公立中高一貫は定員割れ?倍率3倍台でも楽にならない理由

公立中高一貫が定員割れしているらしい、倍率が下がって狙い目になったらしい。そんな噂を聞いて、この秋に受検を検討し始めた保護者の方が明らかに増えています。結論から言えば、首都圏の人気の公立中高一貫に定員割れは起きていません。起きているのは「倍率の半減」であり、それは合格が半分の難しさになったという意味ではありません。
ここを読み違えると、2月3日の朝に最も高い授業料を払うことになります。
公立中高一貫の定員割れ説はどこから来たのか
噂の出どころは主に二つあります。
一つは公立高校です。2026年度の公立高校入試では、全日制の志願倍率が1倍を下回った道府県が33にのぼりました。私立高校の授業料支援の拡充が背景にあると言われています。「公立は定員割れ」という見出しが大量に流れた結果、公立中高一貫も同じ船に乗っているという連想が生まれたわけです。
もう一つは、公立中高一貫そのものの倍率低下です。こちらは事実です。
都立中高一貫10校の一般枠の平均倍率は、10校体制になった2010年度には7倍を超えていました。2021年度に5.13倍、2024年度に4.03倍、そして2026年度は3.56倍。15年あまりで半分になりました。2026年度は富士高校附属が2.56倍と、ついに3倍を割っています。

神奈川も同じ流れです。県立相模原中等教育学校の受検倍率は2021年度に6.71倍でしたが、2026年度は4.48倍。県立平塚中等教育学校は3.42倍。県立2校の志願者は合計1,318人で、前年の1,462人から1割近く減りました。
数字だけを並べれば、確かに入りやすくなったように見えます。しかし倍率3.56倍とは、受けた子のおよそ4人に3人が落ちるということです。定員割れどころか、私立の人気校と同じかそれ以上の競争が残っています。
倍率が半分になっても難度が半分にならない理由
倍率という数字には、「誰が減ったのか」という情報が入っていません。
公立中高一貫ができた当初は、学習指導要領の範囲から出題される、つまり学校の勉強ができれば受かるかもしれない、という期待で多くの家庭が出願しました。いわゆる記念受検です。ところが年を追うごとに、小学校の成績が良いだけでは歯が立たない、親が見たことのない適性検査は家で教えにくい、塾で対策しなければほぼ受からない、という現実が知れ渡りました。しかも同じ日に一斉に実施されるので、どれだけ対策しても受けられるのは1校だけ。割に合わないと判断した層から順に去っていったわけです。
去ったのは誰か。主に「準備なしで受けていた層」です。
ここが計算の要所です。仮に倍率7倍の時代、受検者の半分が記念受検だったとしましょう。対策してきた子同士の実質的な競争は3.5倍前後だったことになります。そして記念受検がほぼ消えた今の3.5倍。中身は、対策済みの子同士の3.5倍です。
つまり倍率表の数字は半分になったのに、合格ラインの上で戦っている子たちの顔ぶれはほとんど変わっていない可能性がある。倍率の低下を「チャンス到来」と読む家庭は、実は去っていった記念受検組の空席に座ろうとしているだけかもしれません。良質な養分とは、こういう読み違いをする家庭のことを言います。
もちろん、倍率低下にまったく意味がないとは言いません。母集団が小さくなれば、ボーダー付近のわずかな得点差で順位が動きやすくなります。学校間の差も広がりました。2026年度の都立では三鷹が4.48倍で最も高く、富士附属は2.56倍。同じ公立中高一貫でも、学校選びひとつで競争の濃さは倍近く変わります。
2027年度の公立中高一貫入試をどう読むか
2027年度の都立中高一貫の一般枠の検査は2月3日です。神奈川の県立・市立の5校も、例年どおりなら同じ2月3日に一斉実施です。この日程が意味するのは、公立中高一貫はどこまで行っても一発勝負だということです。
さらに都立では、2026年度に一般枠の募集人員そのものが減りました。各校おおむね8人ずつ、全体で78人の減員です。倍率が下がっても、席の数も減っている。分母と分子の両方が動いている以上、倍率の数字だけで難易度を語るのは危険です。
もう一つ見落とされがちなのが、少子化の速度です。東京都の小学校卒業生は当面10万人前後で推移するとされ、今の小学生世代が急に半分になるわけではありません。一方で、私立中学の適性検査型入試が定着し、公立の併願先として私立を受ける家庭も増えています。公立中高一貫の倍率は、私立並みの水準に落ち着いていくと見るのが自然でしょう。
まとめると、2027年度も人気校の倍率は3倍台から4倍台。「定員割れで誰でも入れる」状況は、首都圏の人気校については当面来ないと考えたほうがいいでしょう。
倍率3倍台の公立中高一貫で合格側に入る戦術
では、倍率3〜4倍の公立中高一貫で合格側に入るには何をすべきか。僕の答えは、学校選びより先に得点設計です。
