勉強したのに忘れてしまうのはなぜ?高校受験・大学受験で実践したい記憶を定着させる復習法 ――「覚えたつもり」から卒業し、入試本番で使える知識に変える方法
「昨日覚えた英単語を、今日のテストでは思い出せなかった」
「何度も復習しているのに、世界史の用語がなかなか定着しない」
「数学の解き方を理解したはずなのに、数日後に同じ問題を解くと手が止まってしまう」
受験勉強をしていると、このような経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
特に受験が近づくと、覚えるべき内容が増え、以前に学習した内容を忘れてしまうことに焦りを感じる生徒も少なくありません。
しかし、ここで知っておいてほしいことがあります。
それは、一度覚えた内容を忘れてしまうこと自体は、決して特別なことではないということです。
重要なのは、一度覚えた内容を忘れないようにすることではなく、忘れかけたタイミングで思い出し、繰り返し使える状態にしていくことです。
実際、認知心理学の研究では、学習した内容を時間を空けて復習する「分散学習」や、何も見ずに思い出す「検索練習(想起練習)」が、長期的な記憶の定着に役立つことが示されていま
今回は、高校受験・大学受験に向けて、英語・数学・国語・社会・理科それぞれの復習方法と、日々の学習に取り入れやすい具体的なスケジュールを紹介します。
1.なぜ、勉強した内容を忘れてしまうのか?
まずは、勉強した内容を忘れてしまう理由を考えてみましょう。
① 覚えたつもりになっている
教科書や参考書を何度も読み返していると、内容を理解できているように感じることがあります。
しかし、文章を見れば意味が分かることと、何も見ずに自分で思い出せることは別です。
例えば、英単語帳を見ながら学習しているときは、日本語訳を見て「この単語は分かる」と感じるかもしれません。
ところが、実際の長文やテストでその単語が出てきたとき、意味がすぐに思い浮かばないことがあります。
これは、単語を見れば認識できる状態と、自分で意味を思い出せる状態に差があるためです。
記憶を定着させるためには、ただ読み返すだけでなく、何も見ずに思い出す練習が必要です。
② 一度にまとめて覚えようとしている
テスト前日に大量の用語を覚えたり、休日に一週間分の学習内容をまとめて復習したりしていないでしょうか。
短時間で集中して覚えることにも意味はありますが、それだけでは時間が経った後の記憶を維持しにくい場合があります。
例えば、英単語を100語まとめて覚える場合と、毎日20語ずつ確認しながら数日に分けて復習する場合では、学習の進め方が異なります。
重要なのは、一度に大量の内容を詰め込むことではなく、学習した内容に何度も触れる機会を作ることです。
文部科学省が紹介している認知心理学に基づく学習方略でも、時間を空けて復習する「分散学習」が効果的な方法の一つとして取り上げられています。
③ 復習のタイミングが適切ではない
学習した内容を何度も復習することは大切ですが、同じ日に何度も繰り返すだけでは、長期的な定着につながりにくいことがあります。
例えば、数学の公式を覚えた直後に10回確認するよりも、翌日や数日後にもう一度使ってみるほうが、時間が経っても思い出せるかを確認できます。
復習では、学習した直後だけでなく、少し時間を空けた後にも思い出す機会を作ることが重要です。
④ 覚えた知識を使う機会が少ない
知識を覚えることと、その知識を問題の中で使えることは同じではありません。
例えば、世界史の重要用語を覚えていても、年代整序や正誤問題、史料問題になると正解できないことがあります。
数学でも、公式を覚えていても、問題の条件に合わせて使い分けられなければ得点にはつながりません。
覚えた知識を実際の問題で使う練習を行うことで、単なる暗記から応用できる知識へとつなげていきましょう。
2.記憶を定着させるために取り入れたい3つの学習方法
では、具体的にどのような復習をすればよいのでしょうか。
ここでは、受験勉強に取り入れやすい3つの方法を紹介します。
① 想起練習:何も見ずに思い出す
最初に取り入れたいのが、想起練習です。
これは、教科書やノートを見ずに、学習した内容を自分の記憶から取り出す練習です。
例えば、次のような方法があります。
英単語の日本語訳を見て、英語を答える。
世界史の出来事について、背景や結果を説明する。
理科の公式を何も見ずに書き出す。
数学の解法を、最初から自分で再現する。
国語の文章を読んだ後、筆者の主張を説明する。
ここで大切なのは、すぐに答えを確認しないことです。
まずは自分で思い出そうとし、答えられなかった部分を確認します。
