過去問の算数が取れない6年生へ|満点狙いの家庭ほど落ちる

過去問の算数が取れない。9月から過去問に入った6年生のご家庭で、いま一番多い相談がこれです。赤ペンで埋まった答案を前に「このままで大丈夫でしょうか」と聞かれるたびに、僕は同じ質問を返します。その答案、何点で合格なのかご存じですか、と。
過去問の算数が取れないのは、満点を基準にしているから
中学受験の算数は、満点を取る競技ではありません。合格最低点を1点でも上回る競技です。学校や年度で幅はありますが、多くの学校の合格最低点は、4教科合計で6〜7割前後に落ち着きます。算数だけで見ても、難関校なら5割台、中堅校でも6〜7割取れていれば十分に戦える、というケースは珍しくありません。
つまり、10問中7問できた答案は「3問も落とした答案」ではありません。「合格ラインに乗った答案」です。
ところが面談でよく聞くのは、こんな声です。7問はできたけれど、残り3問がまったくわからなかった。だからこの単元を最初からやり直させたい。
気持ちはわかります。ただ、これは戦略としては最悪手に近い。
3割を追いかける家庭が、7割を落とす構造
理由は単純で、時間が有限だからです。6年の秋以降は、塾の授業、塾の宿題、志望校の過去問、そして模試で、手元の時間はすでに埋まっています。そこに「できなかった3割をすべて潰す」作業を足すと、何かが削られます。削られるのはたいてい、本来取れるはずの7割の精度です。
ゲーム理論で言えば、期待値の低い手に資源を集中させている状態です。本番で正答率が低い問題は、受験生の大半も解けません。取っても差はつかず、落としても差はつかない。差がつくのは、合格者の多くが取ってくる標準問題を、あなたの子が取りこぼすかどうか。この一点だけです。
さらに厄介なのは、親の不安が子に伝わることです。採点しながら親がため息をつき、解き直しの量が日に日に増えていく。子どもはそれを敏感に感じ取り、自分は算数が苦手なのだと結論づけます。僕はこれまで千人を超える生徒を見てきましたが、算数が苦手な生徒には一人も会ったことがありません。会ったのは、苦手だと思い込まされた生徒だけです。
過去問の解き直しは3つに仕分ける
では、取れなかった問題をどう扱うか。僕が指導で使っているのは、解き直しの前に問題を3つに仕分ける方法です。
A:解説を読めば5分で理解でき、次は取れそうな問題 → 必ず解き直す
B:理解はできるが、再現には練習が要る問題 → 類題を1〜2問だけ解く
C:解説を読んでも腑に落ちない問題 → いったん保留。印をつけて放置する
大事なのはCの扱いです。Cは、今の段階では捨てていい問題です。本番で出ても、合格者の多くが落とす問題である可能性が高い。そこに1時間を溶かすくらいなら、Aを3問確実にしたほうが得点に直結します。
Cは捨てたまま終わりではありません。1〜2か月後、同じ単元が別の過去問や模試で出たときに、驚くほどあっさり解けることがあります。理解は一直線には進みません。寝かせたほうが伸びる問題は、確実に存在します。
今の6割は、受験前日に9割になっていればいい
僕が保護者の方によく言うのは、受験は今日の答案ではなく、受験前日の完成度で決まるということです。
たとえば、今日解いた過去問で速さの問題が6割しか取れなかったとします。これを今週中に10割にしようとすると、親子ともに消耗します。でも、復習を2〜3回挟み、別の学校の過去問で同じ型に出会い、12月の総仕上げでもう一度触れれば、2月1日の前日には9割に仕上がっている。それで十分です。
予習シリーズを使っている家庭なら、6年上の総合回や6年下の入試実戦問題集にも、同じ型が繰り返し登場します。1回で仕上げる必要はありません。何度か出会ううちに仕上がるように、教材のほうが設計されています。
過去問を回す前に、親が決めておくこと
過去問演習を得点につなげるには、始める前に親が決めておくべきことがあります。
志望校の合格最低点と、算数の目標点を紙に書いて貼る
採点後、最初に見るのは取れた問題の数(取れなかった数ではない)
Cの問題は、親の判断で「今は捨てる」と宣言してよい
特に2つ目がよく効きます。7問取れた答案に「7問取れたね、合格ラインに乗ってる」と言うか、「3問も落としたね」と言うか。同じ答案でも、翌日に机へ向かう子どもの姿勢はまるで違ってきます。
満点を目指す真面目な家庭ほど、秋に崩れていきます。毎年この時期に3割を追いかけて燃え尽きる家庭は、冷静な受験生にとって良質な養分です。真面目さは美徳ですが、中学受験では時に最も高くつく才能でもあります。明日から、赤ペンのバツを数えるのをやめてください。数えるのは丸の数だけで十分です。
過去問の算数が取れないときに必要なのは、量を増やすことではありません。捨てる問題を決めることです。
僕のマナリンクのプロフィールに、「中学受験プロによる予習シリーズ専門の算数サポート」というコースがあります。お子さんの答案をもとに、過去問の仕分け方や、志望校の合格最低点から逆算した得点計画を一緒に組み立てます。無料相談も受け付けていますので、答案を前に手が止まっている方は、気軽に声をかけてください。
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