【帰国子女の高校受験③】都道府県でこんなに違う!帰国生入試の地域差と受験準備
「帰国子女なら同じ制度で受験できる」とは限らない?地域によって異なる高校入試の仕組みを整理します
「帰国子女として高校を受験する予定です。どんな入試がありますか?」
この質問を受けたとき、実は「帰国子女向けの高校入試はこういうものです」と全国共通の制度を説明することはできません。
なぜなら、公立高校の入学者選抜は都道府県ごとに制度が異なるからです。
たとえば、東京都には「海外帰国生徒対象の選抜」があります。
一方で、埼玉県では「帰国生徒特別選抜」が全日制高校を対象に設けられています。
千葉県にも「海外帰国生徒の特別入学者選抜」があります。
神奈川県では「海外帰国生徒特別募集」という制度があり、実施校が指定されています。
愛知県でも、特定の高校・学科で「海外帰国生徒選抜」が実施されています。
そして大阪府にも、「海外から帰国した生徒の入学者選抜」があります。
つまり、
「帰国子女だから特別な入試を受けられるか」ではなく、
「帰国先の都道府県では、どのような制度が用意されているか」
を最初に確認する必要があります。
今回は、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・愛知県・大阪府を例に、地域による違いを見ていきましょう。
1.まず知っておきたい「地域差」
帰国生の高校受験を考えるとき、最初に注意したいのが、
「帰国生入試=全国共通の制度」ではない
ということです。
都道府県によって、
帰国生を対象とした独立した選抜がある
特定の高校だけで実施する
多くの公立高校で実施する
一般選抜と同じ学力検査を使う
一般選抜とは異なる教科数・検査内容にする
面接や作文を組み合わせる
帰国後の年数や海外在住期間に条件がある
など、さまざまな違いがあります。
したがって、帰国時期が決まったら、
「どこの高校を受けるか」だけでなく「どこの都道府県の制度を利用するか」
まで考えることが重要です。
2.東京都「海外帰国生徒対象の選抜」が明確に設けられている
東京都では、都立高校の入試に「海外帰国生徒対象の選抜」が設けられています。
令和9年度(2027年度入学)の場合、海外帰国生徒対象の4月入学生徒の選抜は、
出願:令和9年1月29日~2月4日
実施:令和9年2月15日
合格発表:令和9年2月17日
という日程で実施されます。
ここで重要なのは、
一般選抜とは別に「海外帰国生徒対象」の選抜が設定されている
ということです。
つまり東京都の場合、帰国生であることが、受験制度そのものに反映される仕組みがあります。
ただし、ここでも注意が必要です。
「東京都ならどの都立高校でも帰国生選抜を受けられる」という意味ではありません。
実際に受験する際には、
帰国生徒対象選抜を実施している学校か
自分が出願資格を満たしているか
どのような検査が行われるか
一般選抜との関係はどうなっているか
を確認する必要があります。
3.神奈川県「海外帰国生徒特別募集」という制度
神奈川県にも、海外帰国生を対象とした明確な制度があります。
令和9年度の神奈川県公立高校入試では、募集区分の中に、
「特別募集(海外帰国生徒特別募集)」
が明記されています。
たとえば県立神奈川総合高校では、海外帰国生徒特別募集が実施されています。
令和9年度については、継続して2年以上外国に在住し、令和6年9月1日以降に帰国したことなどが志願資格として示されています。
また、検査内容は、
英語
国語
数学
作文
面接
となっています。
ここから分かるのは、
「帰国生だから学力検査がなくなる」という制度ではない
ということです。
帰国生向けの特別募集であっても、教科の学力検査が行われる場合があります。
そのため、
「帰国枠だから日本の高校入試対策はそれほど必要ない」
と考えるのは危険です。
帰国時期が近づいたら、実際の検査科目まで確認して学習計画を作ることが大切です。
4.埼玉県 全日制高校で「帰国生徒特別選抜」
埼玉県の制度も特徴的です。
令和9年度入学者選抜では、「帰国生徒特別選抜による募集」が設けられています。
しかも埼玉県教育委員会のQ&Aでは、
帰国生徒特別選抜による募集は、すべての全日制の課程で実施する
とされています。
これは地域差を考えるうえで非常に分かりやすい例です。
また、募集人員については、各学校の第1学年募集人員を40で除した数とされ、その学校の募集人員の枠内に含まれます。
