ふみをあむ

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2022/9/17


私はこのマナリンクブログを基本的に「だ」「である」調の文体で書いている。何故ならば、それが普通の文章だからだ。「です」「ます」調のことを敬体というのに対して、これらの「だ」「である」調は常体と呼ばれる。「いつもの、普通の」スタイルという訳である。話すときは私も場面に応じて敬語を使う。特に丁寧語を使って話すと、会話の流れが柔らかくなるし、人当たりもよくなる。だが、話し言葉と書き言葉は別のものである。敬体で書いてある説明文、論説文、評論文、随筆、小説がまるでない訳でもないが、通常、文章は常体で書かれている。この方が断定的で歯切れよく、締った印象を読み手に与える。私の文章も、いかにも「偉そうな感じ」がするかも知れないが、それは常体で書いているからである。



高校入試における国語の一般入試内の課題作文、推薦入試に課せられる作文・小論文も基本的に常体で書くことをお勧めする。敬体で書くと、「だ」が「です」、「思う」が「思います」になるように、どうしても字数が多くなりがちである。思いつくままにただ書いて良いのであれば別だが、字数制限というものがあるので字数オーバーというわけにはいかない。書く題材が豊富にある場合、字数は節約して書きたいところだ。そのためにも、常体で書く必要がある。



もっとも、内容が的はずれであったり、稚拙なものだったりする場合に常体で書くと、中身が伴わないのに無理している印象になるので、そのときは敬体を勧めている。そのような生徒はだいたい書くのが苦手というケースが多いため、「です」「ます」体の方が字数を稼ぐことにもつながる。



危険なのは、少し背伸びをして常体で文章を書いていて、一部分だけ「つい」、敬体を使ってしまうことである。これは文体の不統一ということで減点となってしまうから、注意が必要である。敬体を使ってしまうのは、へりくだった思いからというよりも、気持ちが弱くなってしまっているからという場合がある。途中までは常体で断定的に書いていたのに、自信のなさがふと「…と思います。」などのように語尾に現れてしまうのではないかと私は考えている。最後の最後まで強い気持ちで書いて欲しい。



作文という課題である場合では、文章を作るというのが文字どおりの意味であるから、とりあえずマス目が埋まってなければ、話は始まらない。書かれていなければ、心の中にどれだけ良い構想があろうとも、0点である。文を書けるように小学校低学年のことを思い出してほしい。「きょうは、みんなでえんそくにいきました。」「おべんとうをたべました」と出来事が時系列に並べられ、ときどき「おいしかったです」「たのしかったです」のような感想が入る。感想といっても、「好き嫌い」「快不快」のレベルのものにとどまっている。人生を深く感じさせるような高度な感想を低学年の小学生が書くはずもない。成長には、言うまでもなく「段階」というものがある。



もう少し学年が進む感想の部分に進歩が見られ、「山登りはつらかったけれど、頂上に着いたときは、とてもすがすがしい気持ちになりました。」というようなことを書くようになる。さらに進化すると、「体験」が自分を進歩させるものだととらえられるようになり、「みんなと一緒に協力することの大切さ」「苦しいことを乗り越えた後の達成感」などを学んだという域まで達することができる。体験を単なる出来事としてではなく、それを抽象化、普遍化できるところまでいくと作文は、断然内容の良いものになる。



これは書くということのすべての基本である。どうしても作文に苦手意識がある場合は、まず出来事をできだけ、具体的に詳しく書くことでまずは字数を確保することから始めてみるとよい。課題作文の場合、前半の段落に具体的な体験を、後半にはそれに対しての自分の意見を述べるというパターンがよく見られるが、かりにそうでなくても、そういう書き方がもっとも書きやすい。意見というと構えてしまいがちだが、感想で構わない。ただ、先に述べたようにその体験から学んだことにふれ、抽象化・普遍化ということを忘れないようにすることが大切だ。さらに述べるなら、この部分を「○○の大切さを学んだ」という書き方にすると、語尾が過去形になっており、前段の体験の続きのような印象になるので、これに「と考える」というような現在形の語尾をつけることでそうなることを避けることができる。



以上はどちらかというと作文が苦手な人や、難易度のそれほど高くない学校を受ける場合に向けて、まずはマスを埋めることを前提に書いたものである。書くことが得意な方は鋭い意見を書く自信があるだろうし、また、小論文という内容になっている場合は、文字どおり「論」、つまり、意見を書くことが求められているので、体験にばかり字数・行数を割くわけにはいかない。だが、プロの書く論説文でさえ、体験などの具体例と、意見を書く段落の比率は前者の方が多い。だから、意見を書くことが得意だという自負のある方は、自分の意見を補強するための具体例のストックを日頃から蓄えておくことも肝要だと思う。大丈夫。誰もがみんな文章家。しかも、若い皆さんの方が感受性が鋭敏なのである。どうか、自信をもって文を編んで欲しいと思う。

 

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