2026共通テスト第二問~リード文を「読む」こと~
みなさんこんにちは。マナリンクで国語を教えている島田です。
最近、「表現」ばかり扱ってきたので、今回は「文章自体」の気づきを行う訓練をしましょう(^^♪
今年の共通テスト第二問小説分野のリード文を読んでみると、ひとつ「おかしなところ」があります。
みなさんはそこに気づくでしょうか?(「おかしさ」とは何かについても自分なりに基準で考えてみましょう)
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第二問リード文
次の文章は、遠藤周作「影に対して」の一節である。小説家志望の勝呂は、現在、翻訳の仕事で生計を立てている。そのなかで、彼は母のことを思い出して現在の自分の生き方について考えるようになる。本文は、戦前の中国大陸で過ごした少年時代に病気で入院した時の回想から始まっている。これを読んで後の問に答えよ。
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どうでしょうか? ん? と思うところはありますか??
これを、リード文を読んだ瞬間に感じ取る力が、文章を読むことの本質だと思います。
つまり「設問を読んでから気づくのではなく、文章を読んだ瞬間に、何かに気付くこと」それが読むことです。
ここで大切なのは、「ふつう」ならわざわざ書く(言う)必要がなさそうなことをなぜ書いているのか(言っているのか)を読むことです。
小説の問題は、長編の小説の一部を抜粋して書かれるものなので、いまどんな場面なのかを説明するのが「ふつう」です。
ですので、勝呂の仕事は、翻訳業で、母を思い出している話ですよ、そして満州で入院した時の場面から始まりますよ、と書くことは「ふつう」です。
ですが、「小説家志望」となぜわざわざ書いているのか。このことに「?」とフックをかけましょう。
そしてあわよくば、ここが何かヒントになっていそうだ、と考えることが大切です。
このような「なぜ」という疑問を文章に抱きながら(問題と関係してくるかどうかは別として)、本文を読んでいきます。
そうすると、本文の中に、勝呂が翻訳の仕事で臨時収入を得て、家族だんらんをする場面が書かれた後、
「彼は心の中で、こういう生活がなぜ悪いんだ。なぜ今更、小説を書く必要があるんだ。」
という記述があります。
本文に「小説」を書こうとする人物であることは書かれています。
なのに、わざわざリード文に「小説家志望」と書いている。やはり奇妙だ、とここで疑問が確信に変わりはじめます。
そこで、リード文の意図を理解しましょう。
「<小説家>志望なのに、<翻訳>で生計を立てていること」
こういうメッセージをリード文は伝えたそうです。そしてこれが設問の解法に、あからさまに影響を与えない範囲で、ほのめかそうとしているリード文だということに私たちは最初の疑問から気づいているべきなのです。
そうすると、
息子:小説家志望(理想) 翻訳(現実)
母 :ヴァイオリニスト(理想) 主婦(現実)
という符号を見つけ、「昔母のヴァイオリンを否定していた自分がいま似たような志を持って小説を書こうとしていること」に罪悪感を感じ、「母の死に顔が残酷に自分の脳裏によみがえってくること」、をこの小説に読んでよいことに気づきます。
だから「残酷」さは、
「自分が今やろうとしていることは、昔自分が否定したこと」であり。
「自分がやりたいことを自分はやってはいけないように迫ってくる残酷さ」なのです。
これらを踏まえて、問を解いてみると、問題を作成した人の意図を私たちは読むことができます。本文を読んで、書かれてあることを踏まえるのは当然ですが、書かれていない文章の意図、作成者との対話、を深く読み込もうとするあなたの感性は、「客観的に読めることしか読んではいけないよ」という構造読みにつぶされる必要はないんです。
あなたが疑問に思ったことは、間違っていません。
それらを適切に使いこなし、主観を持って、文章=問題作成者と対話しましょう(^^♪
それが「読むこと」だと思います。