「生活リズムの乱れ」を理由に挙げています。夜更かしやゲーム依存などが背景にあるケースが少なくありません。
さらに、同調査では小・中学校の不登校児童生徒数は過去5年間で一貫して増加。2024年には前年度比22.1%増の約30万人となり、そのうち55.4%が90日以上の長期欠席を続けています。生活リズムの乱れがそのまま長期不登校につながっている実態が見て取れます。
2. 「好きなことをさせる」だけでは解決しない現実
「学校に行かない=自由時間」と捉え、ゲームやスマホを無制限に許してしまう家庭もあります。しかし、過剰なインターネットゲームやスマホ利用は、むしろ精神的・社会的問題を深刻化させるリスクがあります。NPO次世代育成協会によれば、ゲーム依存は「否認の病気」と呼ばれるほど自覚が難しく、放置すると将来的に中高年のひきこもりや精神疾患にまで至るケースがあると指摘されています。
実際に、スマホ・ゲーム障害では成績低下や遅刻、不登校などの問題行動が多く報告されており、夜間まで画面を見続けることで睡眠の質が低下し、生活リズムがさらに乱れてしまいます。
3. 朝のルーチンがもたらす3つの効果
生活リズムを整えるカギは「朝のスタートダッシュ」にあります。
1.生体リズムのリセット
朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、夜の睡眠の質向上につながります。
2.心理的安心感の醸成
「これをやれば大丈夫」という小さな習慣が、本人に“安心感”を与え、前向きな気持ちで一日を始められます。
3.親子のポジティブなコミュニケーション
一緒に行うルーチンは、プレッシャーをかけずに声かけやスキンシップの時間を生み、子どもの自己肯定感を高めます。
4. 実践ガイド:生活リズムを整える「朝のルーチン」例
以下のようなルーチンを、まずは週に3~4回から取り入れてみましょう。ハードルは低く、「これならできそう」と思えるものを選ぶのが続けるコツです。
POINT
①は体内時計のリセット、②③は「できた!」の達成感、④⑤は親子の絆強化に有効です。
朝の声かけは「学校の話題」を避け、「気持ちよく起きられたね」など肯定的な言葉を意識しましょう。
5. ルーチンを定着させるコツ
1.小さな成功体験を重ねる
毎朝できたら手帳に✔︎をつけたり、カレンダーにシールを貼ったりする。
2.無理強いはNG
できない日があっても気にせず、次の日に切り替える。
3.家族で一緒に取り組む
講師としての私も、家庭でのコミュニケーションが何より大切だと考えています。
まとめ
「生活リズムの乱れ」は、不登校の長期化を招く大きな要因の一つです。しかし、朝のルーチンを整えることで、体内時計の修正はもちろん、子どもの安心感・自己肯定感を育み、親子のコミュニケーションを深めることができます。
ぜひ今日から、無理なく取り組める朝のルーチンを実践し、“学びって面白い”と感じられる一歩を踏み出しましょう。
※本記事のデータは、文部科学省「児童生徒の問題行動等に関する調査」および各種専門機関の報告をもとに作成しています。
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