【中学受験】 家庭学習を進めるうえで気を付けるべきこと

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2025/5/1

受験生自身にとっても、受験生を支える保護者の方にとっても、「家庭学習をどのように充実させて、力を伸ばすための糧としていくか」ということは非常に大きな課題です。場合によっては、家庭学習がなかなかうまく進まず、悩みの種になってしまっているというご家庭もあるかもしれません。今回は、受験に際して非常に多くの家庭が直面する重要な問題である「家庭学習の進め方」について、いくつかアドバイスをご紹介していきたいと思います。


① 優先順位をつけ、場合によっては「やらない勇気」を持つ

:宿題が多すぎて手が回らないときには、「全部やる」ことにこだわりすぎるよりも「何をやるか」を選ぶことが重要です。「重要であると思われる単元や問題だけをやる」、「苦手分野に絞って徹底的にやる」、「得意分野を伸ばすことに力を注ぐ」など、目的を持って取捨選択する勇気を持ちましょう。

大切なことは、宿題を終わらせることではなく、「宿題を通してどのような力をつけたいか」ということであることを確認しましょう。自分ではなかなか判断がつかないという場合には、教わっている先生に「どうしても終わらないので、優先順位を教えてください」と相談するのも良いでしょう。「力を伸ばす」ために積極的に「やらない」ことを選ぶことは、宿題を全て終わらせることができなかったことに対して意味を持たせ、罪悪感を軽減してくれる効果もありますので、真面目過ぎて、くよくよしがちな受験生には効果的な考え方です。


② 1週間単位のスケジュールを親子で一緒に立てる

:ある程度の学習内容がルーティン化されているならば、1週間単位でおおよその固定の学習計画をたててみましょう。中学受験生であれば、塾から出ている課題などのうち取り組むべき内容を、1週間の中の学習できる時間帯に落とし込んでいくのが現実的です。

小学生の場合、自分で予定を作るのはなかなか難しいので、保護者の方が作成するか、先生にお願いするなどして基本の予定表を作成し、子どもにはそれを守ることを徹底させます。一方で、少し大人びた子供や中学生以上の場合には予定の作成・管理は原則として自分自身で行い、どうしても手助けが必要な時に塾や個別指導などの先生にお願いするのが良いと思います。最終的に、学習を継続・習慣化するには管理も自分で行えるにこしたことはありません。


③ 「完璧主義」を手放す

:真面目なお子様や一生懸命な保護者の方ほど、全てを完璧に仕上げないといけないと思いがちです。ですが、実際にはテストで満点を取ることは難しいですし、日々の学習にも学校行事があったり、苦手な単元に出くわしたり、体調を崩してしまったりと色々なことがあって、全てを完璧にこなすことはできません。目標は高く設定すべきですが、一方で実際の完成度についてはある程度割り切って6割~8割程度の完成度でも良しとする気持ちの余裕が大切です。

受験までに、自分が想定した100のことを全て終わらせて本番に臨む受験生は皆無と言って良いと思います。人間には、「できることとできないこと」、「できる時とできない時」というものがあります。あることを学ぶにも、適切なタイミングというものが存在するのです。無理をして心身のバランスを崩してしまうくらいなら、無理をし過ぎず、できる範囲で物事を進める方が、結果として多くのことを成し遂げることができるはずです。


④制限時間を設定して、集中と休憩のメリハリをつける

:時間を制限して、制限時間内に集中して取り組むことで、学習の精度とスピードを向上させます。また、適度に休憩をはさむことで、ダラダラとした時間が無くなり、学習の効率化を図ることができます。問題を解くにしても、物事を暗記するにしても、自分が集中するのに適切な時間というのを肌で感じて、それに合わせて学習を進めましょう。


⑤ 学習する場所と環境を整える

:スマホやマンガなど、誘惑の原因となるものは極力学習する場所の周りから取り除くようにしましょう。また、机を整理することも効果的です。「なかなか教科書やノートが見つからず、探している時間だけで10分たってしまった。」ということはよくあります。教科書やノートは置き場を整理してすぐに取り出せる、使ったら片付ける習慣をつけ、プリント類などはクリアファイルにまとめておくなどすると効果的です。また、クリアファイルについては細かくページの分かれたものではなく、写真のようにすぐに取り出せるものに種類ごとに分けて入れておくと便利です。特に、暗記ものの場合には取り出しにくい小分けのファイルや、リングノートなどを使うのは避けると良いでしょう。取り出す時間のロスを防ぐことができます。


