過去問のわからない問題を全部教えると難関校で負ける

過去問のわからない問題を、片っ端から先生に解説してもらう。この秋、多くのご家庭が当たり前のようにやっているこの作業は、半分は正しく、半分は合格から静かに遠ざかる作業です。
面談でよく聞く相談があります。「過去問で解けなかった問題を、全部教えてもらえませんか」。気持ちはよくわかります。赤ペンの×が並んだ答案を前にして、親が一番安心できるのは「解説を聞いて、わかった顔をしたわが子」だからです。
ただ、僕はこの依頼の半分をお断りしています。冷たいからではありません。その半分は、教えても点数にならないことがわかっているからです。
過去問のわからない問題は2種類に分かれる
算数の問題は、難しいか易しいかではなく、別の軸で2つに分けて考えます。
一つ目は、解き方が決まっている問題です。例題や基本問題はほぼすべてこれに入りますし、応用問題の中にも「この形が来たら、この手順」と決まっているものがたくさんあります。僕はこれを典型問題と呼んでいます。
二つ目は、決まった解き方がない問題です。答えにたどり着く道筋が何本もあり、どれを通っても正解は出る。ただし、進む方向だけはあります。わかっていることを書き出す。ダイヤグラムを描く。条件を表にまとめる。小さい数で試す。そうやって数字を一つずつ確定させていくと、いずれ答えに着く。これが非典型問題です。
過去問のわからない問題を仕分けると、この2種類が混ざっています。そして両者は、教えたときの効き目がまるで違います。
典型問題は「知識」なので、いくらでも教える
典型問題は、ほとんど知識問題です。知らなければ解けないし、知っていれば解ける。それだけの話です。
だから典型問題については、僕は惜しみなく教えます。そして「覚えてください」とはっきり言います。旅人算の出会いと追いつき、通過算の「列車の長さを足す」、比の合わせ方。こういうものは、考えて発見するより、覚えて使うほうがはるかに速い。中学受験は学問ではなく、限られた時間の中で点を取るゲームです。手順が決まっているものを自力で再発明する時間は、ただの赤字です。
非典型問題の解説は、なぜ再現しないのか
一方、非典型問題は国語の読解に似ています。
国語にも解き方はあります。設問を読み、大事なところに線を引き、本文から対応する部分を探し、いらないものを消していく。でも「しかしの後に必ず答えがある」という公式はありません。同じ答えにたどり着く人どうしでも、頭の中の道筋は人によって違います。その人の思考のくせが出るのです。
非典型問題もまったく同じです。僕の解き方は、僕の頭のくせで選んだ道です。それを横で見せても、お子さんの頭で同じ道が選ばれる保証はありません。つまり再現性がない。
しかも入試では、似た問題は出ても、同じ条件の問題は二度と出ません。過去問のわからない問題の解説を一つ丸暗記しても、本番でその知識が使える確率は、宝くじとそう変わらない。解説を聞いた時間は、親の安心料としては高くつきすぎています。
わからない問題を教え続けた子に起きること
もっと深刻なのは、点数の話ではありません。
わからない問題が出るたびに大人が解説してくれる。これを半年続けると、子どもは一つのことを確実に学びます。「わからない問題は、教えてもらうもの」。
この学習は、どんな典型問題よりも定着がいい。そして入試本番の会場には、解説してくれる大人は一人もいません。手が止まった瞬間に「誰かが来るのを待つ」くせがついた子は、本番の非典型問題の前で、本当にそのまま待ち続けます。親切な大人に育てられた良質な養分の、典型的な末路です。
難関校の算数が求める2つの力
難関校の算数が受験生に求めているものは、突き詰めると2つです。
一つは記憶量。典型問題の解き方を、どれだけ大量に、どれだけ速く引き出せるか。ここは教わって覚えれば伸びます。