さらに出願資格には、
海外在住期間
帰国後の期間
について条件があります。
令和9年度では、
海外在住が原則2年以上4年未満+帰国後2年以内
または
海外在住が原則4年以上+帰国後3年以内
という区分が示されています。
そして検査については、
・国語
・数学
・英語
の学力検査を一般募集と同一時刻・同一問題で実施し、さらに個人面接を行うとされています。
つまり埼玉県では、
「帰国生特別選抜」という制度がありながら、学力検査そのものは一般募集と共通
という特徴があります。
これは受験生にとって重要なポイントです。
帰国生選抜だからといって、
「一般入試の勉強をしなくてもよい」
とは限らないのです。
5.千葉県「特別入学者選抜」を複数の高校で実施
千葉県にも、海外帰国生を対象とした「特別入学者選抜」があります。
令和9年度には、県立高校の複数校で実施されます。
たとえば、
・千城台
・幕張総合
・柏井
・土気
・船橋
・国府台
・松戸国際
などが対象となっています。
さらに市立高校でも、
・船橋市立船橋
・松戸市立松戸
・柏市立柏
などで海外帰国生徒の特別入学者選抜が設定されています。
千葉県の特徴として押さえておきたいのは、
「特別入学者選抜の予定人員」が学校ごとに示されている
という点です。
たとえば県立千城台高校は「おおむね6名」、県立船橋高校は「おおむね7名」といった形で予定人員が示されています。
ただし、ここで注意したいのは、
予定人員は一般入学者選抜の募集人員の中に含まれる
ということです。
したがって、「特別枠=一般募集とは別に追加で人数を確保している」と単純に考えることはできません。
6.愛知県 実施校がはっきり指定されている
愛知県も帰国生にとって重要な地域です。
令和9年度の愛知県公立高校入試では、「海外帰国生徒選抜」が設けられています。
実施校は、
・昭和高校
・中村高校
・豊田西高校
・岡崎西高校
・豊橋東高校
・名東高校(国際英語科)
・千種高校(国際教養科)
・津島高校(国際探究科)
・刈谷北高校(国際探究科)
です。
そして定員枠については、
普通科:10%
専門学科:30%
とされています。
出願資格については、
海外2年以上かつ帰国2年以内
が基本となっています。
さらに愛知県で非常に重要なのが、
海外帰国生徒選抜に出願する高校・学科を第1志望として、一般選抜にも出願する
という仕組みです。
つまり、
「帰国生選抜を受けるから一般選抜は関係ない」
という考え方ではなく、
帰国生選抜と一般選抜の関係まで理解して出願戦略を考える必要があります。
このように、同じ「帰国生選抜」でも、都道府県によって制度設計がかなり違います。
7.大阪府 対象学科を確認することが特に重要
大阪府にも、
「海外から帰国した生徒の入学者選抜」
が設けられています。
令和9年度の大阪府公立高校入試でも、海外から帰国した生徒の入学者選抜は、2月15日~16日に出願し、2月18日に学力検査・面接を行う日程となっています。
さらに大阪府の入学者選抜方針では、対象となる学科として、
・総合科学科
・英語科
・国際文化科
・グローバル科
・グローバル探究科
が挙げられています。
志願資格は原則として、
外国において継続して2年以上在留し、帰国後2年以内
とされています。
検査は、
・数学
・英語
・面接
です。
また、中学校長からの調査書の提出は不要とされています。
このように大阪府では、
「帰国生向けの選抜があるか」だけでなく、「どの学科が対象なのか」
まで確認する必要があります。
8.6地域を比べると、制度の違いが見えてくる
ここまでを簡単に整理してみましょう。
地域帰国生向け制度の例特徴東京都海外帰国生徒対象の選抜独立した帰国生対象選抜が設定神奈川県海外帰国生徒特別募集特別募集として実施。学校・募集時期の確認が必要埼玉県帰国生徒特別選抜全日制で実施。国数英は一般募集と同一問題千葉県海外帰国生徒特別入学者選抜複数の県立・市立高校で実施。学校ごとに予定人員愛知県海外帰国生徒選抜実施校が指定され、普通科10%・専門学科30%の枠大阪府海外から帰国した生徒の入学者選抜対象学科が指定され、数学・英語・面接を実施
この表からも分かるように、
「帰国生枠があるか・ないか」の二択ではありません。
実際には、
どの学校で
どの制度が
どの条件の生徒を対象に
どのような検査を行うのか
というところまで見なければなりません。
9.では、なぜ都道府県によって違うの?
