【大学受験】模試の見方と活用法 ~夢を現実に変えるために~

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2025/5/18

5月も半ばになりまして、すでに河合塾の全統共通テスト模試や全統記述模試などをはじめとして、個人であるいは学校で模試を受けてきたという受験生も多いかと思います。模試はどうしても試験結果や判定に目を奪われがちですが、受験生が模試を理解し、活用しきれているかというと、必ずしもそうではないというケースが見られます。こちらの記事では、そうした模試の見方や活用の仕方についてお話してみたいと思います。


【模試の選び方 ~どんな模試を受けたらいいの?~】

高校で先生として勤務していたころから、意外に多かった質問が「どんな模試をうけたらいいの?」という質問です。率直に言って、どんな模試を受けるのもその人次第なので、ご自身が納得のいくものを受ければ良いのですが、模試も無料ではありませんし、学校で受ける予定の模試があったり、レベル感がつかめなかったり、どうせ受けるのであれば事前に情報を得てから受けたいという気持ちもよくわかります。


まず、模試はその形式や目的により、大きく4つの種類に分けられます。


① 全国記述型模試

:主に国公立2次試験や私立の個別模試などに対応した記述型模試

② 全国共通テスト型模試(マーク式模試)

:主に大学入学共通テストなどを想定した全てがマークシート選択型の模試

③ 志望校別模試(いわゆる冠模試やオープン模試)

:大学ごとの出題傾向・形式に合わせた模試

④ 共通テストプレ模試

:11月以降に行われる、1月の大学入学共通テストを想定した対策模試


他にも分け方はあるのですが、大学受験生が使う視点で考えると、概ね上記4つで理解する方がすっきりします。上記4つは全国規模の模試の話で、駿台・河合塾・ベネッセ(進研)・東進など、塾ごとにこれらが用意されています。場合によっては、地方ごとに各地方の主要大学に合わせた模試などもあるかもしれません。

これらのうち、どれを選ぶべきかは、それぞれの志望校に合わせて考えるしかありません。私大の個別試験のみに集中するということであれば、記述模試に集中してもよいかもしれませんし、国公立を目指す人や、私大志望でも共通テスト利用を考えているという人であれば、記述模試と共通テスト型模試の両方を受けた方がよいということもあるかと思います。

私が基本的におすすめするのは、どの模試を受けるにしても、「成績の推移がはっきりとわかる模試を継続して受けた方がよい」ということです。「第1回の記述模試は河合だったけれども、2回目の記述模試は駿台を受けて、なぜか秋には東進のマーク模試を受けた…」ということですと、成績や偏差値が出ても上がっているのか下がっているのか判断がつきません。ですから、どの模試にしても、同じ種類の模試については同じ塾の模試を受けた方がよいと考えています。

また、できればある程度受験者数の多い、規模の大きな模試の方が、出てくる判定などに一定の信頼性がおけます。規模だけで言えば進研模試(ベネッセ)が大きいのですが、いかんせん進研模試は内容がやや簡単であることと、多くの高校生が受験するために、難関校などを志望する人からすると偏差値が高く出すぎてしまう傾向があります。進研模試以外で受験者数がそれなりにいるとなると、駿台と河合塾になります。駿台の模試は問題も難しく、難関校志望の受験生が多く受けることから高い偏差値が出にくいというところがあります。駿台模試を受けて「第一志望を変えようかと思うんです…」と自信を失ってしまうということも少なくありません。そうした意味で、個人的におすすめなのは、母数も確保できて問題の内容や偏差値の出方なども比較的標準的な河合塾の模試をおすすめすることが多いです。


高校3年生や既卒生なら、河合塾の模試で「①第1回~第3回全統記述、②第1回~第3回全統共通テスト、③志望校別模試×2(第1回、第2回)、④全統プレ共通テスト」の組み合わせがまず外れのない定番の組み合わせだと思います。


もちろん、他の模試が気になる場合には時々追加で他塾の模試を受けてもいいと思いますし、偏差値強者であれば駿台模試で無双するというのもアリでしょう。また、河合塾では難しすぎると感じるなら、進研模試の方が偏差値も高めに出て自信につながるかもしれません。その人にあった受け方というものがあると思いますので、それぞれの模試の特徴を考えて組み合わせるのがよいかと思います。ただし、そういう時でも「成績の推移がはっきりとわかるようにした方がよい」ということ自体は変わりません。


