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「補習校で国語やってるから大丈夫」という、最も高くつく思い込み

2026/5/1

海外赴任中の保護者から、毎週のように同じ台詞を聞く。

「うちの子、補習校でちゃんと国語と算数やってますから、そこは大丈夫かなと思って」

僕はその瞬間、内心でため息をつく。大丈夫ではない。むしろ、「補習校をやっている」という事実が、致命的な対策の遅れを生む原因になっているケースの方が多い。

これは帰国子女受験における、最も静かで、最も高くつく思い込みだ。

補習校が何をする場所か、正確に理解しているか

まず前提を整理しよう。

補習校(日本人学校の補習校)の設置目的は、帰国後に日本の公立学校へ円滑に戻れるための「最低限の学力維持」だ。文部科学省の指針に沿ったカリキュラムで、公立小学校相当の内容を週1〜2回のペースで扱う。

つまり、補習校が目指しているゴールは「帰国後、普通の公立小学校でついていけること」だ。

中学受験のゴールとは、根本的に違う。

補習校の算数は四則演算と基本的な図形。受験算数は特殊算(旅人算、仕事算、植木算など)、比と割合、立体図形、場合の数、そして難関校になれば整数論的な思考問題まで含む。補習校の国語は漢字の読み書きと基礎的な読解。受験国語は800字〜1200字の文章に対する記述式解答、語彙・慣用句・文脈把握、そして書き手の意図を論理的に抽出する訓練だ。

同じ「国語」「算数」という名前がついているだけで、求められているものはまったく別競技だ。

「やっていない子」より危ない理由

補習校を一切やっていない子と、補習校だけをやっている子。帰国受験という文脈で見たとき、どちらが危ないか。

答えは後者だ。

補習校をやっていない家庭は、「うちはゼロからやらなければいけない」という危機感を持っている。だから早い段階で受験専門塾を探し、追加の家庭教師を手配し、現地で入手できる受験教材を取り寄せる。焦りが、正しい行動を促す。

一方、補習校をやっている家庭は、「やっている」という安心感を持っている。その安心感が、動くべきタイミングを遅らせる。帰国の半年前、1年前に気づくべき準備の遅れを、帰国直前まで見えなくさせる。

補習校は「やらないよりはいい」。これは正しい。ただし、それ以上でも以下でもない。補習校を受験対策の一部として計算式に入れた瞬間に、戦略は狂い始める。

帰国受験の国語で何が問われているか

ここで少し具体的な話をしよう。

帰国受験の国語、特に中堅〜難関校が求めているのは「日本語で読んで、日本語で論理的に書く力」だ。海外生活が長い子どもが最も苦手とする領域がここにある。

現地校やインターに通いながら補習校で週1回国語をやっている子の多くは、日常会話レベルの日本語は保てている。しかし入試で出てくる論説文・物語文の読解は、日常会話とはまったく別の回路を使う。

たとえば「筆者がこの表現を使った意図を、本文中の言葉を使って説明しなさい」という問いに答えるには、文章全体の構造を把握し、筆者の論理の流れを追い、適切な言葉を選んで文章として組み立てる力が必要だ。これは週1回の補習校の音読と漢字練習で身につくものではない。

算数はさらに顕著だ。補習校で習う「わり算の筆算」と、受験算数で出てくる「つるかめ算」「差集め算」の間には、概念的な断絶がある。補習校で算数をやっていても、特殊算にまったく触れていない子は、受験算数の基礎から積み上げ直す必要がある。帰国後に通塾を始めてから気づく、というパターンが最も時間を無駄にする。

では、いつ、何をすべきか

帰国受験を本気で狙うなら、補習校の位置づけを冷静に定義し直すことが第一歩だ。

補習校は「帰国後に日本の学校生活でゼロから始めなくて済むための保険」だ。それ以上の機能はない。受験対策としてカウントしてはいけない。

その上で、受験対策として何が必要かを考える。

国語については、海外にいる間から論説文・物語文の読解練習を始めることが理想だ。日本から教材を取り寄せ、オンラインで添削指導を受ける形が現実的な選択肢になる。漢字は補習校で補えるが、読解と記述は補習校では補えない。

算数については、特殊算の体系的な学習が不可欠だ。これは独学では難しい。単元の順序と接続に理解がある指導者のもとで、体系的に積み上げていく必要がある。現地でそれができる環境がないなら、オンライン指導が現実的な解だ。

帰国のタイミングが受験の1年前なら、まだ間に合う。ただし、帰国後すぐに動くことが条件だ。帰国後の学校生活に慣れる時間を「受験準備の猶予」と勘違いしている家庭が、最終的に志望校を大幅に下げることになる。

「補習校で大丈夫」と言った保護者へ

最後に、率直に言う。

補習校をきちんと続けてきたこと自体は、素晴らしい判断だ。海外にいながら日本語・日本の学習習慣を維持しようとした姿勢は正しい。

ただ、その「正しい努力」を「受験の武器」と混同した瞬間に、戦略は崩れる。補習校は守備固めだ。受験という攻撃のための準備は、別途やらなければならない。

帰国後に「うちの子、補習校ちゃんとやってたのに、なんで算数こんなにできないの」と首をかしげる保護者を、僕は毎年見る。補習校をサボっていたのではない。ただ、補習校が何をする場所かを正確に理解していなかっただけだ。

今の段階で気づいたなら、動ける。まず「補習校で何が補えて、何が補えないか」を紙に書き出すことから始めてみてほしい。それだけで、やるべきことの輪郭が相当はっきりするはずだ。

帰国受験の算数・国語の対策を、現在地から組み立て直したい方は、マナリンクのヒロユキ講師ページからご相談ください。「何から始めればいいかわからない」という状態からでも、現状を整理した上で優先順位を一緒に考えます。

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