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【爆アゲ先輩・ユウキ君編②】「時間がないから」と途中式を書かない子が、時間切れになる理由

2026/10/7

実録・爆アゲ先輩 ユウキ君編「合格可能性20%からの40日」

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この連載は、12月の模試で合格可能性20%だったユウキ君(仮名)が、残り40日で第一志望に逆転合格するまでの記録です。私が担当したのは、算数の特訓授業と、勉強の仕方全体の立て直し。進学塾の教室長、個人塾の塾長として30年、受験直前のご家庭と向き合ってきた私が、作戦の中身まで包み隠さずお伝えします。

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■前回のあらすじ

12月の首都圏模試で、算数の偏差値50、合格可能性20%。塾からは志望校の変更をすすめられていたユウキ君。「志望校を下げるべきか」と迷うお母さんに、私は「無理なら、無理とお伝えします」と約束し、模試の問題用紙と成績表を見せていただくことにしました。

■3点セットを、3つの段階で見る

私がお願いしたのは、問題用紙・計算用紙・回答用紙の3点セットです。模試の場合、計算は問題用紙の余白に、回答用紙はスキャンされて成績表に印刷されています。ユウキ君の場合も、それで3点セットはそろいました。

見る順番は、いつも決まっています。

第一段階 問題用紙の余白を見る。途中計算をきちんと書けているか。

第二段階 文章題の問題文を見る。大事な数字や設定に、印はあるか。

第三段階 回答用紙を見る。空欄の有無と文字の丁寧さはどうか。

ユウキ君が「試験中に何をしていたか」がはっきりとわかります。

■第一段階 余白の使い方が、受験生としての成熟ぶりを語る

お母さんが持ってきてくださった問題用紙を、1ページずつめくっていきます。

私が真っ先に見るのは、回答用紙の正解か不正解かではありません。問題用紙の余白です。

ユウキ君の余白は、こんな様子でした。

・余白に、バラバラと計算が書いてある

・問題番号のメモがない

・筆算が問題文や図に重なっていて、何を求めた数なのか分からない

「ふむふむ……。これは、本気で合格を目指している子の計算じゃないんですよ」

計算そのものができない、という話ではありません。余白の使い方に、点が取れない理由が3つ並んでいました。

◆配置の問題 広い余白があると、子どもは真ん中から書き始める

よく見ると、(1)の計算が余白の真ん中に、大きく書いてあります。(2)は、その上から書き始めて、下へ進んだところで(1)にぶつかり、右へ逃げています。

不思議なもので、多くの子どもが、広い余白を渡されると真ん中から書き始めます。余白の端から順番に使う、という発想が最初はないのです。

この問題用紙なら、左上から横3段組で進めるのがおすすめです。左の列を下まで使ったら、真ん中の列。それが終わったら、右の列。順番に進めるだけで、計算同士がぶつかりません。ぶつからないと、あとから自分の計算を探しやすくなります。

◆消しゴムの問題 消す時間は、点にならない

筆算を消している跡、間違えた途中式を消している跡がありました。これは、時間の無駄です。

それに、消した計算が、本当に間違っていたとは限りません。間違えたと思っただけで、実は正しかった。やり直したほうこそ間違っていた。そんなことは、珍しくありません。消してしまえば、確かめる材料もなくなります。

左上から整然と並べて、やり直したくなったら消さずに、その下へ進む。この習慣がつくと、消す時間が減ります。見直しのときも、「あの計算、どこだっけ」と探す時間が減ります。余白は、消す場所ではなく、残す場所です。

◆番号の問題 (1)(2)のメモは、見直しの検索窓

計算の先頭に(1)(2)と書いておくと、見直しが格段に速くなります。ユウキ君の余白には、そのメモがありませんでした。

多くの子どもが、最初は面倒がります。これは、「ほんとだ!便利だ!」と実感するまでは、できればサボりたい作業です。無理に叱っても、続きません。

ご家庭でできるのは、こんな声かけです。模試から帰ってきて自己採点しているとき、正解できた問題を指して、「ここ、どうやって解いたの?」と聞いてみてください。番号を頼りに、すぐ「こうやって解いたよ」と教えてくれたら、すかさずこう言います。

「えらい!すぐに途中式を探せたね。テスト中にも、役立ったんじゃないかな?」

ポイントは、正解できた問題の途中式を尋ねることです。目的は、間違いを責めることではありません。無意識にやっていたことが、実は役に立っていた、と気づかせること。肯定感が高まると、面倒だった作業の意味が、だんだん分かってきます。

