大学受験の英語、紙の辞書と電子辞書どっちがいい?早慶・医学部講師が勧める『ジーニアス英和辞典 第6版』とスマホ検索の落とし穴
「スマホで調べたから大丈夫」は本当か――紙の辞書を引かない受験生が、難関大に届かない理由
夜、机に向かうお子さまの手元に、スマートフォンが置かれている。「英語の単語を調べているだけ」と言われれば、それ以上は何も言えない。そんな場面に、覚えのある保護者の方は少なくないのではないでしょうか。
私は大手予備校や医学部専門予備校で、長く大学受験の英語を教えてきました。いまはオンラインで、早稲田・慶應・MARCH、そして医学部を目指す高校生を指導しています。その経験から、保護者の皆さまに率直にお伝えしたいことがあります。
紙の辞書を引く習慣を持たないまま受験学年を迎えた生徒は、難関大学には、十中八九届きません。
強い言い方であることは承知しています。ただ、これは古い世代の懐古趣味でも、根性論でもありません。人の記憶がどのように作られるかという、ごく基本的な仕組みに根ざした話です。
調べた知識は、画面を閉じると同時に消えていく
最近の受験生は、とにかく調べるのが速い。知らない単語に出会えば、スマホで一秒後には意味を手にしています。しかし授業で「その単語、先週も調べていたね」と尋ねると、多くの生徒が「見たけれど、覚えていません」と答えます。
理由ははっきりしています。スマホや電子辞書で引いた知識は、最初から本人の頭の中ではなく、端末の中に置かれているからです。画面を閉じれば、知識も一緒に閉じてしまう。私は生徒に、デジタルで引いた知識は、電源を切ると同時に消えると話しています。
これを裏づける研究もあります。2011年に米国の研究チームが科学誌『サイエンス』に発表した論文では、人は「あとでいつでも調べられる」と感じている情報ほど、覚えようとしなくなる傾向が示されました。「グーグル効果」と呼ばれる現象です。検索すれば出てくるという安心感が、脳に「覚えなくてよい」という合図を送ってしまうのです。
国内では、東京大学の研究チームが2021年に、紙の手帳とデジタル端末を比べる実験結果を発表しています。同じ内容を記録した場合でも、紙に書いた人のほうが、あとで思い出す場面で記憶や言語に関わる脳の働きが活発だったと報告されています。紙の上で手を動かし、ページの位置や手触りと結びつけて情報を扱うことが、記憶を確かなものにしていると考えられます。
難関大の英語は「一番上の訳語」では解けない
では、なぜそれが難関大の合否にまで響くのか。鍵は、入試問題の性質にあります。
早慶や医学部の英語で問われるのは、単語の意味を知っているかどうかではなく、その文脈で、その単語がどういう意味で使われているかを見抜けるかどうかです。
たとえば address という単語。多くの高校生は「住所」と覚えています。スマホで調べても、最初に出てくるのはおそらくその訳でしょう。ところが入試の長文では、動詞として「(問題に)取り組む、対処する」という意味で頻繁に使われます。「住所」しか知らない受験生は、その一文の前で立ち止まるほかありません。
fine には「罰金」、command には「(言語などを)自在に使いこなす力」、matter には動詞で「重要である」という意味があります。難関大の入試は、こうした基本語の、あまり知られていない側面を狙って出題してきます。単語帳で「英語一語に日本語一語」を暗記する学習法だけでは、ここで確実に差がつきます。
紙の辞書を開くと、目当ての訳語の周りに、別の品詞での意味、語法の注意、例文が一望のもとに並んでいます。探していなかった情報まで、自然に目に入ってくる。 この「ついでの学び」を毎日繰り返した生徒と、検索結果の一行目だけを拾ってきた生徒とでは、一年後の読解力にはっきりとした差が生まれます。
手間がかかるからこそ、記憶に残る
紙の辞書は、正直に言って面倒な道具です。ページをめくり、アルファベット順に見出し語を探し、細かい文字の中から今の文脈に合う意味を選ばなければなりません。
けれども、その手間こそが、記憶をつくる最大の要因です。自分の力で苦労してたどり着いた情報ほど記憶に残りやすいことは、認知心理学の分野で古くから知られています。わずか数十秒の「探す時間」が、単語を短期的な理解から長期的な記憶へと移していくのです。
もうひとつ、保護者の方に知っておいていただきたいのが集中力の問題です。単語を調べるつもりでスマホを手に取り、通知が目に入り、気づけば別の画面を見ていた。これは大人でも避けがたいことです。学習中に手元にスマホがあること自体が、集中を途切れさせる要因になり得ます。
