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社会

【世界史】 「世界史ムリかも…」と思ったら読んでほしい勉強のコツ8選

2025/6/4

世界史を受験科目に選ぶ高校生が「世界史は覚える量が多すぎて手が回らない」と感じるのはごく自然なことです。ただ、よく「詰め込み教育が」とか、「負担が大きすぎる」という話を聞きますが、大学等における高等教育を受け、高度な知的トレーニングを積むにあたり、前提条件として高校教科書1冊分程度の知識を入れることが「過度な詰込み」であるとは思いません。(大学に入って真面目に学問に向き合えば、その何倍もの著作を読み、吸収することになるわけですから。)

もっとも、大学とは異なり、高校生は一つの専門科目だけではなく、英語・数学をはじめとした様々な教科と向き合い、さらに学校行事などをはじめとした諸活動などを行います。その中で、世界史の内容教科書1冊分をしっかり身につけるのが大変だというのはよく分かりますし、「なかなか覚えられなくて」というのは多くの受験生が直面する共通の悩みだと思います。本記事では、こうした悩みを少しでも軽減にするためのいくつかのポイントについてご紹介していきたいと思います。


1、情報は、実は多い方が良い

:よく、「世界史は情報が多すぎるから覚えられない」と考える人がいますが、むしろ逆です。世界史が覚えにくいのは、日本史と比べて一つの出来事や人物に対するイメージを作り上げるための情報が不足しているから覚えられないのです。

これは、ある人物をイメージするのに似ています。たとえば、私たちが「隣のクラスの佐藤さん」をはっきりと認識するには、佐藤さんの「容姿」に加えて、「人となり」、「属性」、「友人関係」など、その人のイメージを構成する様々な要素が加わるほど、佐藤さんのことをしっかりと認識できます。「名前しか聞いたことがない」場合と、「〇〇部に所属していて、明るく社交的な人柄らしい」という情報が入った場合、さらには「実際に一緒に学園祭に向けて共同で作業をした」場合では、佐藤さんをイメージするための情報量が全く違いますし、情報量が多ければ多いほど佐藤さんのことが「よく分かる」はずです。

これと同じで、日本史を「なじみ深い」と感じる人の場合、知らず知らずのうちに日本史についての情報を勉強開始前から持っていることが多いのです。私たちは日常の様々な場面で日本の歴史的なものに触れています。江戸が今の東京だということは何となく知っていますし、ドラマのワンシーンを見たときに、平安時代の衣装と江戸の町人の衣装ではやはり違います。そして、何となく「いつ頃の時代なんだろうな」という漠然としたイメージを持つことができます。一方で、世界史の場合にはそうした予備知識がないことが多いです。「ベーメン」と言われてもヨーロッパのどのあたりかわかりませんし、「エリザベス1世期のイギリスにおけるジェントリの身なり」と言われてもピンときません。

ですから、世界史の内容を記憶に定着させるシンプルな方法は、実は「情報を絞って効率的に覚える」ことではなく、「無駄知識でも構わないから食わず嫌いせずに多くの情報をとりこむ」ことだったりします。これは世界史を記憶する上で盲点になりがちな部分です。世界史がやればやるほど身につく科目である理由はこのあたりにあります。


2、 「流れ」をつかむことを最優先にする

1でお話したこととも関わってきますが、最初からすべてを覚えようとするのはやめましょう。日常生活において、人物・事柄・仕事などの特徴をとらえる時もそうですが、何かを把握しようとするときには、いきなり細部から入るのではなく、対象をつかむためのより大きな特徴から情報を整理しようとするはずです。同様に、世界史においても年号や人名、事件名などの知識の細部にこだわるよりも、まずは大きな時代の流れや因果関係を把握することに力を使うべきです。


(例) 

「都市国家ローマの成立→身分闘争→共和政の確立→対外拡張→内乱の1世紀とカエサルの独裁→帝政の開始…」など、あるテーマについて時代の流れや推移、因果関係などを中心に全体像を構築することに力を注ぐ。


このような流れをまず把握しておくと、その後に覚える人名や年号も「なぜそれが重要なのか」や「どのようにつながるのか」という文脈で覚えることができ、単なる丸暗記よりも記憶の定着率が上がります。


3、重要な地理的知識と結びつけて覚える

地図を活用しながら学ぶことで、地名や地域の歴史的背景が頭に入りやすくなります。もし、世界史を勉強していて「〇〇ってどこだろう?」という疑問が生じる地名に出くわして、その地名がたびたび登場してくるならば、早い時期に位置関係を確認しておいた方が良いでしょう。イギリス、フランス、ドイツの位置関係が理解できないのは、日本史でたとえていえば九州・四国・近畿の位置関係が把握できていないのと同じことです。これらを把握した方が「授業が聞きやすくなる」、「内容を覚えやすくなる」のは当然です。

どの地域でどの出来事が起きたのかを視覚的に理解することで、情報を整理しやすくなり、記憶の混乱も防げます。今は昔と違って、検索で「地名・地図」で画像検索すればすぐに該当する地域の地図は出てきますので、気になる者はすぐに調べる習慣をつけておきましょう。


