【中学英語】 中高一貫校の英語学習でよくある「落とし穴」と対策法
2025/6/24
中高一貫校では、一般的な中学・高校とは異なるカリキュラム進行や学習環境に置かれています。そのため、特有の学習上の悩みや落とし穴が生じやすくなります。特に、主要教科については進度が非常にはやいため、高度な内容に早期から触れられるというメリットがある一方で、基礎の定着不足や学びの意味を見失うことも多くなります。
こうした中で、主要教科では「焦らず戻って確認する」姿勢があるかどうかが、長い目で見て大きな差を生むことになりますが、実際にその場にいる中高生にとっては初めて体験することも多く、何を優先して大切にすべきかについてはなかなか判断がつきません。本記事では、特に英語学習について、中高一貫校の生徒が抱えやすい悩みと、それらについての対処法についてご紹介してみたいと思います。
【中高一貫校における英語学習のよくある悩み】
① 授業進度が速く、基礎が固まらないまま進んでしまう
:中高一貫校ではハイペースで授業が進むため、基本的な文法や語彙の理解があいまいなまま次の単元に移ることがあります。結果として、後になって英文が読めない・書けないといった壁にぶつかりやすくなります。
② 定期テスト対策が中心になり、英語力として定着しない
:定期考査で点数を取るためにその場しのぎの「テスト用勉強」になりがちで、応用力や実践的な英語力が育ちにくい傾向があります。試験が終わるとすぐに内容を忘れてしまうケースも多く見られます。
③ 文法と長文のバランスが悪く、どちらかが苦手
:文法中心で読解量が足りない、または長文ばかりで文法の理解が浅いなど、学習バランスに偏りが出やすくなる傾向があります。苦手分野の放置が成績やモチベーションの低下につながることもあります。
④ 英単語の暗記が定着しない・覚えてもすぐ忘れる
:中高一貫校では前の試験で出てきたはずの英単語が次の試験ではあまり出てこず、使わないうちに忘れてしまうということが珍しくありません。反復や活用が足りず、語彙力が頭打ちになる生徒も少なくありません。
⑤ リスニングやスピーキングの訓練が不足しがち
:最近は改善も進んでいるところも多いですが、それでも学校の授業では読む・書くに偏りがちで、音声での理解力や発話力の練習は後回しにされやすいです。その結果、英語を「使う力」が身につきにくくなります。
⑥ 中3~高1あたりで伸び悩み、やる気を失いやすい
:英語の抽象度が高くなる時期に壁を感じ、成果が見えにくくなることで自信を失いやすくなります。特に文法の積み重ねがないとテストで点が取りにくくなり、「努力が点数やスキルに反映されない」と感じた時に、モチベーションの低下が起こります。
⑦ 英検などの外部英語試験と学校の学習がうまく両立できない
:外部の英語試験対策には特有の学習内容や時間配分が必要ですが、学校の定期テスト対策とは異なるため、どちらも中途半端になってしまうことがあります。優先順位を見失いやすい点も課題です。
⑧ 「読めるけど書けない」、「文法はできても英作文は苦手」
:インプット中心の学習ではアウトプットの力が育たず、英文を書く力に結びつかないことがあります。正しい英語を理解していても、自力で文章を組み立てる練習が足りないのが原因です。
【中高一貫校で英語の地力をつけるためにできること】
① 基礎の復習と「理解→演習→定着」の循環を作る
:中高一貫校では中3までに高校1年生のレベルあたりまでを学ぶことが多く、消化不良になりやすいです。そのわりに、学校ごとに先生の独自カラーが出やすく、人によってはあまり体系的に文法を教えてくれなかったりします。
もし、「自分の学校ではあまりしっかり文法を教えてくれない」、「一応教えてくれるけれども分かりにくい」と感じる場合には、文法を体系的に学べる文法問題集を1冊しっかり完成させることを目指しましょう。
また、自分専用の「復習ノート」を作り、定着していないポイントだけを集中的に復習するなども効果的です。
② テスト後に「再整理の時間」を必ず作る
:暗記やパターン学習に偏らず、テストが終わった後に、「どの表現が実用的だったか」、「何を理解できていなかったか」を整理しましょう。また、長文では個々の設問にこだわるよりも文章全体の構造を再確認したり、英作文では、よく使われるフレーズをおさえたり、解答とは別の表現で作文してみるなどの復習をしてみると効果的です。
学校の長文テキストで出てきた単語については固有名詞よりも、むしろ様々な文章に使われることが多い動詞や副詞を中心に忘れないようにしておくと後々役に立つでしょう。
③ 文法を長文に応用する練習を
