中学受験国語の説明文が難しい子へ|理解の完璧主義を捨てよ

中学受験の国語で、説明文が難しすぎて手が止まる。そういうお子さんの多くは、読解力が足りないのではありません。「全部わかってから答えよう」という真面目さで、試験時間を静かに溶かしているだけです。
秋の過去問演習が本格化すると、この種の相談が一気に増えます。本文の意味がさっぱりわからないと言って、問1から先に進まない。家で読ませても、やはりわからないと言う。親としては、語彙を増やすべきか、読書量を増やすべきか、頭を抱えるところでしょう。
先に結論を言っておきます。国語のテストは、文章を理解できたかを測る場ではありません。設問に対して、本文の根拠から答えを出し切れるかを測る場です。理解と得点は、よく似た顔をした別の競技です。
なぜ中学受験の国語で説明文が難しく感じるのか
理由は単純で、題材がお子さんの経験の外にあるからです。言語と翻訳、科学と社会、近代化と共同体。入試の説明文には、大人が読んでも眉間にしわが寄る題材が平気で並びます。概念、相対的、普遍、恣意的。こうした抽象語が一段落に三つも四つも出てくれば、小学6年生が内容を腹の底から納得するのは、設計上ほぼ無理です。
ここで、出題者の側に立って考えてみます。入試問題は、小学6年生が制限時間内に解けるように作られています。出題者が想定しているのは、この文章を完全に理解できる小学生ではありません。わからない部分を抱えたまま、設問が指している場所を探し、本文の言葉を手がかりに答えをつなげられる小学生です。
つまり、全文を理解しようとする子は、出題者が求めていない仕事に、限られた時間をつぎ込んでいることになります。ゲームのルールを確認しないまま、自分ルールで戦っている状態です。国語の偏差値が50前後で伸び悩むお子さんを見ていると、驚くほど多くがこの罠にはまっています。
「わからないから解けない」は本当か
授業でよく見る場面があります。演習を始める前に、文章が難しそうだ、時間内に終わらないかもしれないと顔を曇らせる子です。
僕はこう伝えます。入試問題は小学生が解けるように作られているから、全部わからなくても答えは出せる。今日やっているのは、意味がわからなくても答えを出す練習だ、と。
これだけで、多くの子は肩の力が抜けて手が動き出します。そして皮肉なことに、正答率はむしろ上がります。理解しようと必死になっているあいだ、子どもの頭の中の作業台は文章の意味を組み立てることで埋まっています。設問の条件を読み取り、本文の該当箇所を探すための場所が残っていないのです。理解をあきらめた瞬間に、その場所が空きます。
具体例を一つ挙げます。言語や翻訳を扱った説明文に、翻訳の隙間、といった表現が出てきたとします。英語の brother は、日本語では兄と弟に言い分けなければならない。一つの言葉が指し示す範囲が、言語によって違う。そこにずれが生まれる、という話です。
この理屈を完全に理解していなくても、設問は解けます。隙間という言葉の前後を見れば、筆者が何と何のずれを指しているかは、本文の中で必ず言い換えられています。その言い換えを拾えば答えになります。必要なのは理解ではなく、言い換えを探す目です。
中学受験の国語の説明文で得点する3つの戦術
では、具体的に何をすればよいか。僕が説明文の演習で徹底させている戦術は三つです。
戦術1 設問の条件に線を引く
最も適当なものを選べ。適当でないものを選べ。合わないものを一つ選べ。この条件の取り違えによる失点は、本文が難しいときほど増えます。文章の理解に頭を使い切って、設問文を流し読みしてしまうからです。
これは理解不足ではなく、注意の向け方の問題です。だからこそ、仕組みで防げます。設問を読んだら、条件の部分に必ず線を引く。それだけです。地味ですが、1回の模試で数点がそのまま戻ってきます。数点で偏差値が動く層にとって、これほど投資効率のよい作業はありません。
戦術2 1問3分で見切る
選択問題で迷ったとき、3分考えても20分考えても、結果が大きく変わらない問題は多いものです。悩み続けた末の正解率は、3分で決めた正解率とさほど変わりません。違うのは、後ろの問題に残る時間だけです。
3分で決められなければ、いちばんましな選択肢に印を付けて次へ進む。最後に時間が余れば戻る。この判断を演習のたびに繰り返すと、本番で一つの問題に溺れることがなくなります。
戦術3 記述は本文の言葉と「まとめる言葉」で組み立てる
記述で言葉に詰まる子の多くは、本文の内容をなんとなくわかっていても、それを短くまとめる言葉を持っていません。先ほどの翻訳の例なら、範囲という一語があるだけで、二つの言語では一つの言葉が指す範囲が違う、とすっきり書けます。
記述の採点は、本文の要素が入っているか、筋が通っているかで決まるのが一般的です。美しい文章を書く必要はありません。本文の言葉を拾い、範囲、対比、原因、変化といった、まとめるための言葉でつなぐ。この型を覚えれば、記述は白紙から部分点へ、部分点から満点へと段階的に伸びていきます。
過去問演習は「本番形式」と「根拠の確認」で回す
ここまでの戦術を身につけるための演習の回し方も書いておきます。
時間を計り、1問ずつ解き進める。答え合わせは最後にまとめて行う
答え合わせでは、文章を理解し直すより、正解の根拠が本文のどこにあったかを確認する
記述は自己採点にせず、大人が採点して、どの言葉が足りなかったかを具体的に返す
ポイントは二つ目です。難しい説明文を解いたあと、親がその文章の内容を一生懸命に解説してしまう家庭は少なくありません。気持ちはわかりますが、それは来年の入試に同じ文章が出る前提の復習です。出ません。復習で鍛えるべきは、根拠を見つける目のほうです。
明日から親がすべき、ささやかで非情な決断
最後に、保護者の方にお願いしたいことがあります。全部わかってから解きなさい、という声かけを、今日でやめることです。
その言葉は誠実で、正しく聞こえます。しかし入試本番の50分間においては、お子さんに解けない宿題を一つ増やしているだけです。文章を一字一句味わう姿勢は、入試が終わってからの読書で存分に発揮していただければ結構です。そのころには、きっと文章のほうも少しやさしく見えているはずです。
中学受験の国語で説明文が難しく感じるのは、お子さんの能力の問題ではなく、戦い方の問題です。理解より先に得点する技術を身につければ、難しい文章はむしろ差がつく得点源になります。
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