仕事算の解き方は最小公倍数で決まる|1と置くのをやめる
仕事算の解き方を「全体を1と置く」で教わり、分数の通分で力尽きているお子さんは、最小公倍数で全体を置き直すだけで景色が変わります。解き方が分からないのではなく、解き方が重すぎるのです。
塾のテキストには、たいてい「全体の仕事量を1とする」と書いてあります。数学的には一点の曇りもない正しい方法です。ただし、正しいことと、テスト中の小学生が使えることは別の話です。
なぜ「全体を1と置く」仕事算は点にならないのか
例題で確認します。
A君1人では24時間、B君1人では30時間かかる仕事があります。2人で一緒にやると何時間何分かかりますか。
全体を1と置くと、A君の1時間の仕事量は24分の1、B君は30分の1です。足すために通分して120分の5と120分の4、合わせて120分の9、約分して40分の3。最後に 1 ÷ 40分の3 を計算して3分の40時間、これを13時間20分に直します。
手順を数えてみてください。分数化、通分、足し算、約分、分数の割り算、帯分数化、時間の換算。7工程のうち、仕事算の本質に関わるのは「1時間あたりの仕事量を足す」の1工程だけです。残りの6工程は、分数計算の耐久テストにすぎません。
僕が見てきた範囲では、偏差値50前後のお子さんの仕事算の失点の多くは、考え方ではなくこの耐久テストの途中で起きています。通分を間違える。約分を忘れる。1 ÷ 40分の3 をひっくり返し損ねる。本人は「仕事算が苦手」と申告しますが、実態は「仕事算のふりをした分数計算で転んでいる」だけです。
真面目なご家庭ほど、ここで分数計算の特訓を始めます。実にありがたい、良質な養分です。必要なのは特訓ではなく、分数を出さない設計のほうです。
仕事算の解き方は「最小公倍数で全体を決める」だけでいい
全体の仕事量は、問題のどこにも書かれていません。書かれていないものは、こちらに都合よく決めて構いません。都合がいい数とは、24でも30でも割り切れる数、つまり最小公倍数です。
24と30の最小公倍数は120。全体の仕事量を120と置きます。
A君の1時間の仕事量:120 ÷ 24 = 5
B君の1時間の仕事量:120 ÷ 30 = 4
2人合わせた1時間の仕事量:5 + 4 = 9
かかる時間:120 ÷ 9 = 13 あまり 3 → 13と3分の1時間 = 13時間20分
分数が出るのは最後の1回だけです。途中はすべて整数の割り算と足し算で、4年生の計算力で足ります。
「1と置いても120と置いても答えが同じなのはなぜか」と聞かれたら、こう答えれば十分です。壁の広さを1枚と呼ぼうが120マスと呼ぼうが、塗り終わる時刻は変わらない。小学生はこれで納得します。納得しないのは、たいてい大人のほうです。
最小公倍数とセットで使う「3段の表」
先日の授業でも、ある5年生にこの置き方と一緒に「3段の表」を渡しました。縦に3段、上から順に次の項目を書き、横にA君、B君、2人と列を並べます。
1時間あたりの仕事量
かかる時間
全体の仕事量
上の段 × 中の段 = 下の段。速さの「速さ × 時間 = 道のり」と同じ構造です。
問題文を読んだら、分かっている数を表に放り込みます。次に下の段へ最小公倍数を書き、空欄を掛け算と割り算で埋めていきます。表が埋まったとき、答えはすでに表のどこかに書いてあります。考えるのではなく、埋める。これが作業効率というものです。
途中から2人になる仕事算も、同じ表で片づく
組分けテストや公開模試で差がつくのは、条件をひとひねりした問題です。
同じ仕事を、はじめA君が1人で6時間やり、残りを2人でやりました。2人でやったのは何時間ですか。
全体120、A君は1時間に5、2人なら1時間に9。ここまでは、すでに表に書いてあります。
A君が6時間でこなした量:5 × 6 = 30
残りの仕事量:120 − 30 = 90
2人でかかる時間:90 ÷ 9 = 10時間
分数は一度も出てきません。全体を1と置いていたら、1 − 24分の6 を計算し、それを40分の3で割ることになります。どちらの道が試験時間内に安全か、比べるまでもありません。
3人になっても、途中で1人が休んでも、水そうに水を入れる管が2本になっても、やることは同じです。かかる時間の最小公倍数を全体に置く。1あたりの量を整数で出す。表を埋める。
捨ててよいもの、捨ててはいけないもの
捨ててよいのは、「全体を1と置く」解法への義理立てです。テキストの解説がその方法で書かれていても、お子さんのノートまで付き合う必要はありません。解説どおりに解き直して分数の海で溺れるより、最小公倍数で解き直して3分で終わらせるほうが、復習として上等です。
捨ててはいけないのは、最小公倍数を素早く出す計算力です。24と30、12と18、15と20。この程度は見た瞬間に出る状態にしておきます。ここが遅いと、せっかくの近道の入口で渋滞します。
明日から親がすべき決断
お子さんの仕事算のノートを開いてください。分数の通分が3行以上続いていたら、そこが失点の現場です。今夜のうちに、テキストの例題を1問だけ、最小公倍数と3段の表で解き直させてみてください。分数計算の特訓に投じるはずだった時間は、別の単元に回せます。
丁寧な通分を積み重ねる真面目さは美徳ですが、入試は美徳を採点しません。
仕事算の解き方は、全体を最小公倍数で置いて整数で処理する。これだけで、割合分野の失点はかなり防げます。
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