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言葉の「力能」が死ぬとき――早稲田大学の解説とある悲しみについて(´;ω;`)

2026/2/23

マナリンクで国語を教えている島田です。

最近、少し、悲しい気持ちになることがありました……。

早稲田大学の過去問を解きながら、

ふと「世の中ではこの難問がどう語られているんだろう」と思い、

市販の赤本の解説や、巷で人気の教育系YouTuberの動画をいくつか覗いてみたんです。

受験生の皆さんが、どんな言葉を信じて戦場に向かおうとしているのかを知りたかった。

でも、そこで目にしたのは、言葉に対する無理解で、すこしの傲慢な態度でした……。

早稲田大学2025法学部の二つ目の評論は、ある「ドゥルーズ」研究者の重厚な論説文を扱っています。

その文章の核となる場所に「力能(りきのう)」という言葉があります。

すると、ある解説にはこう書かれていたんです。

「この『力能』という言葉は、おそらく著者の造語だろう。一般的な『能力』という言葉に置き換えて読んで差し支えない」と。

……私は、しばらく呆然としてしまいました。

「力能(puissance)」は、著者の造語などではありません。

それは、スピノザからドゥルーズへと受け継がれ、彼らがその知の生涯をかけて定義しようとした、重く、鋭い、哲学の結晶のような言葉なのに……。

「能力(capacité)」が、すでにある物差しで測れる「これくらいできる」という予定調和な力だとするならば、

「力能」とは、

その枠組みを内側から食い破り、新しい世界との関係性を爆発させるような、もっと根源的なエネルギーのことです。

革命を起こせるかもしれない根源的な力がこの「力能」という言葉には込められています。

この二つを「同じもの」として読み替えてしまったら、筆者が命を削って書いた議論の「熱」は冷めてしまう……。

早稲田が、あえてこの難解な文章を、法を志す若者にぶつけた「出題意図」の核心も、バラバラに崩れてしまう。

それは、楽譜の読めない指揮者が「この音符は誤植だから無視していいよ」とタクトを振っているような、そんな怖ろしさです。

さらに別の動画では、早稲田出身だという講師が、現代思想の巨人である「ドゥルーズ=ガタリ」を指して、「あ、これ二人組だったんですね!驚きましたね〜」と笑いながら話していました。

……悲しかったです。

ドゥルーズとガタリが、二人で、あるいは無数の群れとして思考しようとしたあの闘いを、そんなふうに消費してほしくなかったし、ドゥルーズ=ガタリの名前はところどころ入試に出題される重要な人物であるのに……。

もちろん、受験生が哲学の専門家になる必要はありません。

ドゥルーズの著作を読破している必要もない。

でも、教える側は、せめてその言葉が「どこから来たのか」を知っていなければならないと思いますし、知らないなら、「そのすごさ」を調べなければならない。

この職業を生業にするには、それくらいの使命があります。

受験生を導くのですから――。

そうでなければ、あの迷路のような早稲田の選択肢の、その「一単語の重み」をどうやって生徒に伝えられるというのでしょうか。

私は、心の中でこう思いました。

「私なら、もっと深い場所を見せてあげられるのに」と。

早稲田の現代文は、たしかに「思考の果て」に近い難しさです。

でもそれは、言葉を記号として処理する人間を振るい落とし、言葉の背後にある「人間」と対話しようとする者を招き入れるための、彼らなりの誠実な関門なのだと私は思います。

だから、私はすこしでも知っておいてほしい。

論理を教えながらも、少しでも、思想のエッセンスを知ってほしい。

「力能」を「能力」と読み替えて安心するのではなく、

その言葉が持つ「枠組みを壊す力」に、

ゾクッとするような知の興奮を感じてほしい。

「ドゥルーズ=ガタリ」を単なる二人組の名前として暗記するのではなく、彼らが壊そうとした「思考の壁」の向こう側を、すこしだけでも伝えたい。

私の授業は、効率的ではないかもしれません。

でも、言葉を殺さない。

言葉に宿る「力能」を、そのまま皆さんの手のひらに届けたい。

もし、あなたが今、過去問の解説に「なにかが違う」という違和感を抱いているのなら。

その違和感を、大切にしてください。

その先にある、本当の「言葉の格闘」の場に、私は立って、待っています。

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