:学んだ文法を定着させるには、その文法を用いて「読む」、「使う」ことが大切です。たとえば、「仮定法」を学んだら「仮定法」が出る長文を読むなど、学習していることと対応して進めると効果が増します。ですから、文法問題集や長文の問題集を用いる際には勉強しているのがどの項目かがはっきりわかり、明示されているものを選ぶと良いでしょう。長文については、学校教科書などには通常、「動名詞」、「不定詞」、「比較」など、どの文法を学ぶかが明示されていますので、それを確認してから該当する文法を問題集で進めるなどでも良いでしょう。
④ 単語は中学生のうちからコツコツと
:積み重ねておくと後々大きな力となって返ってくるのが英単語です。「1日5個×5日で25語→6、7日目に全復習」というかなり無理のないペースで進めたとしても、1週間に25語、1ヵ月に100語です。1年に1,200語だとして3年間で3,600語となります。英検準2級レベルで約3,600語と言われていますので、中学卒業までにそのレベルまで到達できることになります。
もし、もう少し上を目指したいのであれば、1日8語を目指せば中学3年で約5,700語となりますので、英検2級レベル(約5,100語)を目指せます。何でもそうですが、継続は力なのです。
⑤ 音読を習慣化する
:毎日5~10分の音読を継続してみると良いでしょう。内容は教科書で十分です。最近は教科書、問題集ともにQRコードなどで手軽にネイティブの音声が聞ける教材も増えてきていますので、「音声付き教材」を用いて「聞く→マネする→意味をとる→もう一度話す」流れを作っていきましょう。英語は文字だけで覚えようとしてもうまくいきません。音にする、音にできるというのがとても大切です。
⑥ 2日に1度、一つだけ英文を作り、話す。
:2日に一度でよいので、日常で使う身近な表現について英語で文章をつくり、それを口に出してみましょう。英文を作る際には、基本は教科書などに書いてある文を参考に真似をするところから始めると良いでしょう。昔と違い、今は自分の作った英文が文法的に正しいかどうかを判定する方法はたくさんあり、無料の英文チェッカーなどもあります。精度はともかく、中学生レベルの英作文であれば問題なく使えるはずです。自分の作った英文の発音が分からない時などは、「Google翻訳」などにはりつけてマイクボタンを押すとしゃべってくれます。他にも英文の読み上げサイトがいくつかありますので、自分に合うものを探してみるのも良いでしょう。
⑦ 達成感のある目標を短期で立てる
:中高一貫校ですと、先生の独自のカリキュラムなどで進んでいくために先の展開が見えず、自分のやっていることが力として積み重なっているのか、どこまで進んで何が不足しているのかが見えづらいことがあります。中高一貫校では、中学の成績よりは高校の成績の方が重要であることが多いので、定期考査の校内順位については必要以上にこだわらず(進級は必要ですが)、「文法問題集を夏までに第10章まで終わらせる」、「英検準2級を目指す」、「中1の終わりまでに単語帳の1200語を覚える」など、自分にとって達成感のある具体的な目標を掲げて、それを少しずつクリアしていく形を作ると、モチベーションが保てます。
また、英検などの検定対策と学習を両立させたい場合には、あらかじめ自学自習に用いる単語帳や長文学習用の問題集を目指す検定用のものを使うなどしていくと、二重負担になりにくくなります。ただし、文法問題集については検定用よりはもう少し体系的に文法がまとめられたものを探すと良いでしょう。
⑧ 学校にいるネイティブの先生を使い倒す
:言い方は悪いですが、学校にいるネイティブの先生とは良好な関係を築いておきましょう。授業に限らず、廊下ですれ違う、職員室で会うなどちょっとした機会に仲良く英語で話すことを繰り返していると、英語を話すことに対する抵抗感が減っていきます。英語を話せるようになるにはとにかく使うことです。最初は抵抗があってもしているうちに自然に口から出てくるようになるのは挨拶に似ていますね。
⑨ 英語を好きになれるような材料に出会う
:洋楽やドラマ・映画など、英語を聞くことが楽しくなったり、ポジティブにとらえられるようなものを探してみましょう。やはり、「好きこそものの上手なれ」というものがありますので、英語を好きになることはとても重要です。
【最後に】
:英語学習はただ詰め込むだけではなく、日々の復習や応用練習を繰り返すこと、何より「使うこと」が大切です。中学のうちは、学校の定期考査や検定などの外部試験に追われすぎず、「英語を使いこなしたい」という目標を忘れずに学習を進めましょう。
本気で英語を話したくなれば、環境が十分でなくても努力次第で必ず習得できます。スポーツ選手などが英語や他言語をマスターするのも、環境だけではなく努力があってこそ。あなたも、自分に合った学習法で着実にステップアップを目指しましょう!
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