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2026年医学部入試を振り返る|2027年の小論文・面接で注目したい5つのテーマ

2026/8/2

 医学部の小論文・面接対策というと、医療用語や時事問題をたくさん覚えることを想像する方もいるでしょう。

 しかし、少なくとも今回取り上げる2026年度入試の公開問題では、医学知識そのものだけではなく、文章を正確に読み、複数の立場から考え、自分の経験や価値観と結び付けて説明する力が問われています。[1][2][3][4]

 今回は、2026年度入試の出題例を振り返りながら、2027年度入試に向けて注目しておきたいテーマを紹介します。

2026年度入試では何が問われたのか

 兵庫医科大学の一般選抜では、AIと人間の能力の違いを扱った課題文が出されました。設問では、人間には簡単でもAIには難しいと思われることを一つ挙げ、その理由を300字以内で説明することが求められています。

 大学が公表した出題意図では、文章を正しく読み解く力、論理的に考える力、定められた分量で適切に表現する力を確認するとされています。[1]

 東京医科大学の一般選抜・共通テスト利用選抜では、江戸時代の長屋における「挨拶」の役割を読み取り、自分が日頃経験している挨拶と比較して600字以内で論じる問題が出されました。

 公表された採点基準では、異なる時代や社会に生きる人々の行為を推察する力、自分の日常的な行為を新しい視点から振り返る姿勢、相手の立場から考える力などが示されています。[2]

 杏林大学医学部では、一般選抜の二次試験で「美」「知は力なり」、共通テスト利用選抜で「公平」という抽象的なテーマについて、それぞれ800字程度で論じる問題が出されました。[3]

医学に直接関係する言葉でなくても、その意味を掘り下げ、自分の立場と理由を論理的に説明する力が必要です。

 藤田医科大学医学部の「ふじた未来」総合型選抜では、他者と共同して行動する際に重要だと思うことを、自分の経験も踏まえて400字以内で述べる問題が出されました。[4]

以上の出題に共通するのは、模範的な医療知識を並べるだけでは対応しにくい点です。

課題文や設問を読み取り、具体例を選び、自分の結論と理由を限られた字数で示す力が求められています。

2027年度入試で注目したい5つのテーマ

 ここからは、2026年度の出題と、医療をめぐる最近の政策・社会的動向を踏まえた予想です。実際の出題を示すものではありませんが、小論文や面接の練習テーマとして準備しておきたい内容です。

1.医療AIと医師の責任

2026年3月、PMDAは「生成AIの医療活用の最前線」と題したシンポジウムを開催しました。また、診療情報やリアルワールドデータをプログラム医療機器の開発に活用するための議論も行われています。[5]

 医療AIについては、次のような問いを考えてみましょう。

「AIの判断が誤っていた場合、誰が責任を負うのか」

「医師はAIの提案をどこまで信用すべきか」

「患者の診療情報や個人情報をどのように守るのか」

 大切なのは、「AIは便利だから使うべき」「人間の方が優れている」と単純に結論付けないことです。

 診断や業務の効率化、医師の負担、患者の安心、説明責任、個人情報の保護など、複数の観点から検討する必要があります。

2.地域医療と医師の偏在

 厚生労働省では、人口減少や高齢化を見据え、2040年に向けた新たな地域医療構想を進めています。地域の医療需要や医療従事者の確保、医療機関の連携、医師の地域偏在などが重要な論点です。[6] 

 地域の実情に応じて、オンライン診療を含む遠隔医療、医師派遣、巡回診療、医療・介護・福祉の連携を活用する方向性も議論されています。[7]

面接や小論文では、次のような問いが考えられます。

「都市部と地方の医療格差をどのように縮めるか」

「地域枠の医学生に一定期間の地域勤務を求めることをどう考えるか」

「オンライン診療は地域医療の課題をどこまで解決できるか」

 医師個人の職業選択と、地域住民が医療を受ける権利をどのように両立させるかがポイントです。

3.限られた医療資源をどう公平に配分するか

 杏林大学で出題された「公平」は、医療における多くの問題につながる言葉です。

病床、医療従事者、救急車、高額な治療薬、移植臓器など、医療資源には限りがあります。

厚生労働省の臓器移植委員会でも、2026年7月に、今後の臓器移植医療のあり方や、移植希望者の選択基準の一部改正について検討が行われました。[8]

「先に申し込んだ人を優先するのか」

「重症度の高い人を優先するのか」

「治療効果が期待できる人を優先するのか」

 公平とは、全員を同じように扱うことでしょうか。それとも、一人ひとりの状況に応じて扱いを変えることでしょうか。

 小論文では、自分が採用する基準だけでなく、その基準によって不利益を受ける人についても考える必要があります。

4.患者とのコミュニケーションと信頼

 東京医科大学の「挨拶」の問題は、一見すると医療とは直接関係がないように見えます。

しかし、大学の採点基準では、相手の立場から対人行為の意味を考えることや、自分の考えを分かりやすく伝える力が評価対象として示されています。[2]

