過去問で解き直す問題の選び方|全部やり直す家庭は12月に溺れる

過去問で解き直す問題をどう選べばいいのか。10月に入ると、この質問が一気に増えます。そして質問が来る頃には、多くのご家庭がすでに「間違えた問題は全部やり直す」という、いちばん高くつく選択をしています。
真面目さは美徳です。ただ、過去問の解き直しに限っては、真面目さがそのまま時間の浪費になります。今日は、どの問題を解き直し、どの問題を潔く捨てるのか、その仕分けの基準をお話しします。
過去問の解き直しを「全部」やると何が起きるか
6年生の秋から冬にかけて、第一志望の5年分に併願校を加えると、解く過去問は20回分を超えるのが普通です。1回分で落とす問題が5問から8問あるとすれば、解き直し候補はそれだけで100問を超えます。
1問あたり、解説を読んで理解し、もう一度自力で解くまでに20分かかるとしましょう。それだけで30時間以上です。12月の時間割を眺めながら、この30時間をどこから捻出するのか、一度計算してみてください。たいていの家庭はここで計算をやめて、気合いで乗り切ろうとします。そして溺れます。
もっと問題なのは、その100問の中に、合格者でも解けていない問題が相当数まじっていることです。合格者が解けない問題を1時間かけて理解しても、合格最低点はびくとも動きません。最も時給の低い勉強を、最も時間のない時期にやっている。これが「全部やり直す」の正体です。
過去問の問題は「典型か」と「難しいか」の2軸で4つに分ける
解き直しの価値は、問題ごとにまったく違います。本番で似た問題に再び出会う確率と、出会ったときに取れる確率が違うからです。僕は過去問を、次の4つの箱に仕分けています。
典型で易しい問題:教科書の例題そのもの、または数値や設定を変えただけの問題。落としたら必ず解き直し、教科書の同じ単元まで戻る
典型で難しい問題:立体の切断や、ダイヤグラムを使う速さのように手順は重いが、類題を解いた経験はある問題。解き直したうえで、同じ単元の類題を量で解く
初見で易しい問題:見たことはないが、落ち着けば解ける問題。解き直すが、解き方以上に「この難しさなら取りに行く」という手応えを残す
初見で難しい問題:合格者でも取れていない問題。解き直さない
ここで見落とされやすいのが2つ目の箱です。立体の切断を落とした子は、たいてい「難しいから捨て問」と言います。しかし類題を解いた経験がある以上、それは捨て問ではありません。単に演習量が足りていないだけで、10題、20題と類題を重ねれば、入試本番までに解ける側へ移せる問題です。
逆に4つ目の箱は、どれだけ悔しくても手放します。合格最低点を超えるゲームにおいて、満点は目標ではありません。
どれが典型かを家庭で判定する3つの基準
問題は、どれが典型でどれが易しいのか、その判定がプロでも迷うほど難しいことです。そこで、家庭でも使える基準を3つに絞りました。
普段の教科書に同じ型があるか:予習シリーズや新演習の目次・索引で同じ単元を探し、例題とほぼ同じ、または解き方の流れが同じなら典型
解説を一度読んで、自力で解き直せるか:できれば易しい、何度読んでも腑に落ちなければ難しい。模試や塾の資料に正答率が載っている問題は、その数字が最も客観的な物差しになる
同じ学校の他の年度にも似た問題があるか:5年分を並べて2回以上出ていれば、教科書になくても「その学校の典型」として扱う
3つ目が意外に効きます。学校には癖があります。教科書の典型とは別に、その学校が好んで出す型がある。ここを拾えるかどうかで、志望校対策の精度が一段変わります。
「捨て問」の判定を子どもに任せてはいけない
一つだけ、強めに言っておきます。4つ目の箱、つまり捨て問の判定だけは、子どもに任せないでください。
子どもは苦手な問題ほど「これはもう出ない」の箱に入れたがります。先ほどの立体の切断がその典型です。捨て問の判定は、講師か保護者が最後に確定させる。迷ったら解き直す側に倒す。このルールを最初に決めておくだけで、仕分けはぶれなくなります。
仕分けると見えてくる「失点の内訳」
4つの箱に仕分けたら、箱ごとに失点を足してみてください。ここで景色が変わります。
例えば合格最低点まで10点足りないとします。ところが典型で易しい箱の失点を足すと14点あった。この場合、新しい解法を覚える必要はありません。すでに知っている問題を取りこぼしているだけで、足りないのは実力ではなく精度です。
さらに、間違えた問題を解き直したときの様子でも原因は分けられます。解き直してすぐに解けたならミスか時間配分、時間をかければ解けたなら理解が浅い、解けなければ理解不足です。同じ「×」でも、打つべき手はまったく違います。
点数だけを見て「算数が足りない」と嘆くのは、レントゲンを撮らずに手術を決めるようなものです。
明日から親がすべき非情な決断
まず、過去問1回分を、正解した問題も含めて4つの箱に仕分けてください。次に、4つ目の箱の問題には二度と手をつけないと決めてください。解説を読みたくなる気持ちはわかりますが、そこに使う1時間は、典型で易しい問題を3問固める時間です。
全部やり直す真面目さは、受験が終わってから存分に発揮していただければ結構です。秋から冬の過去問は、捨てる勇気のある家庭から点数が伸びていきます。
過去問の解き直しは、全部やるのではなく、典型か・難しいかで仕分けて、取るべき問題から順に固めるのが最短ルートです。
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