旅人算 教え方|和と差だけ先に叩き込む〈算数の設計図⑨〉
旅人算は難しい、とよく言われます。ですが、教える順番を間違えなければ、そこまで複雑な単元ではありません。今回は、僕が実際にやっている旅人算の教え方を書きます。
このシリーズでは、算数をひらめきに任せません。経営工学を学んだ講師が、解法を設計の問題として扱ったらどうなるか。その記録です。
まず、和と差だけを叩き込む
旅人算には、出会い算と追いかけ算の2種類があります。最初にやるのは、この2つに対応するキーワードを覚え込ませることです。
出会い算のキーワードは、和。速さの和と、距離の和を使います。
追いかけ算のキーワードは、差。速さの差と、距離の差を使います。
これだけです。ここは理屈から入りません。そういうものだ、と先に入れてしまいます。理屈を理解してから使えるようになるのではなく、使えるようになってから理屈が分かる。子どもの学習はこの順序で進みます。
追いかけ算は、遅い方を止めて考える
出会い算は、イメージしやすい単元です。2人が向かい合って進み、間の距離が縮まって出会う。頭の中で絵が描けます。
問題は追いかけ算です。同じ方向に2人が進み、後ろの人が前の人に追いつく。この状況は、動くものが2つあるせいで、頭の中で像を結びにくい。
そこで僕はこう教えます。遅い方を、止めてしまいなさい。
遅い人がその場に立ち止まっていると考えると、速い人だけが動く1人の問題になります。そして速い人が進むべき距離が、最初にあった2人の距離の差です。動くものが1つになった瞬間、追いかけ算は急に簡単になります。
もちろん厳密には、速さの差の分だけ縮まっているという話です。ですが、その説明は後回しにします。
相対速度は、まだ教えません
旅人算の正体は、相対速度です。片方を静止させて、もう片方の速度を差で考える。物理でいうところの、観測者を動かす発想です。
ですが、これを最初に説明したら、子どもは間違いなく混乱します。抽象度が高すぎるからです。
だから僕は、この言葉を最初に出しません。和と差の型で問題が十分に解けるようになってから、実はこういう仕組みだったんだよ、と後から伝えます。
順序が逆になると、理解できないまま公式だけが残ります。使えるようになってから、なぜそうなるのかを知る。この順番を守ってください。
線分図も、型から入る
旅人算では線分図を描かせますが、ここにも順序があります。
図を描きなさい、と言うだけでは描けません。何を描けばいいか分からないからです。だから僕は、まず型を見せます。
このパターンなら、この形の線分図。別のパターンなら、この形。出会い算なら2人が向かい合う図、追いかけ算なら同じ向きに並ぶ図、途中で折り返す問題なら往復の図。型をいくつか教えると、子どもはそれを土台にして、自分でアレンジし始めます。
白紙から創造させるのではなく、見本を渡してから変形させる。この方が確実に速いのです。
旅人算は、入試で頻出です
この単元に時間をかける価値がある理由は、単純です。入試でよく出るからです。
速さの分野の中でも、旅人算は出題頻度が高い。しかも、状況設定を変えるだけで無限に問題が作れるため、学校側にとって使いやすい題材でもあります。ダイヤグラムと組み合わせた形、比と組み合わせた形、水そうや通過算に発展した形。土台が同じなので、旅人算が固まっていれば応用が利きます。
逆に、ここが曖昧なまま6年生になると、速さの単元全体で失点し続けることになります。
明日から親がすべき、非情な決断
お子さんに、旅人算の仕組みを説明するのをやめてください。
かわりに、出会い算は和、追いかけ算は差。この2つを、言えるようになるまで確認してください。理屈は要りません。まず言えること、そして使えることです。
理解は、後からついてきます。
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