帰国子女は英検1級・準1級にすぐ受かる?合格できる基準を数字で解説|母国語が合否を分ける理由
帰国子女なら英検は楽勝?「すぐ受かる帰国子女」の本当の基準と、合否を分ける“母国語”の話

「帰国子女だから英検1級くらいすぐ取れるでしょう」。保護者の方からも、生徒本人からも、こうした言葉を何度も聞いてきました。
結論から言います。帰国子女であることと、英検準1級・1級に「すぐ受かる」ことは、まったく別の話です。
海外に住んでいた、現地校に通っていた、発音がきれい、日常会話に困らない。どれも素晴らしい財産ですが、それだけで合格が約束されるわけではありません。実際、英検1級で不合格になる帰国子女の大半は、語彙問題と英作文でつまずいています。
この記事では、私が指導の現場で使っている「すぐ受かる帰国子女」の基準を、曖昧な表現を一切使わずに数字で示します。そして後半では、ほとんど語られることのない、しかし合否を根本から左右する**「母国語」の問題**についてお話しします。かなり厳しめの内容ですが、それが現実です。
英検準1級に「すぐ受かる」帰国子女の条件
準1級にすぐ受かる帰国子女とは、英語圏の現地校またはインターナショナルスクールで、9歳以降に連続2年以上、通算4年以上、全教科を英語で履修した経験があり、帰国後1年以内に受験するか、帰国後も週3時間以上英語で読み書きを続けている人です。
英語力の基準は CEFR B2 以上で、TOEFL iBT 90点以上、または IELTS 6.5以上をすでに取得していることが条件になります。語彙は9000語以上を受容語彙として持ち、そのうち6000語以上を英作文や会話で自分から使えることが求められます。
技能面の条件はさらに具体的です。英字新聞の一般記事や科学・社会系の解説文を辞書なしで1分あたり150語以上の速度で読み、段落ごとの要点を正確に言えること。社会問題について120〜150語の意見論述文を15分以内に、理由2つと結論を備えた構成で書き上げられること。60〜70語の要約文を、元の英文の表現をそのまま写さずに書けること。そして二次試験と同じ形式で、4コマのイラストを1分の準備で2分間のナレーションにまとめ、その後の質疑応答に1問あたり20秒以上の英語で答えられること。
ここまでできて、初めて「準1級はすぐ受かる」と言えます。
英検1級に「すぐ受かる」帰国子女の条件
1級にすぐ受かる帰国子女とは、英語圏の現地校またはインターナショナルスクールで、10歳以降に連続3年以上、通算5年以上、全教科を英語で履修した経験があり、帰国後1年以内に受験するか、帰国後も週5時間以上英語で読み書きを続けている人です。
英語力の基準は CEFR C1 以上で、TOEFL iBT 105点以上、または IELTS 7.5以上をすでに取得していることが条件です。語彙は1万5000語以上を受容語彙として持ち、そのうち1万語以上を自分から使えることが求められます。
1級の技能面の条件は、準1級とは次元が違います。英字新聞の社説や学術系の論説文を辞書なしで1分あたり200語以上の速度で読み、内容を正確に要約できること。社会問題について200〜240語の意見論述文を20分以内に構成から書き上げられること。二次試験と同じ形式で、5つの社会的テーマから1つを1分で選び、2分間の即興スピーチとその後の質疑応答を最後まで途切れずにこなせること。
政治、経済、科学、倫理といったテーマについて、初対面の面接官を相手に自分の立場を論理的に主張し続ける力が必要になります。
「すぐ受かる」とはどういう状態か
ここで言う「すぐ受かる」の意味もはっきりさせておきます。英検専用の対策教材を使わず、過去問を2回分以内確認しただけで、一次・二次ともに一回の受験で合格基準スコアを上回れる状態のことです。
準1級なら一次1792点、二次512点。1級なら一次2028点、二次602点。
この数字を「何となく」ではなく確実に越えられるかどうかが分かれ目です。
この基準に照らすと、多くの帰国子女がどちらかの条件から外れることに気づくと思います。準1級なら、滞在が通算4年未満の人、8歳以前に帰国した人。1級なら、滞在が3年未満の人、9歳以前に帰国した人。そしてどちらの場合も、TOEFL や IELTS で上記のスコアに届いていない人は、帰国子女であってもこの層には含めません。
