予習シリーズだけ仕上げても、本番で詰まる学校がある
了解です。面談の該当素材を確認します。
使う素材:
疲労(慶應湘南)・三田国際は「問題が悪い」問題が多い
予習シリーズは変な問題を入れない=良問のみ
捨て問2種類:実力不足型 vs 問題が悪い型
悪問への「慣れ」も受験準備の一部
予習シリーズのクラスアルファの位置づけ
難関校の最後の数問は「解いてもらおうと思っていない」出題者のメッセージ論
入試分析色が強いので3000〜4000字で書きます。
予習シリーズだけ仕上げても、本番で詰まる学校がある
中学受験の算数対策として、予習シリーズを軸に学習を進めている家庭は多い。四谷大塚が長年かけて作り上げたこの教材は、基本から応用まで体系的に構成されており、良質な問題が揃っている。これは本当のことだ。
ただ、一つ言っておきたいことがある。
予習シリーズが「良質な問題しか入れない」という強みは、同時に弱点にもなる。本番の入試問題には、良質とは言えない問題が混じっている学校がある。そこへの対策として、予習シリーズは何もしてくれない。
捨て問には2種類ある
受験指導をしていると、「捨て問」という言葉をよく使う。解かずに飛ばす問題のことだ。
捨て問には2種類ある。
一つは「実力不足型」。自分の現在の実力では解けない問題だ。これは実力が上がれば解けるようになる。捨てるのは今だけで、将来的には捨て問ではなくなる。
もう一つは「問題が悪い型」。問題の作りそのものに難がある問題だ。解法が一意に定まらない、条件が曖昧、あるいは正攻法では到底制限時間内に解けない設計になっている。こういう問題は、実力をどれだけ上げても、試験本番で解こうとすること自体が誤りだ。
この2種類を混同すると、対策の方向が狂う。
「問題が悪い型」の捨て問を「実力不足だから解けない」と勘違いして、難問演習を積み続ける。でも問題の作りが悪い以上、どれだけ練習しても本番で「解けた」という感覚にはならない。時間だけが消費される。
志望校の問題を「分析対象」として見る
ここで正直に言う。
神奈川の一部の中堅校の問題を見ると、首を傾げることがある。四谷大塚や日能研の教材を作っているような出題者が見れば、「これは良問とは言えない」と判断するであろう問題が、本番の入試に出てくる。
なぜそういう問題が出るのか。出題者の意図は様々だが、受験生の数が多い学校や、毎年問題を大量に作らなければならない学校では、品質のばらつきが出やすい。また、難関校の最後の数問は、そもそも試験中に解いてもらうことを想定していないケースがある。過去問を丁寧に研究した受験生へのメッセージのようなもので、試験会場で時間をかけて取り組む問題ではない。
こういう構造を知った上で志望校の過去問を見ると、「解けなかった」という事実の意味が変わってくる。実力が足りないのか、問題が悪いのか。この判断ができるかどうかが、過去問対策の精度を大きく左右する。
予習シリーズが教えてくれないこと
予習シリーズの問題は、出題の意図が明確だ。何を測ろうとしているか、どこに気づけば解けるか、筋道が整理されている。良問とはそういうものだ。
この良問への最適化が進むと、ある種の問題に対して過剰反応するようになる。条件が曖昧に見える問題、解法への入口が見えにくい問題、どこから手をつければいいか分からない問題。こういう問題に出会ったとき、「自分には解けない」という結論に早く飛びつきすぎる。
でも実際には、その問題が悪いだけのこともある。解法が見えないのは自分の実力不足ではなく、問題の作りが雑なせいだ。この状況を正確に診断できないと、本番で「問題が悪い型」の捨て問に時間を使いすぎて、確実に取れる問題を落とすことになる。
予習シリーズは良問を揃えているが、「悪問との付き合い方」は教えてくれない。それは別途、志望校の過去問を通じて身につけるしかない。
悪問への「慣れ」という準備
では悪問への対策として何をするか。
答えは単純で、志望校の過去問を早い段階から触れることだ。解けなくていい。解法を覚える必要もない。「この学校の問題はこういう出し方をする」という感覚を、時間をかけて積み上げることが目的だ。
難関校の最後の数問については、解説を読んで理解できても、試験本番でその解法を再現することはほぼ不可能だ。それよりも、その問題を前にして「これは捨てる」という判断を即座に下せるようになることの方が価値が高い。過去問への慣れは、この判断速度を上げる。
一方、中堅校の「問題が悪い型」の問題に対しては、別の慣れが必要になる。条件が曖昧な問題を前にしたとき、焦らずに解釈を一つ決めて手を動かせるか。答えが出なくても、出せる数字だけ出して次に進めるか。こういう「泥臭い対応力」は、良問ばかりを解いていても育たない。
予習シリーズの使い方を間違えない
誤解のないように言っておく。
予習シリーズは優れた教材だ。基本問題から練習問題、そして最難問題集まで、段階的に力をつけるための構造がしっかりしている。特に基本問題と練習問題を徹底的に仕上げることが、中堅校から上位校への土台を作る。この部分に手を抜いて応用問題や過去問に飛びつくのは、「上滑り」の典型だ。
ただ、予習シリーズを完璧に仕上げることと、志望校に合格することは、イコールではない。
予習シリーズは全国の受験生に向けた汎用教材だ。志望校固有の出題傾向、問題の癖、捨て問の見極め方は、その学校の過去問からしか学べない。汎用の武器を磨き上げた後に、志望校専用の戦術を上乗せする。この2段階が必要だ。
親が知っておくべき「問題の品質」という視点
子供が過去問を解いて、できなかったとする。
その問題が「実力不足型」の捨て問なのか「問題が悪い型」の捨て問なのか、保護者が判断するのは難しい。でも一つだけ確認できることがある。
解説を読んで、解法の筋道が自然に理解できるかどうかだ。読んでも「なぜこの発想が出てくるのか」が分からない、あるいは解説自体が回りくどくて腑に落ちない場合、それは問題の作りに難がある可能性がある。解説が明快で、読めば「なるほど」と思えるなら、それは実力で取りに行くべき問題だ。
すべての問題を「解けなかった=実力不足」と捉えると、対策の優先順位が歪む。問題の品質を見る目を少しだけ持つことが、過去問活用の精度を上げる。