合格していく生徒の辞書は、よく使い込まれている
これまで多くの受験生を送り出してきましたが、難関大に合格していった生徒の辞書には、驚くほど共通した特徴があります。よく使い込まれ、汚れているのです。 ページの端は黒ずみ、引いた単語には印が重なり、余白には本人のメモが残っています。
一度引いた単語に印をつけておくと、二度目に引いたときに「前にも調べたのに覚えていなかった」ことがすぐにわかります。印が重なった単語こそ、その生徒の本当の弱点です。 辞書そのものが、本人だけの弱点の記録へと育っていく。デジタルの検索履歴では、この実感はなかなか得られません。
ご家庭でできること
特別なことは必要ありません。
まず、学習英和辞典を一冊、お子さまの机に置いてあげてください。 私が受験生に勧めているのは、現在の最新版である**『ジーニアス英和辞典 第6版』(大修館書店)**です。
2022年11月に8年ぶりの全面改訂を経て刊行されたこの版は、収録語句数が約10万6000と、学習英和辞典として最大級の規模を持っています。しかし私が何より評価しているのは、量よりも中身です。ジーニアスは昔から「語法のジーニアス」と呼ばれるほど、単語の正しい使い方や、日本人が間違えやすい表現の解説に力を入れてきました。先に触れた「suggest は『人 to do』の形をとらない」といった、難関大の入試で問われる細かな知識が、ページを開けばきちんと載っています。第6版では、SNSで使われるようになった新しい表現も約1000語句が追加されました。
お下がりの古い辞書をお持ちのご家庭もあるかもしれませんが、これから受験に向かうのであれば、最新版を一冊用意されることをお勧めします。 本人が「自分の辞書」として愛着を持てることも、使い込む習慣を育てるうえで意外に大切です。
次に、英語を勉強する時間だけは、スマホを別の部屋に置くという約束を、お子さまと一緒に決めてみてください。取り上げるのではなく、ルールとして話し合うことが長続きのコツです。
そして、お子さまが辞書を開いている姿を見かけたら、ぜひ一言、認めてあげてください。 辞書を引く習慣は、最初の二か月がもっとも苦しい時期です。その時期を越えると、ページをめくる手は驚くほど速くなり、本人も効果を実感し始めます。
デジタルを否定しているわけではありません
誤解のないように申し添えます。発音の確認や、すでに知っている意味の再確認には、電子辞書やアプリは大変便利な道具です。私自身も授業で活用しています。
問題は道具ではなく、使う順番です。まず紙の辞書で「記憶に残る調べ方」を身につけ、その土台の上でデジタルを補助として使う。この順番が逆になると、どれほど多くの単語を調べても、知識は積み上がっていきません。
英語の力は、調べた回数ではなく、頭に残した回数で決まります。
受験本番の試験会場に、スマホは持ち込めません。そのときお子さまを支えるのは、電源を切っても消えない、自分の頭に刻まれた知識だけです。
早慶・MARCH・医学部を目指すお子さまの保護者の皆さまへ
私の講座では、辞書の引き方という学習の土台から、難関大レベルの長文読解、英作文まで、お子さま一人ひとりの現状に合わせて指導しています。 「うちの子の勉強法で本当に間に合うのか」といったご相談だけでも構いません。講座ページから、どうぞお気軽にお問い合わせください。
この先生のおすすめコース
- 高1・高2のうちに、英語だけは本物の実力をつけておき、圧倒的な実力で入試を有利にしたい
- 英語の偏差値は55前後あるが、早慶合格ラインの65以上に届かずに伸び悩んでいる
- 文法や読解は「なんとなく」わかるが、実力テストになると崩れてしまう
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大学受験におすすめの指導コース
- 英語の偏差値を60〜70まで上げたい方
- 英語が苦手で、受験対策のネックになっている方
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- 難関大学を志望しているのに英語が苦手で泣きそうなあなた
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- 英単語を覚えずに入試を切り抜けられないかばかり考えているあなた
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