合否を分けるのは「母国語を、何で、誰から学んだか」

ただ、ここまでの条件をすべて満たしていても、なお合否が分かれることがあります。
同じ年数を同じ国で過ごし、同じような学校に通った二人の帰国子女が、片方は1級に一発で合格し、もう片方は準1級の英作文で何度も落ちる。私は指導の現場で、こうした例を繰り返し見てきました。
その差を生んでいるのは、滞在年数でも学校の名前でもありません。「母国語を、何で、誰から学んだか」です。
第二言語習得の研究では、母国語で身につけた読解力や論理的な思考力は、第二言語にもそのまま移行するという考え方が広く知られています。逆に言えば、母国語で抽象的な概念を扱う力が育っていない子どもは、英語でもその力は育ちません。
英語で日常会話ができるようになるには2年程度で足りても、教科学習に耐える学術的な言語力が身につくまでには5年から7年かかるとされています。そしてこの学術的な言語力の土台になるのが、母国語でどれだけ深く考え、読み、書いてきたかなのです。
母国語を「誰が」教えたかが、地頭をつくる
ここで決定的に重要なのが、母国語を**「誰が」教えたか**です。
家庭で親が、正しい日本語で、筋道の通った話し方をしてきたか。子どもの「なぜ」に対して、言葉を尽くして説明してきたか。本を読み聞かせ、子ども自身にも読ませ、感想を自分の言葉で言わせてきたか。
日常の会話が「あれ取って」「早くして」で終わる家庭と、「どうしてそう思うの」「それは別の言い方をするとどういうこと」と問いかける家庭とでは、子どもの頭の中に積み上がる言葉の量も質もまったく違います。
これはそのまま、いわゆるIQ、地頭と呼ばれる力に直結します。 実際、子ども向けの代表的な知能検査では、言葉の意味を説明する力や、二つの概念の共通点を言い当てる力が、知能を測る中心的な指標の一つになっています。
言葉は、考えるための道具そのものです。 母国語を正しく、豊かに教えられた子どもは、考える道具を早くからたくさん手にしている。だから英語という二つ目の言語を身につけたとき、その道具を英語でも使いこなせるのです。
英語も「誰から」学んだかで決まる
英語についても同じことが言えます。現地で英語を**「誰から」学んだか。**
授業で教師から論理的な文章の書き方を叩き込まれたのか、それとも休み時間に友達とのやりとりで覚えたスラングが英語力の大半なのか。前者は英検1級のエッセイに直結しますが、後者はいくら流暢でも、試験の場ではほとんど役に立ちません。
つまり、英検にすぐ受かる帰国子女とは、単に「長く海外にいた子ども」ではありません。正しく教えられた母国語で考える力の土台を築き、その上に、正しく教えられた英語を積み上げてきた子どもです。
滞在年数は、その土台の上に建物を建てるための時間にすぎません。土台が弱ければ、何年住んでも建物は高く伸びないのです。
英語で人を動かす力は、母国語の中で育つ
私自身、高校卒業後に米国の大学へ留学し、ネイティブだけのクラスでスピーチコミュニケーションを2年間学び、評価1位をいただきました。その後も英国航空で17年間、毎日英国人の同僚と英語で仕事をしてきました。
そこで痛感したのは、英語で人を納得させられるかどうかは、英語力以前に、自分の頭で筋道を立てて考えられるかどうかで決まるということです。そしてその力は、例外なく母国語の中で育っていました。
帰国子女は「スタート地点が前にある」だけ
帰国子女であることは、間違いなく大きなアドバンテージです。ただし、それはスタート地点が前にあるという意味であって、ゴールテープを切っているという意味ではありません。
まだ日本語で考える力が十分でないなら、英語の前にそこを鍛え直すことが、遠回りに見えて実は最短の道です。自分がこの基準のどこに当てはまり、何が足りないのかを冷静に見極めること。それが合格への唯一の近道です。
お子さんの英語力がどの位置にあるのか、母国語の土台も含めて何を補えば準1級・1級に届くのか、具体的に知りたい方は、マナリンクの講座ページからお気軽にお問い合わせください。 早慶・MARCH・医学部志望の受験生を中心に、オンラインで指導しています。
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