【世界を旅した先生が伝えたい!歴史への興味がグッと深まる「旅×学び」のススメ】 vol.22 南米編 その9
ボリビア近代史と先住民運動へ ―― ポトシの「その後」
かつて世界の銀を支配した山、
ポトシ銀山。
この場所は16〜17世紀、
スペイン帝国の財政を支え、
ヨーロッパ経済さえ動かした場所でした。
しかし18世紀末から銀の産出は減少し、
19世紀に入ると、
この地は急速に「世界の中心」から外れていきます。
ここからが、
あまり知られていないボリビアの歴史の本番です。
銀が終わった国に残ったもの
1825年、
ボリビアは独立します。
けれど独立は、
繁栄の始まりではありませんでした。
スペインが去った後も、
社会の構造はほとんど変わらなかったのです。
権力:白人・混血の支配層
労働:先住民
富:鉱山資源に集中
つまり
「植民地は終わったが、社会は植民地のままだった」
ポトシの銀山で働かされていた人々の子孫は、
独立後も農村で重税と労働を負い続けます。
国家はできても、
国民はまだ生まれていませんでした。
銀から錫へ ―― 変わらない構造
19世紀後半、
ボリビアは新たな資源に依存します。
それが「錫」です。
世界の工業化が進む中、
錫は缶詰・機械・兵器に不可欠となり、
ボリビアは再び資源国として注目されます。
しかしここでも同じ構図が続きます。
鉱山主が富を独占し、
労働者は過酷な条件に置かれる。
つまり
資源は変わったが、社会は変わらなかった
この矛盾が、
20世紀に大きな爆発を起こします。
革命 ―― 国家の作り直し
1952年、
ボリビア革命が起こります。
鉱山労働者と農民が蜂起し、
国家の仕組みそのものを変えました。
主な改革は3つ。
普通選挙(先住民にも選挙権)
鉱山の国有化
農地改革
ここで初めて、
先住民は「労働力」ではなく
国民として扱われ始めます。
ポトシの歴史は、
ここでようやく次の段階へ進みました。
それでも残った問題
しかし革命は、
すべてを解決したわけではありません。
都市と農村の格差
白人中心の文化
言語の壁
教育格差
こうした問題は長く続きます。
そして21世紀、
ついに「国家の定義」そのものを問い直す動きが起きます。
先住民の国家へ
2006年、
先住民出身の大統領
エボ・モラレスが誕生します。
これは単なる政権交代ではありません。
国家の主体が初めて変わった瞬間
とも言われます。
スペイン植民地
鉱山国家
軍政
革命国家
その長い歴史の先で、
ようやくこの国は
「誰の国なのか」
を問い始めたのです。
歴史は一つの場所から続いている
ポトシの山は、
ただの遺跡ではありません。
銀の時代の労働
独立後の格差
革命
先住民運動
すべてが、同じ場所から続いています。
歴史とは年号の暗記ではなく、
人の営みの連続です。
旅先の一つの町も、
過去から現在へ静かにつながっています。
そしてその流れは、
次の時代へと続いていきます。
次回は、
資源に恵まれながらも苦しみ続ける
「資源国ボリビアの課題」を見ていきます。