余白を見終えた時点で、私の頭の中には、すでに一つの結論がありました。ユウキ君は、計算ができない子ではありません。計算の置き場所と、残し方を知らないだけです。

ユウキ君の余白に、計算がなかったわけではありません。あとから使えない形で書いてあった。番号もなく、消し跡ばかりで、見直しの材料にならない。それなら、書いていないのと同じです。

■途中式の書き方は、誰も教えてくれない

学校も塾も、算数の「解き方」は教えます。でも、途中式の「書き方」までは、ほとんど教えません。どこに、どうやって計算するかを教えるのは、自分の仕事ではない。そう考えている先生が多いのです。

本当は、算数・国語・理科・社会の中身だけではなく、「ノートの書き方」「テストの時間配分」「家庭での時間の使い方」のように、どの教科にも使える「勉強のしかた」を教える時間が必要です。専任の先生がいてもいいくらいです。今の学校や塾には、その時間も、その役も、ほとんどありません。

似たようなことは、教育のあちこちにあります。以前の家庭科は、調理や裁縫は教えても、その土台である片付け(整理収納)は教えていませんでした。今は、単元として扱うようになっています。お金の知識も同じです。大人になって必要になるのに、長いあいだ本人と家庭任せでした。金融教育は、今になって少しずつ広がっています。

途中式の書き方も、これと同じです。誰の担当でもないと、いつまでも放置されます。

私は進学塾の教室長として、個人塾の塾長として、授業の時間や保護者会の時間を使って、受験生としての心構えと振る舞い方を伝えてきました。教科の土台はあるのに、振る舞いがいいかげんなために伸び悩んでいた子が、そこを整えただけで次々に伸びていきました。この連載のタイトルにある「爆アゲ」は、才能が開花したというより、振る舞いが変わった記録です。

■ユウキ君に今必要なのは、「緊急で、しかも効果が大きい」コレ

ユウキ君の中学受験に絞ると、今いちばん手をつけたいのは、算数の途中式の書き方です。緊急で、しかも重要。かけた時間に対して、点が返ってきやすい。直前期にこれほど効率の良い項目は、そう多くありません。

もう一つ、緊急で重要なものがあります。勉強部屋、カバンの中、プリントのファイル。身の回りの整理整頓です。こちらは、本人が一人で仕上げなくても構いません。応援団であるお父さん、お母さんが手伝える仕事です。周りが整うと、勉強の質も、量も、一気に上がります。

そして、途中計算の書き方を「ユウキ君がまだ習っていない単元」だと考えると、余白のぐちゃぐちゃはやる気がないからでも、能力が足りないからでもない。「習っていないから」、こうなっているだけです。

お父さん、お母さんから「途中計算を書きなさい」と言われても、なぜ書くのかが分からない。どう書いたらよいかも分からない。だから「時間がないから、ヤダ!」という、的はずれな反抗になります。反抗の中身は、怠けではありません。やり方を知らない子の、精いっぱいの返答です。時間がないからキチンと書かない。キチンと書かないから、消す、探す、やり直す。その時間こそが、時間切れの正体です。書くから間に合う。順番は、逆なのです。

ユウキ君と話す機会が来たら、途中式の目的、方法、効果を、楽しく伝えたいと思います。「途中式を科学する」時間です。

余白を見終えた私の結論は、最初に口にした言葉のままです。

「これは、本気で合格を目指している子の計算じゃないんですよ」

でも、その理由は、頭が悪いからではありませんでした。受験生としての振る舞いを、まだ誰も教えていなかった。ただ、それだけです。

■次回予告

余白を見ただけでは、まだ半分です。次に見るのは、文章題の問題文。大事な数字や設定に、線は引いてあるか。条件を抜き出したメモは、残っているか。

ユウキ君の問題文は、ほぼ真っ白でした。

次回【爆アゲ先輩・ユウキ君編③】文章題が真っ白な子は、問題を頭の中だけで解いている

■ユウキ君と同じ作戦を、お子さまにも

私のマナリンクのコース「【小6受験算数・直前期】逆転合格へ、元塾長秘伝の過去問作戦」では、ユウキ君と同じ流れで、合格最低点までの最短ルートを一緒に描きます。12月以降に始める方には、全4回のコース「【小6受験算数・直前】残り4回の逆転作戦|元塾長の過去問対策」もご用意しています。

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「もう無理かも」と思った今が、作戦を立て直す一番のタイミングです。

※本記事は実際の指導事例をもとに、個人が特定されないよう一部を変更しています。登場する人物名は仮名です。結果には個人差があり、成果を保証するものではありません。

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