算数は4科目で最も成績を上げやすい科目だ
国語の偏差値が70近くあるのに、算数だけランキングから消える。こういう子供を持つ家庭の保護者は、決まって同じことを言う。
「うちの子、算数が苦手なんです」
僕はこの言葉を聞くたびに、少し残念な気持ちになる。なぜなら、その認識こそが、最も伸びるはずの伎科目を放置させている原因だからだ。
結論を先に言う。4科目の中で、最も短期間で成績を動かせるのは算数だ。これは慰めでも精神論でもない。科目の構造から来る、ただの事実だ。
国語は半年、算数は数週間
僕は保護者と話す時、よく「成績が上がるまで半年は見てください」と伝える科目がある。国語だ。
国語の成績を上げるには、思考の癖そのものを書き換える必要がある。文章をどう読むか、設問をどう解釈するか、長年積み重ねてきた読み方の習慣を一度分解して、別の組み方に作り直す。これには時間がかかる。半年というのは、決して大げさな数字ではない。
社会も時間がかかる。覚える量そのものが膨大で、しかも単元ごとに知識が積み上がっていく構造のため、抜けている部分をそのままにしておくと、後の単元の理解にも響いてくる。コツコツとした蓄積でしか追いつけない。
ところが算数は違う。算数の成績が伸び悩んでいる子の多くは、頭が悪いわけでも、センスがないわけでもない。単に、基本問題に対する反応速度が低いだけだ。これは反復で直る。直るまでに半年もかからない。
偏差値60の壁は、才能の壁ではない
四谷大塚系のコースで言えば、BコースからCコースに上がる時、多くの子供が一度大きく点数を落とす。実力で言えば80点取れるはずの問題で、40点しか取れない、ということが普通に起きる。
理由は単純だ。Cコースから出てくる練習問題、応用問題に慣れていないからだ。基本問題は完璧にできるのに、見慣れない形式の問題が出てくると、手が止まる。
これは才能の差ではない。場数の差だ。
Cコースの子が基本問題を簡単だと感じるのは、頭が特別良いからではない。基本問題に対する反応が、もう条件反射の領域に入っているからだ。一度説明を受けたら二度目は完璧、というレベルまで、反復が完了している。
ここに到達するための道具は、特別なものではない。週テストの過去問を、大問の小問単位で、1分未満で解けるようになるまで繰り返す。これだけだ。地味で、面白くもなんともない。ただ、これをやった子とやっていない子の間には、数ヶ月で明確な差が生まれる。
算数で結果を出すと、他の科目も動き出す
ここからが、算数を最初に攻めるべき本当の理由だ。
子供のやる気は、結果から生まれる。これは何度も言っていることだが、算数はその「最初の結果」を最も作りやすい科目だ。
国語や社会で短期間に点数を跳ね上げるのは難しい。だが算数なら、正しい反復を2、3ヶ月続けるだけで、偏差値が動く。子供自身が、その変化に気づく。
そして面白いことに、算数の点数が上がると、子供は「自分は頭が良いのかもしれない」と勘違いし始める。この勘違いは、他の科目にも波及する。算数ができるなら国語もできるんじ�と思い始める。社会もちゃんとやれば伸びるんじゃないかと思い始める。
つまり、算数は4科目の中で唯一、短期間で「俺、頭いいじゃん」という感覚を子供に与えられる科目だ。この感覚が、残りの科目への取り組み方を変える。
逆に言えば、算数が苦手なまま放置されている子は、最も簡単に得られるはずの自己肯定感の入り口を、ずっと閉じたままにしているということになる。
「算数が苦手」という認識こそが、最大の機会損失
保護者が「算数が苦手」と捉えている家庭ほど、実は伸びる余地が大きい。なぜなら、伸びやすい科目で結果が出ていないということは、単純に正しい練習がまだ行われていないだけだからだ。
国語が苦手な子を半年で偏差値10上げるのは、簡単ではない。だが算数が苦手な子を、2、3ヶ月で大きく動かすのは、現実的に可能だ。
優先順位を間違えてはいけない。社会の暗記が遅れている、国語の読解が安定しない、そういう悩みは確かにある。だが、最初に手をつけるべきは、最も投資対効果の高い科目だ。
算数で結果を出す。子供に勘違いさせる。その勘違いを燃料にして、他の科目に取り組む。この順番を守るだけで、家庭の中の空気が変わる。
算数が苦手だという思い込みを、今日で終わらせてほしい。それは苦手なのではなく、まだ正しく扱われていないだけだ。
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