医療者と患者の関係でも、患者の知識や理解の状況に配慮しながら情報を伝え、意思決定を支えるコミュニケーションが重要です。[9]

 たとえば、次のような場面を考えてみましょう。

「患者が医師の勧める治療を拒否した場合、どう対応するか」

「本人と家族の希望が異なる場合、誰の意思を優先するか」

「患者にとって望ましくない知らせを、どのように伝えるか」

 医師が一方的に正解を示すのではなく、患者の価値観を理解し、必要な情報を分かりやすく伝えたうえで、一緒に方針を考える姿勢が求められます。

5.チーム医療と他者との協働

 藤田医科大学で問われた「他者と共同して行動する際に重要なこと」は、チーム医療にもつながるテーマです。[4]

 医療現場では、医師だけでなく、看護師、薬剤師、リハビリテーション職、医療ソーシャルワーカーなど、異なる専門性を持つ人々が協働します。厚生労働省も、医療の質や安全性を高めるため、医療スタッフの役割分担と連携を推進しています。[10]

面接では、部活動や学校行事について尋ねられた後、次のように掘り下げられることがあります。

「意見が合わない相手と、どのように協力したか」

「自分の考えが間違っていると分かったとき、どう行動するか」

「チームの中で自分はどのような役割を担うことが多いか」

 成功した経験だけでなく、対立や失敗から何を学び、その後の行動をどう変えたかまで整理しておきましょう。

ニュースを覚えるだけでは小論文・面接対策にならない

 医療ニュースを読むことは大切ですが、記事の内容を覚えるだけでは、自分の意見を問われたときに答えられません。

一つのテーマについて、次の5点を整理してみましょう。

1.何が問題になっているのか
2.誰が関係しているのか
3.それぞれにどのような利益や負担があるのか
4.どのような価値や権利が対立しているのか
5.自分はどの立場を取り、なぜそう考えるのか

 小論文では、志望校の字数に合わせて文章を書き、面接では最初に60秒程度で答える練習をするとよいでしょう。

 その後、「反対意見についてどう考えますか」「別の立場から考えるとどうなりますか」と質問された想定で、もう一度答えを組み立ててみてください。

まとめ

 

 2026年度入試では、AIのような新しいテーマだけでなく、挨拶、協働、美、公平など、身近な行為や抽象的な言葉も扱われました。[1][2][3][4]

 2027年度入試でも、特定の医療用語を知っているかだけではなく、初めて見る文章や問題に対して、複数の立場から考え、自分の意見を根拠とともに伝える力が重要になると考えられます。

 まずは週に一つ、気になる医療テーマを選び、「何が問題なのか」「自分はどう考えるのか」を短く書くことから始めてみてください。

 小さな積み重ねが、未知のテーマにも対応するための考察力につながります。

参考資料・出典

[1] 兵庫医科大学「2026年度 医学部一般選抜A・B 小論文問題」「小論文出題意図」
AIと人間の能力の違いに関する設問、および読解力・論理的思考力・表現力を問うという出題意図を参照。

[2] 東京医科大学「2026年度 医学部医学科 一般選抜・共通テスト利用選抜 小論文」「採点基準説明書」
江戸の長屋における挨拶を扱った問題と、出題のねらい・アドミッションポリシーとの対応を参照。

[3] 杏林大学「2026年度入試データ・過去問題」
医学部小論文のテーマ「美」「知は力なり」「公平」を参照。

[4] 藤田医科大学「2026年度 医学部ふじた未来(総合型選抜)小論文」
他者と共同して行動する際に重要なことを、自身の経験を踏まえて論じる設問を参照。

[5] 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「プログラム医療機器」「生成AIの医療活用の最前線」
生成AIの医療活用、診療情報やリアルワールドデータを用いた医療機器開発に関する取り組みを参照。

[6] 厚生労働省「2040年に向けた地域医療構想」
人口構造や医療需要の変化を踏まえた、地域の医療提供体制に関する政策を参照。

[7] 厚生労働省「新たな地域医療構想等に関する検討会 議事録」
遠隔医療、医師派遣、巡回診療、多職種・医療介護連携に関する議論を参照。

[8] 厚生労働省「第80回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会」
臓器移植医療のあり方と、移植希望者の選択基準に関する検討を参照。

[9] 厚生労働省eJIM「医療者と患者のコミュニケーション」
患者の理解やヘルスリテラシーに配慮した情報提供と関係づくりについて参照。

[10] 厚生労働省「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」
医療スタッフの役割分担、多職種間の連携・補完について参照。

※各資料は2026年8月2日に確認しました。入試問題や学生募集要項は、大学によって公開範囲や掲載期間が異なるため、受験時には必ず各大学の最新情報をご確認ください。

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