もう一つは、決まった解き方のない問題を自分で押し切る力です。書き出し、図を描き、変な数字が出ても止まらずに最後まで計算する。この力は、他人の解説をいくら聞いても育ちません。自分で何度も手を動かし、いろいろなやり方を試して、それを自分の道具として使いこなせるようになったとき、初めて見たことのない問題でも類推が効くようになります。
前者は授業で渡せる。後者は本人が磨くしかない。だから僕は、非典型問題の解き方を「教える」ことはしないのです。
では非典型問題で、僕は何をしているのか
誤解のないように書いておくと、非典型問題を放置しているわけではありません。解き方を渡す代わりに、次のことを一緒にやります。
答案のどこで手が止まったかを特定する
止まるまでに何を試したか、試さなかった方向は何かを確認する
次に同じ形の壁に当たったとき、最初に試す方向を本人に言わせる
解説は「答えまでの道」を渡す作業です。振り返りは「道に迷ったときの歩き方」を渡す作業です。入試で使えるのは後者だけです。
明日から親がすべき非情な決断
過去問の採点が終わったら、×の問題を2つの箱に仕分けてください。
解説を読んで「この手順は知らなかった」と言える問題は、典型問題の箱へ。解説を読み、ノートに写し、数日後に白紙から解き直す。ここは遠慮なく先生に聞いてかまいません。
解説を読んでも「なぜそれを思いつくのか」がわからない問題は、非典型問題の箱へ。こちらは解説を開く前に、もう一度だけ20分、自分の手で書き出しと図を試させてください。答えが出なくてもいい。どこで止まったかが答案に残れば、それが次の授業の材料になります。
わが子が困っている顔を見ながら、あえて答えを渡さない。親にとってはかなり非情な決断です。ただ、本番の試験会場で困るより、10月の自宅で困っておくほうが、はるかに安くつきます。
過去問を「解説」ではなく「得点設計」に使いたいご家庭へ
過去問のわからない問題は、典型と非典型に分けた瞬間に、やるべきことが半分に減ります。全部を教わろうとするのをやめた家庭から、秋の点数は動き始めます。
志望校の過去問を、どの問題を取り、どの問題を捨て、どこで点を積むかという得点設計まで落とし込みたい方は、マナリンクの僕のプロフィールにある「【単発90分】志望校の過去問分析×得点設計」をご覧ください。1回完結の単発コースなので、まずは今の過去問の答案を一緒に仕分けるところから始められます。ご相談はプロフィールのメッセージからお気軽にどうぞ。
関連記事として「中学受験算数の応用問題はパターン暗記では解けない」もあわせて読むと、非典型問題との付き合い方がより具体的に見えてきます。
この先生のおすすめコース
- 過去問を解き始めたが、どの問題を捨ててよいか判断できないお子様
- 月額の枠は埋まっていても、志望校の設計だけ一度プロに見てほしいご家庭
- 塾に通いながら、算数の優先順位だけ整理したいご家庭
このブログに関連するオンライン家庭教師はこちら
中学受験におすすめの指導コース
- 「四谷大塚やSAPIXに通っているけれど、なかなか成績が伸びなくて心配…」
- 「偏差値がなかなか上がらない。このままでは第一志望に間に合わないかも…」
- 中学受験を経験したことのある先生に教えてもらいたい!
- マンスリーテストで思うように得点できなくてお悩みの生徒さん
- プラス30点を目標としている生徒さん
- わかりやすく丁寧に教えて欲しい生徒さん
- 中学受験に向けて、基礎から勉強を始めたい方
- 高学年になってきたが、国語の点数が伸び悩んでいる方
- 進学塾で中学受験の指導経験がある、やさしい女性の先生に教わりたい方
- 理科の暗記はできるけど、計算がある問題が苦手。
- 記述の問題がいつもできない。
- 分野によって点数がとれない。
- 中学受験で第一志望合格を目指す生徒さん
- 偏差値30代から成績をUPさせたい生徒さん
- 『中学受験新演習』を使っているが、内容についていけていない / 復習したい生徒さん