まず、適性検査の算数分野で落とさない問題を決めることです。公立中高一貫の適性検査で数理分野の問題を見ると、旅人算やニュートン算といった特殊算そのものはほとんど出ません。出るのは、割合と資料の読み取りの組み合わせです。表やグラフから数字を拾い、何倍か、何%か、差はいくつかを計算し、それを根拠に説明させる。ここで計算を一つ間違えると、その後の記述が全部崩れます。逆に言えば、割合の計算と資料の読み取りを確実にこなせる子は、それだけで合格ラインの土台を確保できます。
次に、記述は満点を狙わず部分点を積むことです。適性検査の記述は、模範解答と一字一句同じである必要はありません。採点者が見ているのは、必要な要素が入っているかどうかです。資料から読み取った数字、それが意味すること、だから何が言えるか。この三つの部品を入れる練習を、算数分野でも作文分野でも同じ型で繰り返します。
そして、作文で大崩れしないことです。公立中高一貫の合否は算数分野だけでは決まりません。適性検査の柱は読解力と作文力であり、作文で白紙や大幅な字数不足を出せば、算数分野の貯金は簡単に吹き飛びます。算数の得点戦略は、作文で失点しない前提の上に成り立っています。
この時期の6年生に僕が勧める優先順位は次のとおりです。
過去問は志望校の3年分を、時間を測って本番どおりに解く
算数分野は、割合と資料の読み取りの計算ミスを最優先で潰す
記述は「数字・意味・結論」の3部品が入っているかで自己採点する
この時期に新しい問題集へ手を広げるのは得策ではありません。公立中高一貫の適性検査は、問題の予想がしにくい検査です。だからこそ、型が決まっている部分で確実に拾い、予想できない部分はその場で考える体力を残しておく。これが倍率3倍台の戦い方です。
併願の設計で「一発勝負」のリスクを下げる
公立中高一貫を第一志望にするなら、併願の設計も避けて通れません。2月3日の1日にすべてを賭けるのは、戦略というより祈りです。
最近は、私立中学でも適性検査型の入試を行う学校が増えました。公立中高一貫の対策がそのまま活き、本番前に同じ形式の問題を試験会場で解く経験も積めます。2月1日や2日に適性検査型の私立を受けておくことは、合格の保険であると同時に、3日に向けた最高の予行演習になります。
ここで、保護者が決めておくべき判断基準を三つ挙げておきます。
一つ目は、公立中高一貫に落ちた場合に進む学校をどうするか。地元の公立中学校に進むのか、私立に進むのかで、併願の組み方はまったく変わります。
二つ目は、受検の目的が学費なのか教育内容なのか。学費が主な理由なら、私立高校の授業料支援が広がった今、高校受験で勝負する道も現実的です。教育内容が理由なら、その学校の6年間に本当に価値を感じるのかを確かめておく必要があります。
三つ目は、残り3か月で何点上げる必要があるのか。過去問を解いて、合格者平均にどれだけ届いていないかを数字でつかめば、やるべきことは自然に絞れます。
倍率の数字に安心する家庭から席を譲っていく
公立中高一貫の定員割れは、首都圏の人気校については起きていません。倍率が半分になったのは準備をしない層が去ったからであり、残った席の競争はむしろ純度が上がっています。倍率3.56倍という数字を見て「4倍を切ったなら何とかなる」と肩の力を抜いた家庭から、順番に席を譲ることになるでしょう。
明日からやるべきことは単純です。倍率表を閉じて、志望校の過去問を1年分、時間を測って解かせてください。そして算数分野で落とした問題が、計算ミスなのか、資料の読み違いなのか、そもそも手が出なかったのかを仕分ける。その仕分けの結果こそが、2月3日までの3か月の設計図になります。
志望校の過去問から、どこで点を取りどこを捨てるかを決める指導は、僕のマナリンクのプロフィールにある「【小6直前期】過去問分析×得点設計|志望校別の算数戦略」で行っています。
無料体験もありますので、併願の組み方で迷っている段階でも気軽に声をかけてください。
適性検査の算数でどの単元が出ているのかは、過去記事「適性検査の算数対策|特殊算より「割合×資料」で点を取れ」で詳しく分析しています。あわせてどうぞ。
この先生のおすすめコース
- 過去問を解いているが、点数が伸びず不安なお子様
- 志望校の傾向に合わせた対策を、プロに設計してほしいご家庭
- 本番までの残り時間で、算数の得点を最大化したいお子様
このブログに関連するオンライン家庭教師はこちら
中学受験におすすめの指導コース
- 特殊算を基礎から勉強したい方
- 特殊算が理解出来ていないまま暗記してしまっている方
- 特殊算の中に理解出来ていない単元がある方
- 算数を入試の武器にしたい方
- 算数センス・発想力を身につけたい方
- 根底から子供の頭を良くしたい方
- 「四谷大塚やSAPIXに通っているけれど、なかなか成績が伸びなくて心配…」
- 「偏差値がなかなか上がらない。このままでは第一志望に間に合わないかも…」
- 中学受験を経験したことのある先生に教えてもらいたい!
- 苦手の国語を確実に伸ばしたい生徒さん
- 記述問題や読解が苦手で、国語専門の講師に基礎から教わりたい生徒さん
- 読解国語の個別指導で、「どう読めばいいか」を一歩ずつ身につけたい生徒さん
- 同じ漢字を何回も間違える
- 知らない言葉がたくさん出てきてわけが分からない
- 国語の「基礎」を作りたい