やる気がないから成績が上がらない、ではない。逆だ。
中学受験の相談を受けていると、ある種のセリフを判を押したように聞く。
「うちの子、やる気さえ出てくれれば…」
僕はこれを聞くたびに、心の中でため息をつく。やる気が先に来ると思っている限り、この子の成績は上がらない。構造から間違えているからだ。
「やる気待ち」という永久機関の不在
やる気が出たら勉強する。勉強したら成績が上がる。成績が上がったらもっとやる気が出る。
理屈の上では美しいサイクルだ。ただ、最初の「やる気が出たら」という前提が、どこから来るのかを誰も説明しない。
小学5年生の男の子が、自分から「よし、中学受験の算数を頑張ろう」と思い立つ瞬間を待ち続けた家庭を、僕はまだ見たことがない。そもそも、9割以上の受験生は中学受験をやりたくて始めたわけではない。やりたくない子供を動かすのが中学受験だと、まず前提を改めた方がいい。
先にやる気を出そうとすること自体が間違い
先週、ある保護者と初めて話した。算数が不安定で、国語は偏差値70近くある小5の男の子の話だった。
「やる気がなくて、復習もせず、粘り強さもなくて」と、お母さんは続けた。
僕が聞いたのは、「解答解説を見て、分かったという経験はありますか?」ということだった。最近、理科のテコの問題を誰にも教えてもらわずに、自分で答えを見ながら解いたら、ある回で90点台を取った、という話が出てきた。
これが全てだ。
勉強が楽しくなくても、やる気がなくても、結果が出た。その瞬間、子供の中で何かが変わる。「あ、俺ってやれるじゃん」という、いい意味での勘違いが生まれる。
この勘違いこそが、本物のやる気の正体だ。
成績が上がるから、やる気が出る
大人が理解しなければいけない因果関係はシンプルだ。
やる気があるから成績が上がるのではない。成績が上がるから、やる気が出る。
低い成績のまま「もっと頑張ろう」という気持ちを持ち続けることは、子供には不可能に近い。大人でも難しい。結果が出ない努力を続けさせることは、精神的な消耗でしかない。だから、最初に必要なのはやる気の醸成ではなく、強引にでも結果を出させることだ。
具体的に言えば、週テストで10点でも20点でも上げることだ。問題の範囲を絞る、過去問を反復させる、大問の小問を1分未満で解けるまで繰り返させる。方法は問わない。とにかく数字を動かす。
数字が動いた瞬間、子供は変わる。
大人が全力で「勘違いさせる」
保護者が担う役割は、モチベーションを語ることではなく、環境を作ることだ。
勉強する習慣、決まった時間、明確な目標。やる気が出るのを待つのではなく、やらざるを得ない状況を先に用意する。その中で小さな成功体験を積み重ねる。これが唯一機能するサイクルだ。
「うちの子、やる気さえ出てくれれば」という言葉の裏には、子供に自発的に変わることを期待している親の受け身が透けて見える。中学受験において、受け身は機能しない。
小学生の脳はまだ可塑性がある。今いる環境や周囲の働きかけで、ガラっと変わる。中学以降は自我が固まってくるから、そういうわけにはいかない。今だからこそ、大人が強引に結果を出させることができる。
勉強マシンに変わった子供が、中学に入ってのびのびと楽しむ。その順番で動かすのが、僕の仕事だと思っている。
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