【世界を旅した先生が伝えたい!歴史への興味がグッと深まる「旅×学び」のススメ】 vol.13 北マケドニア編 ― 小さな国に詰まった“大きな歴史”
バルカン半島の山あいに佇む北マケドニア。
観光地としては華やかさこそ控えめですが、歩き始めるとすぐに「この国は歴史を背負って生きている」という空気に気づきます。
首都スコピエの街に立つと、古代・中世・オスマン帝国・ユーゴスラビア、
そして現代に至るまで、まるで地層のように重なり合った時間が一つの景色に収まっています。
町中に立つ数々の銅像や記念碑には、“自分たちは何者なのか”を問い続けてきた人々の歴史が刻まれているのです。
■ アレクサンドロス大王の記憶と「アイデンティティ」の葛藤
北マケドニアを語るとき避けて通れないのが、ギリシャとの“名称問題”。
かつて国名を「マケドニア」と名乗ったことで、古代の英雄アレクサンドロス大王をめぐって両国の主張が対立しました。
旅をしていると、この「名前の重さ」がよく分かります。
国というのは、ただの領土のことではなく、「私たちはどんな歴史を継承しているのか」という物語のことでもあるのだ、と。
2020年代に入ってからは「北マケドニア共和国」として国名が正式に改められ、
EU加盟に向けて一歩ずつ前進している姿勢を感じます。
小さな国の努力と変化を“現場で見る”ことは、教科書だけでは得られない学びそのものです。

■ 多民族・多宗教が織りなす「バルカンの縮図」
北マケドニアでは、スラヴ系、アルバニア系、トルコ系など、複数の民族が共に暮らしています。
スコピエ旧市街のモスク、正教会の大聖堂、トルコ風バザールが隣り合う景色は、
まさに「文化の交差点」。
この複雑さこそ、バルカン半島の歴史を理解するカギです。
一つの国の中に、複数の言語・宗教・アイデンティティが共存する――。
その状況が時に争いを生み、時に文化的な豊かさを育んできました。

■ オフリドの湖に広がる“静かな時間”
世界遺産オフリド湖は、北マケドニア旅のハイライト。
透き通る湖と、中世の聖堂、石畳の街がつくる空間には、
“バルカンの激動とは別の時間”がゆっくり流れています。
歴史で覚える国名や出来事の裏側には、
そこに生きた人々の穏やかな日常があった――。
旅をすると、そんな当たり前のことを自然と思い出させてくれます。
■ 教科書のページが“物語”に変わる瞬間
北マケドニアは、世界史の中では決して大きく扱われません。
しかし、旅してみると 「小国にも大きなドラマが詰まっている」 ことがよく分かる国です。
民族・宗教・歴史認識――
こうしたテーマは高校世界史でも頻出ですが、どうしても抽象的に感じがち。
だからこそ、旅の目線から触れることで、
「なぜこの地域は複雑なのか?」
「歴史が現代の政治にどう影響しているのか?」
といった本質が自然と掴めるようになります。
世界を知ることは、世界史の理解を深める最良の近道。
そしてその第一歩として、北マケドニアはとても魅力的な“旅×学び”の目的地です。
◆ 次回予告:ブルガリア編
次回は、バルカン半島の“静かな実力者”ブルガリアへ。
黒海と大地に育まれた文明、スラヴ文化の源流、そしてオスマン帝国支配を乗り越えて形づくられた独自の歴史。
ヨーグルトの国、バラの国――そんなイメージの奥に隠れた「本当のブルガリア」の姿に迫ります。
旅すると分かる、教科書では語りきれないブルガリアの深層へ。どうぞお楽しみに。