その後、正しい内容を理解し、もう一度何も見ずに答えてみましょう。
アメリカの心理学研究者Dunloskyらによる学習方略のレビューでは、練習テスト(Practice Testing)と分散学習(Distributed Practice)が、幅広い学習内容に活用できる有効性の高い方法として評価されています。
つまり、ただ読むだけでなく、自分の記憶から答えを取り出すことが重要なのです。
② 分散学習:時間を空けて繰り返す
次に取り入れたいのが、分散学習です。
これは、一度にまとめて学習するのではなく、時間を空けながら何度も復習する方法です。
例えば、英単語を覚えた場合、次のようなスケジュールを設定できます。
タイミング学習内容1日目新しい単語を覚える2日目前日に覚えた単語を確認する4日目もう一度テストする7日目意味を思い出せるか確認する14日目忘れていないか再確認する
これは実践しやすい復習スケジュールの一例です。すべての生徒にとって最適な間隔が決まっているわけではありません。
簡単に思い出せる内容は間隔を広げ、何度も間違える内容は早めに復習するなど、自分の定着度に合わせて調整しましょう。
大切なのは、学習した内容を一度きりで終わらせず、何度も思い出す機会を作ることです。
③ 関連付け:知識をつなげて理解する
3つ目は、学習した内容を別の知識や具体例と関連付ける方法です。
単独の情報として覚えるよりも、背景や理由、具体例と結び付けることで、知識を整理しやすくなります。
例えば、世界史で「フランス革命」という用語を覚えるだけでなく、次のように整理してみましょう。
なぜ革命が起こったのか。
どのような社会的・経済的背景があったのか。
革命によって政治体制はどう変化したのか。
その後、ヨーロッパ各地にどのような影響を与えたのか。
こうすることで、一つの用語が複数の知識と結び付きます。
数学なら、公式の丸暗記だけでなく、公式が成り立つ理由や使える条件を確認することが重要です。
英語なら、単語の意味だけでなく、実際の英文の中でどのように使われるかを確認するとよいでしょう。
文部科学省が紹介する学習方略にも、学習内容に理由や意味を加えて理解を深める「精緻化」や、既に知っている内容と関連付ける方法が含まれています。
3.教科別に考える、記憶を定着させる復習方法
ここからは、英語・数学・国語・社会・理科について、具体的な復習方法を紹介します。
英語:単語・文法を覚えるだけでなく、実際に使う
英語の学習では、単語や文法を覚えたつもりでも、長文や英作文で使えないことがあります。
そのため、次のような復習を取り入れましょう。
英単語
英語を見て日本語の意味を答える。
日本語を見て英語を答える。
前日に間違えた単語だけを再テストする。
実際の英文の中で意味を確認する。
特に、英語から日本語に訳せるだけでなく、日本語から英語を思い出す練習も取り入れると、知識の使い方を広げられます。
ただし、すべての単語について最初から完璧なスペルまで求める必要はありません。志望校や学習段階に合わせて、意味・発音・スペル・使い方のどこまで身につけるかを決めましょう。
英文法
文法問題を解いた後は、正解したかどうかだけでなく、なぜその答えになるのかを説明してみましょう。
例えば、不定詞と動名詞の問題なら、それぞれの意味や使い方を整理し、実際の英文で確認します。
長文読解
長文を解いた後は、間違えた設問の根拠を確認し、重要な英文を精読しましょう。
翌日、本文を見ずに文章の大まかな内容や段落ごとの要点を説明できるか確認するのも効果的です。
数学:解法を暗記するのではなく、自力で再現する
数学では、解説を読んで理解したつもりになってしまうことがあります。
しかし、入試本番では解説を見ることはできません。
そのため、復習では次の手順を意識しましょう。
間違えた問題の解説を読んで理解する。
解説を閉じ、最初から自分で解く。
数日後にもう一度解く。
数字や条件が異なる類題にも取り組む。
特に重要なのは、解法の流れを自分で説明できるようにすることです。
例えば、二次関数の問題なら、公式を覚えるだけでなく、問題の条件からどの情報を使い、どのように式を立てるのかを整理しましょう。
同じ問題を正解できるようになった後は、類題を使って応用できるか確認することも大切です。
国語:文章の内容と解答の根拠を思い出す
国語は、単純な暗記だけでは得点につながりにくい教科です。
そのため、文章を読んだ後に内容を思い出す練習や、解答の根拠を説明する練習を取り入れましょう。
現代文
段落ごとの要点を説明する。
筆者の主張を自分の言葉でまとめる。
選択肢の正誤を本文の根拠から説明する。
記述問題で必要な要素を整理する。
古文
古文単語の意味を繰り返し確認する。