⑥ 少しずつ子ども自身が一人でできる範囲を増やす

:大人でも、過度に仕事を管理されると能力を発揮しづらいものです。見守りとして必要な範囲については親や周囲がサポートするべきですが、自分一人でできることについては少しずつ本人の裁量に任せるということも必要です。それが最終的には子ども自身の自立と、「こうしてみよう」、「こうやってはどうか」という試行錯誤や工夫をする力につながります。

たとえば、1週間に行う学習量を話し合って決めていた場合、それをどのようなペースで進めるかについては子どもの裁量に任せてみましょう。その上で、1週間たった時点で目標の8割程度が達成しているかどうかを「見守る」のがよいでしょう。もし出来ていなかった場合でも「できていないじゃないか」と叱るのではなく、「どうしてできなかったのか」や、「どうすればできたかな」ということをまずは子ども自身の口から説明してもらうようにすると、子どもも自分の失敗の原因や対策をよく理解することができ、行動の改善につながっていきます。


⑦ 成功体験については小さなことでもしっかり認めてあげる

:設定した目標を達成できたことや、復習した結果としてテストで点数を取れたことなどについては、「こうしたから、できた」という成功体験として小さなことでも「頑張ったね」、「よく工夫できたね」などと認めてあげることが大切です。その際、何でもかんでも手放しにほめるのではなく、課題は課題としてしっかり認識することが大切です。「頑張れば、できる」、「改善のために工夫や努力をすると、結果につながる」ということを子どもが意識できるような声掛けをしていくように意識すると、子どもの学習に対するモチベーションが上がっていきます。

「自己肯定感」は一朝一夕では身に付きません。受験の直前にだけ「大丈夫!」と声をかけても、それまでの長い期間に「こんなこともできないなんて」、「どうして分からないのか」という声かけをされてきた子どもは、「何を今さら…」という気持ちで聞いてしまい、心に響きません。心の栄養をたくわえるには、日頃からの小さな水やりがとても大切なのです。


⑧塾や先生を絶対視しない / 一度信頼・納得した場合にはある程度任せる

:子どもにとって、現在の学習のスタイルが明らかに負担になっていて、消耗している場合は塾や先生との相性を考えてみても良いでしょう。塾や先生は絶対のものではありません。どんなに良い塾・良い先生でも、「100人の子ども全てに対して相性がよく、最適の塾や先生」は存在しません。ですから、子どもにとって「合っているか」を考えることはとても大切です。もし明らかに「合っていない」と感じる場合には、別の塾や先生を検討してみても良いかもしれません。

一方で、塾や先生と話し合った結果、しっかりと納得のいく指導方針が示されて「信頼できる」と感じた場合には、少々の成績のブレや進度の遅れなどに一喜一憂せず、指導の仕方はある程度プロに任せましょう。保護者の方が小さな成績の上下や子どもの学習状況にオロオロしてしまい、「ああしてください」、「こうしてください」とたびたび路線変更やお願いを繰り返してしまうと、塾や先生たちも本来の効果的な学習・指導方針を変更せざるを得ず、かえって逆効果になってしまうことがあります。⑥で述べた「こどもに自由な裁量を与えること」と通じるところがありますが、極端な管理主義は個々の仕事の能率を高めることにはつながりません。


いくつか、「家庭学習の進め方」について、気を付けるべき点についてご紹介してきました。大切なことは、「全てを自分自身が管理できるわけではない」ということを理解し、思い通りにいかないことについて自分を責めないようにすることです。また、子どもの自主性を尊重するとともに、どうすれば子どもの「自主的な行動力」を良い方向・良い結果につなげることができるかに注目すると、家庭学習を有意義なものに変えていけると思います。

中学受験は、お子様も保護者の方も求められることが多く、大変な道のりではありますが、終わったときに「やって良かった!」と思えるかどうかは、結果以上に過程によるところが大きいように思います。受験勉強を充実したものにするために、家庭学習を「心を悩ませる場」ではなく「子どもの力を伸ばすための豊かな場」として活用していきたいですね。

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