平均点以下で何が悪いのか?―尖った知性を磨く―
2022/7/28
◆ 平均点以下であることは、人生において何のネガティブな意味も持たない。
こういうことを書くと、お叱りを受けそうだが、「勉強はやれば楽しい。必ずできるようになるので、得点アップを目指そう」などと誘惑する教師(私も含めて)は、実は仕事のためにやっている。ポジショントークである(無論、子供が本当にできるようになりたいと望んでいるとき、それを励ますのは当然であるが)。劣等感に寄り添いつつ、希望を夢見させるのである。
ただ考えてみて欲しい。学校の英語の成績が「2」だからといって、死刑を宣告されるわけではない。就職できないわけではない。色々と反論はあるだろうが、細かい話はケース・バイ・ケースである。
◆ では、平均点以下であることとは、一体何を意味しているのだろうか。
① 「その」学校の「その」先生の授業についていけていないこと
② もしかすると、知能が相対的に低いかもしれないということ
せいぜいこの程度である。
◆ 学校教師も玉石混交
①には特に注意しておきたい。学校というのは個人事業主の集まり、いわば商工会議所のような空気があり、学校としての方針はあれど、基本的に教科のことは各教師に委ねられている。自由裁量の余地が広い。これは薬にもなれば毒にもなる。
令和における一例を挙げれば、或る中学校の数学教師の採点方法である。解答が「x=2,3」であるところを、この「,」が「、」に見えて少数と見間違えが起きるという理由で、0点にしたというのである。
私はこれを聞いて、唖然としてしまった。確かに回答が、二つの数なのか、一つの少数なのかでは天と地ほど理解が異なることも頷けるが、本当にすべきことは一応点数を与えて、横に赤で注記をしておけば済むことではないか、大量の人間が受験し公平性が求められる入試と定期テストとを混同してはならない(無論、予め注意しているのに何度も繰り返すのなら話は別だが)。教師の方が過剰に減点主義気質であることによって、生徒の方も序列を気にして、過剰に形式を重視するようになってしまう。つまり、教師の言うとおりにすることだけが、正解を得る方法だと勘違いしてしまう(教師が俺ルールを制定して、生徒にそれを守らせることで自己満足するケースは多く、加えて成績評価を盾にしてそれが為されることもあって、とても気味が悪い)。
それゆえ、本当に見抜くべきことは、そのテストを作成している人間教師が、「すばらしい人間」であるか否かである。「それはどうやって見抜いたらいいのか?」と問われそうだが、そんなことが分かるはずはない。そういった発想こそ先程の「教師は正解を知っている」という短絡である。徹底してその人間を観察し、己の感性を信じて直観的に判断する、これを実践するよりほかはないのである。
貴方がその教師をつまらない人間であると合理的理由に基づいて判断すれば、それは単なる生理的拒絶ではなく、傾聴に値する「評価」である。
「すばらしい人」ならともかく「しょうもない人間」による成績評価など気にする必要はない。
◆ 点数=頭の良さなのか?
②はやや込み入った深刻な問題である。一つの考え方、捉え方に絞って示してみたい。
◆「平均点を大きく下回っている人」は「平均点そこそこの人」よりも劣っているのか?
ということである。
一般的に言って、学力の中間層(平均点そこそこ)は一番タチが悪い。こういった人々の大半は、「自分は人よりできている」という意識をそこそこに持ちつつ、しかし実力としては大したことはない(だから平均点そこそこなのである)。こうなると学力は頭打ちである。そこそこに自尊心を満たしながら、愚痴を漏らして足りないアイデンティティを適当に補おうとするのである。地域でトップレベルの高校の生徒が、地元の国公立にすら受からないのであるから、高校入試で中途半端に頑張りすぎるのも考えものだと思う次第である。
これに対して、平均点を大きく下回っている人は、苦手意識や劣等感が強い。実はこれは受験では有利な心理である。劣等感はそれに火が付けば、逞しい向上心となる。そこそこに褒められて図に乗っているお子様には持ち得ない心境である。苦手意識は日本人的な慎ましさとなって、初心に帰ることを教えてくれる。この意味において、劣等感のある人のほうが向上心を維持し続けやすいと言える。そこでこそ磨かれる知性に私は期待している。
図式的に点数の高低にしたがって、向上心という観点から、その優劣を叙述してみたが、無論それは心のあり様次第であるから、あくまでごく一般的な見取り図に他ならない。
◆ まとめ
試験の作成者が「尊敬に値する人物」であり、かつ、
その教科に関心があって、できるようになりたいと思い、かつ
親や教師から褒められて図に乗るような、ちっぽけな人間でない、のであれば、
平均点以上を目指す価値はあるだろう。
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