助動詞の意味・接続・活用を整理する。
主語や登場人物の関係を確認する。
現代語訳を見ずに、重要部分の意味を説明する。
国語では、文章を何度も読むだけでなく、何が書かれていたのか、なぜその解答になるのかを自分で説明することが重要です。
社会:用語を覚えた後に、時代や地域との関係を確認する
社会は、記憶を定着させる復習方法を取り入れやすい教科です。
ただし、重要用語を一問一答で覚えるだけでは、入試問題に対応できない場合があります。
例えば、世界史の学習なら、次のような復習を行いましょう。
第1段階:重要用語を思い出す
人物名
王朝名
条約名
政治制度
重要な出来事
第2段階:背景と結果を説明する
なぜその出来事が起こったのか。
どのような影響があったのか。
ほかの地域とどのような関係があったのか。
第3段階:資料や問題で確認する
地図から地域を判断する。
年代整序問題に取り組む。
史料やグラフから必要な情報を読み取る。
正誤問題で知識の正確性を確認する。
例えば、宗教改革を学習した場合、ルターやカルヴァンの名前を覚えるだけでなく、宗教改革が起こった背景や、その後のヨーロッパの政治・社会への影響まで整理しましょう。
知識を関連付けて覚えることで、正誤問題や論述問題にも対応しやすくなります。
理科:用語・原理・計算・実験を結び付ける
理科では、暗記と理解の両方が必要です。
例えば、電流や電圧の学習では、公式を覚えるだけでなく、電流・電圧・抵抗の関係を理解し、実際に計算できるようにする必要があります。
復習では、次のような方法を取り入れましょう。
重要用語を何も見ずに説明する。
公式を自力で書き出す。
公式を使う条件を確認する。
実験の目的・結果・考察を説明する。
間違えた計算問題を数日後に解き直す。
特に実験問題では、結果を暗記するだけでなく、なぜその結果になるのかを説明できるようにしましょう。
4.今日から実践できる、1週間の復習スケジュール
ここまで紹介した学習方法を、実際の生活に取り入れるための例を紹介します。
今回は、毎日30分程度を復習に使う場合を想定します。
日程学習内容目的1日目新しい内容を学習し、最後に小テスト初回の理解と確認2日目前日の内容を何も見ずに思い出す初期の定着確認3日目間違えた内容を中心に復習弱点の補強4日目関連する問題や類題を解く知識の活用5日目1日目の内容を再テスト記憶の再確認6日目複数の単元を混ぜて復習知識の使い分け7日目1週間の総復習テスト定着度の確認
このスケジュールはあくまで一例です。
すべての内容を同じ間隔で復習する必要はありません。すぐに思い出せる内容は復習の間隔を広げ、何度も間違える内容は早めに再確認するなど、理解度に応じて調整しましょう。
また、復習に30分しか使えない場合でも、最初から最後までノートを読み返す必要はありません。
例えば、次のような配分も考えられます。
10分:前回学習した内容を思い出す。
10分:間違えた内容を確認する。
10分:問題を解いて定着度を確認する。
短い時間でも、目的を明確にして取り組むことが大切です。
5.復習しているのに覚えられないときの見直しポイント
復習を続けていても、なかなか記憶が定着しない場合があります。
そのようなときは、次の点を見直してみましょう。
① 復習が「読むだけ」になっていないか
ノートや参考書を何度も読み返しているだけでは、自分で思い出せるかどうかを確認できません。
一度本を閉じて、学習した内容を説明したり、問題を解いたりしてみましょう。
② 間違えた問題を放置していないか
一度間違えた問題は、正解を確認しただけで終わらせないようにしましょう。
なぜ間違えたのかを整理し、再度自力で解けるか確認することが大切です。
③ 復習する内容が多すぎないか
復習する範囲が広すぎると、一つひとつの内容を十分に確認できなくなることがあります。
最初は、間違えた問題や重要な内容に絞って復習し、少しずつ範囲を広げていきましょう。
④ 学習した内容を使う練習が不足していないか
用語や公式を覚えていても、問題の中で使えなければ得点につながりません。
一問一答だけでなく、文章題・資料問題・応用問題などにも取り組み、知識を使う練習を行いましょう。
6.保護者の方に意識していただきたいこと
子どもが何度も同じ内容を忘れてしまうと、保護者の方としては不安になることもあると思います。
「前にも教えたのに、どうして覚えていないの?」
「何度も復習しているのに、また間違えている」
このように感じることもあるかもしれません。
しかし、覚えた内容を忘れてしまうことだけを問題にする必要はありません。
大切なのは、忘れてしまった内容をもう一度思い出し、次に同じ問題が出たときに正解できるようにすることです。
