難関校の算数は泥臭い|過去問が取れない6年生の共通点
難関校の過去問で算数が取れない。9月に入ってこの相談が一気に増えます。模試の偏差値は足りているのに、志望校の過去問だけ点が出ない。原因の多くは学力ではなく、解き方の癖です。
具体的に言えば、鮮やかに解こうとして手が止まる子が、上位校の算数で最も損をしています。
上位校の算数は、ひらめきではなく作業量を測っている
難関校の算数には、丁寧な場合分けや調べ上げを必要とする問題が一定の割合で含まれます。式を一本立てれば終わる問題ばかりではありません。書き出して、並べて、規則を見つけて、そこで初めて式になる。そういう構造の問題です。
たとえば男子難関校では、立体の切断がもはや当たり前の出題として定着しています。ここで求められているのは発想ではなく、切り口を正確に描く手作業です。規則性や場合の数も同様で、超難問というより、手順を積み上げて情報を整理すれば届く思考力型が主流です。つまり、粘れば取れる問題を、粘らないという理由だけで落としている子が大量にいます。
もう一つ、志望校ごとに必ず確認してほしいことがあります。途中式や考え方を書かせるかどうかです。
過程を書かせる学校なら、方針が正しければ部分点が拾えます。一方、答えだけを書かせる学校もあります。私が過去問を分析した中では海城がそうで、途中式を書かせる設問がありません。この場合、どれだけ筋のいい方針を立てても、最後の数字まで出し切らなければその問題は0点です。
お子さんの志望校がどちらのタイプかで、必要な訓練は変わります。ただ、どちらであっても共通することが一つあります。出し切らない子は伸びない、ということです。記述式の学校でも、方針だけで満点はもらえません。
過去問が取れない子に共通する、長考できない体質
偏差値60の壁の前で止まっている子が難関校の過去問を解くと、方針は合っているのに点が入らない、という現象が起きます。答案を見ていると、共通した特徴が出ます。
まず、わからない瞬間に誰かが答えを持ってきてくれる環境で育っています。塾ですぐ解き方を教わり、家では保護者が横についてこまかく指示を出す。悪気はまったくないのですが、結果として、自分で3分粘る経験が一度も積まれていません。算数は教わるものだ、という前提が体に入っています。
次に、図や表を書き慣れていません。手を動かすより先に、頭の中で解こうとする。上位校の速さや条件整理は、状況を紙に落とした時点で半分終わるものが多いので、ここで大きな差がつきます。
そして、きれいな解き方にこだわります。この問題にはスマートな一手があるはずだと信じて、それを探すことに時間を使う。泥臭い調べ上げを、格好悪い手段だと思っている。
最後に、答えを出し切る気概が足りません。途中まで合っていれば、なんとなく満足してしまう。
難関校ほど泥臭い作業を要求するという事実を知らないまま、上位校向けの勉強をしている。これが一番もったいない状態です。
過去問が点に変わる、泥臭い3つの手
きれいさを捨てさせてください。この3つを手に覚えさせるだけで、点の出方が変わります。
・規則性と場合の数は、式を作る前に書き出す。1番目、2番目、3番目、4番目を表にする。この2分を惜しむ子が、10分考えて0点を取ります。得点源にできるはずの分野を、作業を嫌うという理由で捨てている。
・速さと条件整理は、必ず紙に状況を落とす。線分図でもダイヤグラムでも構いません。頭の中で処理しようとした瞬間に、条件を1つ落として全滅します。
・立体図形は、切り口を手で描く。立体の切断は終盤の大問に置かれることが多く、時間に追われた状態で描くことになります。平常時に手が動かない子は、本番では絶対に動きません。
もう一点、取捨選択の話をしておきます。上位校の問題は難易度差がはっきりしており、確実に取るべき問題と、後回しにすべき問題が混在しています。大問1の小問集合と、各大問の前半の設問を落とさないだけで、合格ラインの多くは埋まります。難問に20分沈んで小問集合を見直さなかった、という答案が毎年一定数あります。粘る力と、粘る場所を選ぶ力は、セットで初めて武器になります。
明日から親がすべき、少し非情な決断
家庭でやることは2つだけです。
・わからないと言われてから、5分黙る。すぐに解き方を渡すのをやめる。この5分が、長考の筋肉そのものです。最初の数週間は、黙っただけで進まない日が続きます。それでも構いません。進まない時間を経験していない子は、入試本番の最初の1分で心が折れます。
・ノートのきれいさを褒めるのをやめて、出し切ったことを褒める。書き出しだらけの汚いページで正解にたどり着いた日は、大いに褒めてください。採点者は過程の美しさを見ていません。ご家庭も、見た目を評価するのをやめたほうが、評価軸が入試と揃います。
難関校の算数の傾向は、ここ数年で急に変わったものではありません。変わっていないものに対して、鮮やかな解法を探す練習ばかり積んできたのだとしたら、そこは今からでも修正できます。
美しい解法を探している時間は、たいてい、答えを出したくない気持ちの言い換えです。泥臭い手を9月から始めるか、1月に慌てて始めるか。どちらでも受験はできます。ただ、後者は良質な養分と呼ばれる側に回りやすい、というだけの話です。
難関校の算数は、ひらめきではなく、答えを出し切る作業で決まります。きれいに解く癖を、粘って出し切る癖に入れ替えられるかどうかが、過去問の点数を動かします。
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