4、目安や基準となる出来事や時代を把握する

:以前、紀元法を覚えることの大切さについて書いた記事でもご紹介しましたが、まずは年号を「〇〇世紀」という風に即座に変換する技術を身につけましょう。その上で、各時代を把握するために便利だと思われる出来事を確認して、古代~中世であれば100年単位、近現代史であれば25年~50年単位くらいでの違いを把握するようにしましょう。日本史で言えば、奈良時代の出来事と平安時代の出来事、鎌倉時代の出来事の違いを理解するのと同じことです。


(例)

「モンゴルの世紀は13世紀」と把握しておくと、チンギス=ハンが活躍した時代や、元の成立期、元寇が起こった時期などが容易に把握できます。


5、 頻出分野を優先して学習する

すべてを均等に覚える必要はありません。出題頻度の高いテーマや地域、時代に集中して学ぶのが効率的です。教科書や過去問、模試を通じて頻出テーマを洗い出し、まずそこを重点的に覚えましょう。「頻出テーマが分からない」という人は、学校の先生や塾の先生、あるいは同じクラスでやたら世界史のできる奴などにドヤ顔させて聞き出しましょう。


6、インプットとアウトプットのバランスを意識する

一方的に詰め込みや暗記を行うなど、インプットだけを重視するのではなく、問題演習などのアウトプットを通して知識を使うことも大切です。問題に実際に触れることで、どんな分野や知識が問われやすいかという感覚が身につきますし、間違えた箇所を確認することで、自分に身についていない部分の再確認ができます。「まだ覚えていないから問題を解くことができない」という人も、まずは「問題を読んで解答を見る」だけでもよいですから、実際に問題に触れるということが大切です。このようにして、インプットした情報をアウトプットすることで、記憶の「定着」と「再現性」が高まります。一問一答や問題集、過去問などを通して、知識を実際に使う訓練をしましょう。究極的には、ある事柄について「一定のレベルでお話ができる」状態に持っていくのが正しい。


(例)

「フランス革命について話して」と言われたときに、「えーと、何か、貴族が免税特権を持っていたけど、国の財政がやばいから税金取ろうって話になって、で、えーと、三部会開いて、でも話がまとまらないなーと思っているうちに怒った市民がバスティーユを襲って…」と、正確でなくてもよいので一定のストーリーを自分で紡ぎだせるかが大切。


7. 定期的な復習を習慣化させる

世界史に限らず、知識は時間が経つと忘れやすいです。一方で、知識を吸収してから短期間のうちに復習すると、知識の定着度は格段に上がります。人が学習した内容を時間とともにどれほど忘れていくかを示した有名な「エビングハウスの忘却曲線」は、記憶が時間とともに急速に失われることを示しています。人の記憶は、学習直後は保持率が高いものの、数時間から数日で急激に低下し、その後は緩やかに減少していくことがわかっています。重要なのは、忘却を防ぐには繰り返し(復習)が不可欠という点です。特に、適切なタイミングで復習を行うことで、記憶の定着率が大幅に向上することが示唆されています。

効率的な記憶の定着のためにも以下の3つに分けて世界史の知識を復習する習慣をつけていきましょう。


① 習ったその日の帰りの電車の中で思い出す

:「今日、先生が世界史の授業で話していたことは…あんなことやこんなこと」など、ちょっと思い出すだけでも効果があります。

② 1週間分の学習内容を週末に軽く復習

:「机に向かってノートにガリガリ」する必要は必ずしもありません。その週の授業で学習した内容を書いたノートやプリントなどをさっと読み返すだけでも記憶の定着には十分効果があります。

③ 試験直前の総まとめなど、数か月に1度の総復習

:1ヵ月~2か月程度のスパンで、それまでに学習した内容の本格的な総復習を行って、知識の完全な定着を図るための時間をとりましょう。


8、マンガ・アニメ・ドラマ・映画などを活用する

マンガなどの視覚効果は絶大です。もちろん、フィクションなのでそのまま信じ込んでしまうのはどうかと思いますが、それでも衣装や風俗などを視覚的にパッとイメージできるというのは、記憶の定着にとっては非常に有効です。「グラディエーター」を見た人が古代の剣闘士と中世の騎士を取り違えることはないと思いますし、ジェレミー・ブレット版の「シャーロック=ホームズ」を見れば、ヴィクトリア朝期イギリスの何となくのイメージはできるはずです。なにより、親しみをもって世界史に触れることができるようになるというのは、学習を進めるうえでの大きな力になります。好きこそものの上手なれ、です。


以上、いろいろな面から世界史の知識定着をより効率的に進めることができるようになるポイントについてお話してきました。必ずしも即効性のあるものではないかと思いますが、人によってはツボにはまる視点などもあるかと思います。世界史は単なる暗記科目ではありません。世界史を「構造を理解し、論理的なつながりを把握する科目」としてとらえ直すことで、より全体的なつながりが見えやすくなり、知識を覚えやすい状態を作ってくれるはずです。大変なのはたしかに大変なのですが、少しでもみなさんの学習の一助になればと思います。

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