帰国子女の中学受験、算数の偏差値を上げても受からない理由
帰国子女の中学受験で、算数の偏差値は60を超えているのに、合格可能性の表示がいっこうに上がらない。そんなご家庭は、たいてい正しい努力を、間違った科目に投じています。算数をもう一段伸ばす前に、見るべき紙が一枚あります。志望校の募集要項、その配点の欄です。
帰国生入試は一般入試の縮小版ではない
帰国枠だから科目が軽い、という思い込みは、この入試でいちばん高くつきます。
海城中学校の帰国生入試を例にします。2025年度の入試概要では、A方式が国語・算数・面接、B方式が国語・算数・英語・面接でした。配点はA方式が国語120点・算数120点。B方式が算数120点・国語60点・英語60点。国語と算数はA方式とB方式で同一問題です。
ここで起きていることを、点数の言葉に翻訳します。B方式では、国語の1点はA方式の半分の重みしかありません。裏を返せば、算数の1点の重みはA方式の倍になる。つまり算数が得意な受験生にとって、方式の選択そのものが最初の得点戦略です。にもかかわらず、この一枚を見ずに「うちは現地校だからB方式で」と決めているご家庭が、驚くほど多い。
慶應義塾湘南藤沢中等部はさらに容赦がありません。帰国生も一般生と同じ枠組みで、国語45分・英語60分・算数45分の3科か、国語・社会・理科・算数の4科かを出願時に選ぶ方式です。そして国語と算数は、一般入試とまったく同じ問題です。帰国枠だから日本語は手加減してもらえる、という前提は、ここでは成立しません。
算数の1点と、国語の1点は単価が違う
偏差値65の算数を68に上げる。これは可能です。ただし、必要な演習量は膨大で、本番での上ぶれもせいぜい数点でしょう。
一方、偏差値47の国語を53に乗せる。こちらは、解く順番と選択肢の処理を変えるだけで動くことがあります。僕の実感として、国語が47前後で止まっている受験生の多くは、読解力が足りないのではなく、単純に時間が足りていない。模試で記述が空白なのは、書けなかったからではなく、そこまでたどり着かなかったからです。
同じ一点を取りに行くのに、必要なコストが違う。それだけの話です。算数の偏差値を上げることに家庭の時間の大半を投じているご家庭は、この単価の差を計算していません。塾にとっては、得意科目を伸ばす提案のほうが喜ばれますから、誰も止めてくれません。じつに良質な養分です。
英語の宿題が、算数と国語の時間を静かに食っている
現地校やインターに通うお子さんの場合、英語の課題量は日本の塾の比ではありません。夏のあいだ英語に全力を注ぎ、9月の模試で日本語を読む速さが落ちている。これは珍しいことではなく、むしろ自然な現象です。
ここで英語の量を削る判断は、僕はおすすめしません。英語は帰国生入試における最大の資産で、しかも一度落ちると戻すのに時間がかかります。維持でいい。削るべきは、算数の「もう解ける問題」の反復です。
算数側で今すぐ変えるべきことは、3つだけ
一つ目。過去問の開始を前倒しにすること。帰国生入試は1月上旬に実施される学校が多く、一般入試より1か月早く本番が来ます。カレンダー上の9月は、一般受験生の10月に相当します。基礎が固まっている子であれば、算数の過去問は今週から始めて構いません。
二つ目。単元別の演習から、時間を計った大問単位の演習に切り替えること。算数60分、あるいは45分という制限の中で、どの大問から手をつけ、どこで見切るか。この判断は、単元プリントでは一生身につきません。
三つ目。捨て問の線引きを先に決めること。合格最低点を超えるのが目的であって、満点を取るのが目的ではありません。大問4以降の(3)に15分溶かして、大問2の計算ミスを見直せずに終わる。これが、算数の偏差値が高い子の典型的な落ち方です。
明日、決めていただきたい非情なこと
まず、志望校の募集要項を開いて、配点を紙に書き出してください。方式が複数あるなら、お子さんの現在の偏差値をそれぞれの配点に当てはめて、合計点を計算する。感情ではなく、点数で方式を選びます。
次に、得意科目の練習を減らす決断をしてください。算数が得意なお子さんほど、算数の勉強は楽しく、そして親も安心します。その安心のために、いちばん伸びしろのある科目が放置されます。
帰国子女の中学受験において、算数の偏差値は武器です。ただし、武器は配点という土俵の上でしか機能しません。土俵を確認しないまま素振りを続けるのは、趣味と呼びます。
配点から逆算した算数の設計と、1月入試に間に合う過去問の順番づくりは、マナリンクのプロフィールにある「【帰国生入試】算数専門|渋渋・広尾・SFC・洗足対策」で承っています。海外在住のご家庭とも時差を調整して指導しています。
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帰国子女におすすめの指導コース
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