【模試の活用 ~模試は学習のための「道具」~】

時々、「模試を受けるのが怖くて」という人がいますが、模試でいい成績が出たとしても何かもらえるわけでもなければ、模試で成績が良くなかったからと言って何か失うわけでもありません。模試はあくまで模試であって、本番の試験とは違うのです。ですから、模試を怖がる必要は全くありません。むしろ、模試の結果だけにこだわってむやみに怖がることで、模試を活用できなくなることの方がよほど怖い。

模試は、受験生の成績を上げるための一つのツールであって、問題集や参考書と同じ位置づけのものです。せっかくお金を払って受けるのですから、徹底的に使い倒してやらないともったいない!では、模試にはどのような「使い方」があるのでしょうか。


① 試験慣れする

:学校の定期考査のように範囲がはっきり示されている試験と違い、模試は非常に広い範囲から出題される、本番の試験を「模した試験」(だから模試なわけですが)です。模試を受けることで、受験票の書き方、マークシートの塗り方、名前の記入、時間配分、自分の書いた答えや思考過程の問題冊子への残し方(特にマーク模試や共通テスト模試で重要)、自己採点など、普段の試験では分からないことを経験することができます。こうしたことの一つ一つを丁寧に行うことで、本番の精神的な安定につながったり、ミスの軽減につながります。


② すぐに復習できる

:模試では、通常はすぐに模範解答が配布されます。(学校などで事前実施の場合などは、すぐに復習できないこともあります。)自分が解いた記憶がまだ新しいうちに、「自分のできなかったところ」、「分からなかったところ」、「あと少しで解けそうと思ったところ」を見直して理解し、できるようにすることが非常に重要です。この「復習をして自分の力に変えていく」ということが模試における最重要事項だといっても過言ではありません。もし、復習をおろそかにしているとしたら、それは模試を受けたことの意味の大部分をドブに捨てていることと同じですし、数週間分の勉強に相当する効果を失っているといっても良いかと思います。


③ 自己採点の精度を確認できる

:特にマーク模試や共通テスト模試については重要です。本番の大学入学共通テストは、すぐに成績は返されず、成績は主に自己採点で算出するしかありません。そして、受験生はその自分で算出した点数をもとに、志望校に出願することになります。(昔の私も含めて、意外とこのあたりを理解していない受験生が多いのですが。)

その際、自分の算出した点数に自信が持てないと「本当に大丈夫だろうか」という不安に苛まれることになります。特に、自分の出した点数が「ボーダーラインぎりぎりらしい」ということになったときに、「足切りラインが〇〇点らしいけど、本当に自分が採点して出した△△点って合ってるんだろうな…?」と不安が残り、自信をもって出願することができないんですね。2月に個別試験や2次試験が残っている中で、こうした悶々とした気持ちを抱えていると、大学入学共通テスト後の学習にも身が入らなくなってしまうかもしれません。こうした諸々の不安を取り除くためにも、自己採点の精度を全体での誤差が±1点~±5点程度におさめておくことが大切です。そのためには、問題冊子に自分の答えた番号をチェックする習慣をつけるなど、模試を活用することが必要なのですね。

また、自己採点の精度を高めることは、記述模試でも有効です。例えば、論述問題を解いたときには、模範解答が示されていても、どうやって加点したらよいのか分からなくなることがあります。自分の採点の仕方で本当に良いのかを、実際に返却された答案と突き合わせて確認してみましょう。こうした作業を通して、論述問題の採点ポイントに対する感覚が養われてくると、受験の直前期に過去問などを自分で進めるときにも、「自分がおさえるべきポイントをおさえて書けているのか、そうでないのか」というおおよその判断を自分自身でつけることができるようになりますので、学習効力の向上と、何より自信につながっていきます。


④ 間違いの原因分析や成績の傾向把握

:模試で間違えた問題や、正解していたけれども悩んだ問題などについては、「分からなかった」、「もう少しでできそうだったができなかった」、「少し理解にあやふやなところがあった」などに分類し、「もう少しでできそう」・「理解が少しあやふや」という問題を中心に徹底して「できる」ように変えていきましょう。そうすることで、模試を受ける前の自分よりも強い自分を作っていくことができます。

また、複数の模試を受ける中で、おおよその自分の立ち位置や傾向をつかんでおくことも大切です。得意箇所・苦手箇所の把握はもちろん、自分が取りうる最大値と最小値の幅をおおよそではあっても知ることができます。そしてそれは、最終的には自信につながっていきます。


(例1)

