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中学受験 算数 解き方の順序〈算数の設計図①〉

2026/8/22

このシリーズでは、算数をひらめきに任せません。経営工学を学んだ講師が、解法を設計の問題として扱ったらどうなるか。その記録です。中学受験の算数で、問題を読んだ瞬間に式を書き始めていませんか。手が止まる子と、スラスラ解ける子の差は、計算力ではありません。手を動かす前の順序です。今回は、僕が生徒に徹底させている解き方の順序を書きます。

先に断っておくと、算数の解法をすべてシステム化することはできません。ひらめきが要る問題は実在します。ですが、そこにたどり着くまでの手順は決まっています。

順序1:何を求めるのかに線を引く

最初にやるのは、設問の最後の一文に線を引くことです。何を答えるのか。

速さを求めるのか、時間を求めるのか。全体の個数なのか、残りの個数なのか。ここを取り違えたまま正確に計算しても、答案はゼロ点です。しかも本人は解けたつもりでいるので、見直しでも気づけません。

難問で落とすより、この読み違いで落とすほうが、はるかに多い。だからまず、ゴールに線を引きます。

順序2:どのタイプの問題か、全体をつかむ

次に、細部に入る前に問題の型を判断します。

これは速さの問題なのか、割合なのか、図形なのか。同じ速さでも、旅人算なのか、速さと比なのか、点の移動なのか。この判断がついた時点で、使う道具が決まります。

いきなり数字を拾って計算を始める子は、この判断を飛ばしています。だから途中で行き詰まり、何をしていたか見失う。国語で全体をつかんでから細部に入るのと、まったく同じ順序です。

順序3:条件を紙に書き出す

型が決まったら、条件を書き出します。ここが最も重要です。

僕が授業で最も多く言うのは、暗算をやめなさい、です。図を描く、表を作る、条件に番号を振る、単位を書く。すべて紙の上でやります。

理由は根性論ではありません。頭の中で処理しようとすると、作業記憶がいっぱいになるからです。人間が同時に保持できる情報の数には限りがあります。条件を頭で保持したまま計算まですると、後半で必ず息切れする。実際、試験の終盤で急にミスが増える子は、前半で頭を使いすぎています。

紙に逃がした分だけ、思考に余力が生まれます。

順序4:書き出す道具は、絞って使う

ここで多くのご家庭が誤解します。解法を100個覚えれば強くなる、と。

僕が生徒に持たせる道具は限られています。線分図、面積図、ダイヤグラム、表。この4つが自在に使えれば、中学受験算数の大半は処理できます。

道具が多いほど、どれを使うか迷います。試験中に迷う時間は、そのまま失点です。だから増やさず、絞ったものを何度も使わせる。使い慣れた4つの道具のほうが、うろ覚えの20個より確実に機能します。

順序5:解けるか解けないかを判断する

書き出した段階で、この問題に取り組むかどうかを判断します。

条件を整理して、方針が立たない。使う道具の見当がつかない。そういう問題は、いったん飛ばします。

合格最低点は満点ではありません。多くの学校で6割前後です。つまり4割は落としてよい。どの4割を捨てるかを決めないまま全問に取り組むから、確実に取れたはずの問題まで時間切れで落とします。

捨てる判断は、逃げではなく戦略です。

順序6:解いたら、必ず見直す

最後に、答えを出したら見直します。ここを飛ばす子が本当に多い。

見直しといっても、最初から解き直す必要はありません。求めたものが設問と一致しているか。単位は合っているか。答えの大きさは常識的か。この3点だけで、失点の多くは防げます。

簡単な問題ほど、ミスが命取りになります。難問を1問取るより、計算ミスを2問減らすほうが、はるかに簡単で確実です。

ひらめきは、順序の先にある

冒頭に書いたとおり、算数にはひらめきが必要な問題があります。補助線をどこに引くか、どの条件から手をつけるか。ここは経験と勘の領域で、手順化しきれません。

ですが、ひらめきが降りてくるのは、条件が紙の上に整理されている状態のときだけです。頭の中がぐちゃぐちゃな子に、ひらめきは起きません。

順序を守ることは、ひらめきを待つための準備です。

明日から親がすべき、非情な決断

お子さんが問題を解いているとき、答えではなく問題用紙の余白を見てください。

白いままなら、順序を飛ばしています。何を求めるかに線が引いてあるか。図や表が描いてあるか。条件に番号が振ってあるか。

余白が汚れている子は伸びます。きれいなままの子は、頭の中だけで戦っていて、いずれ限界が来ます。

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