サピックス場合の数がわからない子が捨てるべき「自分のやり方」
サピックスの場合の数がわからない、と訴えるお子さんの多くは、解法を知らないわけではありません。知っている型が1つしかないのに、それをすべての問題に当てはめようとして、時間だけが溶けています。
そして厄介なことに、本人はそれを「自分のやり方」と呼びます。
サピックスの場合の数は、知識量ではなく道具の選択で差がつく
場合の数という単元は、覚えるべき知識の総量がそれほど多くありません。にもかかわらず、マンスリーや組分けテストでは、ここで大きな差がつきます。
理由は単純で、解き方が複数あるからです。全部書き出す、樹形図を描く、計算で処理する、図に数を書き込む。どれも間違いではありません。ただし、制限時間の中で終わる道具は、問題ごとに1つか2つしかありません。デイリーサポートで一度解いた問題が、テストでは条件を1つだけずらして出てくる。そのとき、前回と同じ道具を反射的に持ち出した子から順に、手が止まります。
偏差値40台から50台で足踏みしているお子さんを見ていると、詰まりの正体は計算力ではなく、この道具選びの放棄であることがほとんどです。選んでいないのに、本人は選んだつもりでいる。持っている道具が1本しかないのですから、それは選択ではありません。
未熟なうちに持つ「自分のやり方」は、こだわりではなく固執です
カンフー映画の弟子を想像してください。入門して数か月の弟子が、達人の師匠に向かって「いや、俺のワザはこうなんで」と言い出したとします。滑稽ですよね。技の在庫が3つしかない人間に、技を選ぶ資格はまだありません。
中学受験の算数でも、まったく同じことが起きています。手持ちが少ないうちのこだわりは、個性ではなく、単に選択肢がないことの言い換えです。
逆に言えば、他人のやり方をためらいなく飲み込める子は賢い。真似は敗北ではなく、最短の輸入です。成績を短期間で動かす子は、例外なくこの吸収が速い。プライドが薄いのではなく、プライドを置く場所を間違えていないだけです。
立方体の最短経路で起きた、典型的な事故
先日、ある6年生(Aさんとします)と、立方体の頂点を通る最短経路の問題を解いていました。Aさんは手を止めて、展開図を使ってはいけないのか、と聞いてきました。
展開図は正しい知識です。平面に開いて考える発想そのものは、立体図形では有効な武器になります。ただ、この問題では立体のまま数えたほうが速い。立方体の各頂点には3つの方向から経路が合流するので、展開図に置き換えた瞬間に、数え落としが発生します。
実際にやったことは、頂点に1を書いて、あとは足していくだけです。数十秒で終わりました。Aさんは知識が足りなかったのではなく、手持ちの1本を、合わない場所で振り回していた。これが、場合の数で最も多い失点の形です。
同じ日、等差数列でも同じことが起きました。N番目の数を求める公式を思い出さないまま、自分の感覚で式を組み立てようとして、手が止まる。公式を見に行けばすぐに済む場面です。自己流は、記憶の代用にはなりません。
サピックスの場合の数で、まず借りるべき型
こだわりを捨てさせる代わりに、輸入すべき型を渡してください。場合の数なら、当面はこの3つで足ります。
・最短経路は、図の交差点に数を書き込んで足す。これ一択です。通れない地点がある条件でも、頭の中で消そうとせず、その点を抜いた図を書き直してから数を振る。この手順を守るだけで、60通り、86通り、102通りといった答えが、考え込むことなく機械的に出てきます。
・かけるか足すかは、「同時に起きるか」で判定する。サイコロを2回振って目の和が4になるのは3通り、和が10になるのは3通り。この2つは同時には起きないので、足して6通り。一方、色を選ぶ作業のように続けて起きるものは、かける。迷ったらこの一言に戻る。
・塗り分けは、どこを同じ色にするかを先に決める。5色から2色で塗り分けるなら、同じ色になる場所を特定してから数え始める。ここを飛ばして数え上げに突入した子は、まず合いません。
この3つは、僕が発明したものではありません。上位クラスの子が当たり前に使っている型を、そのまま渡しているだけです。オリジナリティは、合格したあとで十分に発揮できます。
明日から親がすべき、少し非情な決断
家庭でできることは、実はかなり単純です。
・丸つけのとき、「どう解いたの」ではなく「誰のやり方で解いたの」と聞く。授業で習った手順なのか、自己流なのかを、本人に自覚させる。
・宿題の量より先に、授業ノートの再現を優先させる。先生が黒板でやった手順を、そのままなぞらせる。ここを削って演習量を増やすのは、型のない素振りを増やすのと同じです。
そして、もう一つ。お子さんが「自分のやり方のほうがやりやすい」と言ったとき、その言葉を尊重しないでください。やりやすさと、点になることは別の話です。今こだわるべきは、やり方ではなく、順位のほうです。
もちろん、自分のやり方を育てる時期はいずれ来ます。技の在庫が増え、問題を見た瞬間に道具を選べるようになったときです。それまでは、盗めるものを黙って盗んだ子が勝ちます。良質な養分であり続けるか、来月のマンスリーで型を使い倒す側に回るか。決めるのは、たぶん今週です。
場合の数は、知識の量ではなく道具の選び方で点が動く単元です。自己流を一度手放せるかどうかが、そのまま得点差になります。
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