・9回の模試を受けてとった偏差値が以下の通りだった。

55.6 / 60.1 / 57.3/ 49.8/ 54.4/ 58.7 /55.1/ 56.0 / 62.1

→この場合、「だいたいの平均ラインは50台後半、時には50を割ることもあるけれども60を超える力もあり、後半はやや上り調子」と判断するのが妥当です。これを「私は50を割ってしまうこともあるから、できないんだ。偏差値が60の志望校には到底届かない。」と考えるとしたら、それは模試のデータの読み方を間違えているといってよいでしょう。また「60をとったこともあるから、志望校の偏差値は64だけど余裕っしょ。」というのは、精神衛生上は良いかもしれませんが、少し状況を甘く見ているといってよいかと思います。ただし、受験で最後に強さを発揮するのは、こうしたある意味「図々しい」ともいえる前向きな姿勢です。


(例2)

・3回の共通テスト模試とプレ模試の予想獲得点数が以下の通りだった。(200点満点)

140 / 170 / 165 / 160

→この場合、概ね150点~160点を取る力は十分にあるので、あとはそこから何点伸ばしていけるかを考えるというのが正しいでしょう。共通テストの過去問などを数か年解いておくと、より正確なラインが把握できると思います。こうした現状把握は、大学共通テストや2次試験の合格最低ラインを超えるためには何点必要で、どの科目のどの部分を伸ばせば何点増やしていけるかという戦略をたてる上でも非常に重要です。また、何度も言いますが、多くのデータの裏付けがあれば、その分自信にもつながってきます。


【判定との向き合い方 ~適度な「図々しさ」を持て!~】

模試で受験生が非常に気にするのが志望校の判定です。中には、偏差値以上にこの合格判定を気にする人もいます。ですが、長年受験にかかわってきた私から見れば、この判定はあくまで参考程度で、ほとんどアテにはなりません。A判定が出たからと言って必ず受かるというわけでもありませんし、逆にDやE判定だったから合格できないわけでもありません。そもそも、E判定の基準となっている「合格可能性20%未満」というのも、もしそれが合格可能性10%だとしたら、10人に1人は受かっているわけです。これが30%だとすれば約3人に1人は合格するわけで、それほど分の悪い数字だとは思いません。

実際、ある受験系雑誌が行った調査によると、E判定からの逆転合格を経験した東大・京大・旧帝大の合格者の30%以上が秋以降にD判定やE判定を経験していたそうです。またこれまで指導してきた受験生たちも、多くが判定をものともせずに合格していきました。


では、何が合格への道を切り拓くのかといえば、それは模試を受けた後の意識と行動です。


前述の雑誌の調査では、逆転合格した受験生の多くが、模試後に弱点を徹底分析し、出題傾向に沿った対策に切り替えたことを要因に挙げています。何より大切なことは、「第一志望をあきらめない」ことです。某マンガではありませんが、あきらめたらそこで試合終了です。受験しなければ絶対に合格できませんが、受験すれば数パーセントであったとしても合格への道は残ります。その道を広くするかどうかは自分の努力にかかっているわけです。

ですから、模試の判定は、少々楽観的に過ぎるくらいの「図々しさ」をもって見るのが良いと思います。その上で、もし安全策を取りたいのであれば、第2志望や第3志望のレベルを下げて安全校に幅を持たせればよいのであって、第1志望を下げる必要はありません。それに、人間というものは、100の目標を掲げたとしても、実際に達成できるのは70、80あたりで止まってしまいがちなもの。にもかかわらず、自らその目標のハードルを下げてしまっては、達成できるラインもさらに下がってしまいかねません。高い目標を掲げてそれに向かって邁進することは、結果的に自分の力を想定以上に引き上げることにつながっていきます。そういう意味でも、模試の判定に一喜一憂して第一志望校を動かすというのは、あまり良い選択ではありません。安全を追っているつもりで、かえってよくない状況を生み出しているかもしれません。志望理由が変わったり、他に行きたい大学ができたという前向きな変更であれば別ですが、そうでない限りは、できるだけ自分の目標をあきらめずに追い求めるのがよいでしょう。


【最後に】

模試はあくまでも「合格に近づくための道具」であって、合否を運命づけるものではありません。重要なことは、模試を「どう使うか」です。点数や判定に一喜一憂するのではなく、模試を自己分析と改善の機会ととらえ、「模試を受ける前よりも強い自分」を作るためにどう行動につなげればよいかを探る材料としてとらえるのがよいでしょう。これからの1年、多くの模試を受けられるかと思いますが、それらが皆さんの力に変わっていくことを願っています!

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