中学受験 算数 図の描き方|道具は4つでいい〈算数の設計図④〉
中学受験の算数には、たくさんの図の描き方が出てきます。線分図、面積図、ダイヤグラム、天秤図、ベン図、樹形図、正面図。全部を使いこなそうとして混乱しているお子さんを、僕は何人も見てきました。持たせる道具は、4つで足ります。
このシリーズでは、算数をひらめきに任せません。経営工学を学んだ講師が、解法を設計の問題として扱ったらどうなるか。その記録です。
道具が多いほど、迷います
まず前提を確認します。技法が多いこと自体は悪くありません。問題は、本番で選べないことです。
試験中、お子さんの頭の中では、問題を読む、条件を整理する、方針を立てる、計算するという作業が同時に走っています。そこに、どの図を使うかという判断まで加えたら、処理が破綻します。
持っている道具が多いほど強い、というのは大人の発想です。子どもにとっては、道具が多いほど迷います。だから僕は絞ります。
1つ目、線分図
和と差を扱うときの基本です。誰かが誰かより何個多い、合わせて何個になる。こうした関係を、長さの比較として目に見える形にします。
低学年から使い始めて、6年生の最後まで使い続けます。最も出番が多い道具です。逆に言えば、線分図が雑な子は、算数全体が崩れます。
2つ目、面積図
2つの量のかけ算で表せるものを扱います。つるかめ算、平均、濃度、仕事算。縦と横をかけて面積が答えになる、という構造が共通しています。
この図の強みは、方程式を使わずに未知数を処理できることです。中学生が文字式でやることを、小学生は図でやる。むしろ視覚的に分かりやすい場面も多い。
3つ目、ダイヤグラム
時間と距離、あるいは時間と量の変化を扱います。旅人算、通過算、水そうの水位変化。横軸に時間を取って、変化を線で表します。
線分図が苦手とする「時間の経過」を、ダイヤグラムは得意とします。両者は補完関係にあるので、速さの問題ではどちらを使うかの判断が要ります。ここは慣れです。
4つ目、表
地味ですが、実は最も汎用性があります。場合の数、規則性、条件整理、周期。書き出して並べれば見えてくるものは、算数に驚くほど多い。
頭のいい子ほど、書き出しを面倒がって暗算で処理しようとします。そして間違えます。表は、書けば必ず正解に近づく道具です。
4つで、どこまで戦えるか
この4つで、中学受験算数の大半は処理できます。
もちろん例外はあります。立体切断には専用の作法が要りますし、天秤図が有効な場面もあります。ですが、それらは4つの土台ができてから足せばいい。土台がないまま数だけ増やしても、どれも中途半端になります。
使い慣れた4つの道具のほうが、うろ覚えの20個より確実に機能します。
大事なのは、数ではなく精度です
ここが本題かもしれません。4つに絞る目的は、覚える量を減らすことではなく、1つあたりの精度を上げることです。
線分図なら、同じ長さには同じ印をつける。分かっている数は実線、分からない数は点線で書く。比の数字は丸で囲む。実際の数量と区別する。
面積図なら、縦と横が何を表しているかを必ず書き込む。単位を省略しない。
こうした作法が身についていない子の図は、描いた本人が後で読めません。図を描く目的は、頭の中の情報を紙に逃がして楽になることです。読めない図を描いても、負荷は下がりません。
明日から親がすべき、非情な決断
お子さんのノートを開いて、図が描いてあるか見てください。
描いていなければ、まず線分図から始めてください。新しい技法を教える必要はありません。すでに習ったはずの線分図を、正確に描かせるだけで変わります。
そして、描いてある図が読めるかどうかを確認してください。何を表しているか分からない線が並んでいるなら、それは図を描いたのではなく、線を引いただけです。
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