例えば、次のような声かけをおすすめします。
「今日は何を覚えられるようになった?」
「昨日間違えた問題は、今日は解けるようになった?」
「どの部分がまだ曖昧なのかな?」
「次はいつ復習してみようか?」
また、保護者の方がすべての学習内容を管理する必要はありません。
本人が自分で復習の予定を立て、何を覚えていて、何を忘れているのかを確認できるようになることも重要です。
受験勉強では、知識を覚える力だけでなく、自分の理解度を把握し、必要な復習を行う力も求められます。
少しずつ、自分で学習を管理できるように支えていきましょう。
7.記憶を定着させるためのチェックリスト
最後に、普段の勉強方法を見直すためのチェックリストをまとめます。
教科書やノートを読むだけでなく、何も見ずに思い出す練習をしている。
一度学習した内容を、翌日や数日後にも確認している。
間違えた問題の原因を整理している。
解説を読んだ後、自分の力で解き直している。
覚えた知識を実際の問題で使う練習をしている。
暗記した内容を、背景や理由と関連付けて理解している。
苦手な内容は、復習の間隔を短くしている。
自分で復習の予定を立て、学習内容を管理している。
すべてを一度に実践する必要はありません。
まずは、毎日の勉強の最後に5分だけ、今日学習した内容を何も見ずに思い出す時間を作ってみましょう。
それだけでも、普段の学習方法を見直すきっかけになります。
まとめ:「覚えること」だけでなく「思い出すこと」を大切にしよう
勉強した内容を忘れてしまうことは、決して珍しいことではありません。
重要なのは、一度覚えた内容を完璧に維持しようとすることではなく、忘れかけた内容を繰り返し思い出し、少しずつ定着させていくことです。
そのためには、次の3つを意識しましょう。
何も見ずに思い出す練習をする。
時間を空けて繰り返し復習する。
覚えた知識を、実際の問題や関連する知識と結び付ける。
特に受験勉強では、覚えた知識を入試本番で使える状態にしておくことが重要です。
英単語を覚えたら長文の中で使えるか確認する。数学の公式を覚えたら問題を解けるか確認する。世界史の用語を覚えたら、時代背景や因果関係まで説明できるか確認する。
このような学習を積み重ねることで、単なる暗記から、得点につながる知識へと変えていくことができます。
「一度で覚えること」を目指すのではなく、「何度でも思い出せる状態」を目指しましょう。
毎日の小さな復習が、受験本番での大きな力につながります。
学習方法や復習計画についてお悩みの方へ
「何度も勉強しているのに、なかなか知識が定着しない」
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受験勉強の進め方や記憶の定着に不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
参考情報
文部科学省「認知心理学の知見に基づく効果的な学習方略の例」
https://www.mext.go.jp/content/20260206-mxt_kyoiku01-000047188_003.pdfCarpenter, S. K., Pan, S. C., & Butler, A. C. (2022). The science of effective learning with spacing and retrieval practice. Nature Reviews Psychology.
https://www.nature.com/articles/s44159-022-00089-1Dunlosky, J. et al. (2013). Improving Students' Learning With Effective Learning Techniques: Promising Directions From Cognitive and Educational Psychology.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26173288/Karpicke, J. D., & Blunt, J. R. (2011). Retrieval Practice Produces More Learning than Elaborative Studying with Concept Mapping. Science.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21252317/
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