家庭教師が「どうやってやったの?」と聞く理由|思考力を伸ばす声かけの工夫
2025/5/31
はじめに
「この問題、合ってますか?」
授業中によく聞かれるこのセリフ。
でも私は、正解か不正解かをすぐに伝えることはあまりありません。
代わりに、まずこう聞きます。
「お、どうやってやったの?」
なぜこの一言を大事にしているのか。
それには、単なる「正解探し」ではなく、生徒自身の考える力を育てるための理由があります。
今回は、私が数学・物理を教えるなかで日々実践している声かけの工夫と、そこに込めた想いをお伝えします。
「どうやってやったの?」と聞く3つの理由
1. 勘で答えを出すクセをつけてほしくないから
数学でも物理でも、時に「なんとなく」で正解できてしまうことがあります。
でも、それは実力ではありません。
本当に力をつけるには、「なぜこの式が使えるのか」「この操作の意味は何か」を自分の頭で考えることが欠かせません。
「どうやってやったの?」という問いかけは、生徒自身にそのプロセスを振り返ってもらうための第一歩です。
2. 先生の顔色をうかがうクセをなくしたいから
正解したかどうかを、私の表情で判断しようとする生徒もいます。
でも、これは危険なクセです。
それでは、テスト本番や自習のときに自分の判断で進める力が育ちません。
誰かに確認されないと不安、という状態では、伸びる力も伸びづらくなります。
「どうやってやったの?」という言葉には、
「あなたの考えをまず聞かせてほしい」
「答えに関係なく、その思考には価値がある」
というメッセージを込めています。
3. 間違っていても、自分の考えに自信をもってほしいから
解答が間違っていたとしても、その過程には生徒なりの根拠があることが多いです。
その「自分はこれが正しいと思った」という感覚を、私はむしろ大切にしています。
そこから一緒に振り返って、「なぜ違っていたのか」「どうすればより正確になるのか」を確認していけば、次に同じミスはしづらくなります。
間違いは、「考えた証拠」であり「学びのチャンス」です。
プロセスを聞くことで、生徒に起きる変化
このような対話を繰り返すことで、生徒には次のような変化が表れます。
・自分の考えを言葉で説明できるようになる
・間違いの原因に自分で気づけるようになる
・正解したときに「ラッキー」ではなく「自分で考えたからこそ」と自信を持てるようになる
ただ正解を出すだけでなく、その過程を「自分のもの」として理解することが、本当の実力につながるのです。
実際の授業でのやりとり
ある高校生の生徒が、物理の等加速度運動の問題に取り組んだときのこと。
━━
生徒「なんかこれで合ってるかわかんないけど…一応、答え出ました」
私 「おー、なるほど。なんでこの公式を使ったの?」
生徒「えっ、その聞き方…もしかして間違ってますか?」
私 「いやいや、合ってても間違ってても聞くよ。笑」
生徒「時間tが分からなかったので、いったんこの公式を使って……」
・・・
━━
✅実はこのとき、生徒の解答は答えとしては正解でした。
ただ、模範解答と比べると少し遠回りな解法だったんですね。
💡でも、それで良いのです。
この生徒は、不安を抱えながらも自分なりの論理で答えを導き出しました。
その経験は、「模範解答でなくても自力で解けるんだ」という自信につながります。
その後、一緒に「どんな場面でどの公式を使うのがベストか」を整理しながら確認しました。
すると生徒は、納得した表情でこう言いました。
「なるほど、だからこの公式があるのか」
この瞬間がまさに、公式の“暗記”から“理解”への転換点。
一つの公式を「意味のあるツール」として使えるようになった、大きな一歩でした。
この声かけが育てる「本物の学力」
「どうやってやったの?」という問いは、単なる確認ではありません。
これは、生徒の中にある思考を引き出し、それを育てるための対話のスタートです。
この積み重ねが、やがて
・正解 / 不正解に振り回されない安定したメンタル
・記述問題や口頭試問でも役立つ「説明する力」
・入試本番でも力を発揮する「自信のある思考」
を生み出します。
まとめ|答えよりも「考え」を聞かせてほしい
家庭教師として、私が何より大切にしているのは「生徒自身が考える力」を育てることです。
だからこそ、答えの正しさよりもまず「どうやってやったの?」と聞く。
その問いから始まる対話こそが、本当の学びをつくる第一歩だと信じています。
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