ここで、
「なぜこんなに地域差があるの?」
と疑問に思う方もいるでしょう。
最も重要なのは、公立高校の入学者選抜が全国一律の一つの方式ではなく、各都道府県の教育委員会が地域の制度として設計しているという点です。
そのため、
・どの高校で特別募集を行うか
・どの程度の人数を募集するか
・どの教科を課すか
・面接や作文を行うか
・海外在住期間をどう設定するか
・帰国後何年まで対象とするか
・一般選抜との関係をどうするか
などに違いが生まれます。
そして、これは帰国生の受験戦略にも直結します。
たとえば、
「海外生活が2年を超えている」
という同じ経歴の生徒でも、
東京で受験する場合と、埼玉・愛知・大阪で受験する場合では、確認すべき制度が異なります。
したがって、
「帰国子女だから、こういう勉強をすればいい」
というところから始めるのではなく、
「どこで、どの制度を利用して受験するのか」
を最初に決めることが大切なのです。
10.地域差は「学習計画」にも影響する
この地域差は、単なる出願手続きの違いではありません。
実は、いつから何を勉強するかにも関係します。
たとえば、埼玉県では帰国生徒特別選抜でも国語・数学・英語の学力検査が一般募集と同じ問題で行われます。
一方、大阪府の海外帰国生選抜では数学・英語と面接が中心です。
愛知県では国語・数学・英語の学力検査と面接が行われます。
つまり、
「帰国生だから英語だけ勉強すればいい」
とは限りません。
むしろ、
① 帰国する地域
↓
② 志望校
↓
③ 利用できる選抜制度
↓
④ 試験科目・面接・作文
↓
⑤ 必要な学習
という順番で考えることが重要です。
11.帰国前から確認しておきたい「地域別チェックリスト」
海外にいる段階で、次の項目を確認しておくと安心です。
【STEP1】帰国先を決める
まず、
東京都
神奈川県
埼玉県
千葉県
愛知県
大阪府
その他の都道府県
のどこに帰国する予定なのかを確認します。
【STEP2】公立高校の制度を確認する
都道府県の教育委員会のホームページで、
「海外帰国生徒」
「帰国生徒特別選抜」
「海外帰国生徒特別募集」
「海外から帰国した生徒」
などのキーワードで調べます。
【STEP3】出願資格を確認する
特に重要なのが、
海外在住期間
帰国日
帰国後の年数
日本人学校・現地校などの在籍状況
保護者の住所
国内の中学校への在籍状況
です。
「海外に何年いたか」だけでは判断できない場合があります。
【STEP4】検査科目を確認する
次に、
国語
数学
英語
作文
面接
その他の検査
を確認します。
ここで初めて、具体的な学習計画を立てます。
【STEP5】一般選抜との関係を確認する
これも非常に重要です。
帰国生選抜によっては、
一般選抜との併願
一般選抜への同時出願
第2志望
一般選抜と同じ学力検査
などのルールがあります。
「帰国生選抜だけ受ければいい」と早合点しないことが大切です。
12.帰国時期が遅いご家庭ほど「地域差」を早く確認したい
特に注意したいのが、
帰国時期が中3の後半になるケース
です。
たとえば10月、11月、12月、さらに1月以降に帰国する場合、単純に「帰国してから高校を探す」では時間が足りなくなる可能性があります。
なぜなら、
出願資格の確認
海外在住期間の証明
帰国日の確認
中学校関係書類
成績資料
志望校決定
学校説明会
出願
面接対策
などを短期間で進める必要があるからです。
さらに、地域によって制度そのものが異なります。
そのため、
「帰国してから考える」ではなく、帰国前から制度を調べておく
ことが重要になります。
この点については、後の第9回~第11回で、
「帰国時期×地域」
という具体的なモデルケースに分けて詳しく解説します。
13.今回のまとめ――「帰国子女」という情報だけでは受験制度は決まらない
今回、特に覚えておいてほしいのは次の3点です。
① 帰国生入試は全国共通ではない
東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・愛知県・大阪府を見ても、制度や対象校、検査内容は異なります。
② 「帰国生枠があるか」だけでは不十分
重要なのは、
「自分が受けられるか」
「どの高校で実施しているか」
「何を試験するのか」
「一般選抜とどう関係するのか」
まで確認することです。
③ 地域が決まったら、受験対策も変わる
同じ帰国子女でも、
帰国先が違えば、必要な教科・面接・作文・出願手続きまで変わる可能性があります。
だからこそ、高校受験の準備は、
「帰国子女だから何を勉強する?」
ではなく、
「どの地域で、どの制度を使って、どの高校を受験する?」
から始めることが大切です。
次回は「出願条件」に注目します
第4回では、さらに一歩踏み込んで、
「海外在住○年以上」
「帰国後○年以内」
といった、帰国生入試の出願条件について解説します。
同じ「2年以上海外に住んでいた」という経歴でも、「いつ帰国したのか」まで含めて考えなければ、出願資格を判断できない場合があります。
また、
「帰国後2年以内」とはいつを基準にするのか
帰国日をどう証明するのか
日本人学校と現地校では扱いが違うのか
保護者だけ先に帰国した場合はどうなるのか
など、実際の出願で迷いやすいポイントも整理していきます。
帰国生の高校受験は、「勉強を始める前の制度確認」そのものが受験準備の一部です。
焦って学習だけを始めるのではなく、まずは自分が利用できる制度を正確に把握するところから始めていきましょう。
この先生のおすすめコース
- 数か月後〜数年以内に日本への帰国を予定している (日本の学校の授業についていけるか不安など)
- 家庭以外で日本語を使う機会が少ない(現地校に通っている、日本語学校が近くにないなど)
- 日本語は話せるが、読む・書くことに不安がある(漢字が苦手、長文を読むのが苦手など)
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海外子女におすすめの指導コース
- 日本語を継承語として学び、日本語を特殊能力という武器にしたいお子様
- お子様の年齢や学年に関係なく、一人一人のお子様に合わせた国語教育を受けたい
- 楽しく日本語を学び、日本語に対してポジティブな思いになりたい
- 読解力をつけたい。
- テストの点数を上げて、国語に自信をもてるようにしたい。
- 筋道立てて話す力、正しく聞く力をつけたい。
- 数学の学習をご家庭で進めたい海外在住の生徒さん
- 「わかる」「できる」を積み重ねて、自信をつけたい生徒さん
- 優しく、楽しく、わかるまで教えてほしい生徒さん
- 現在海外に住まれていて、日本のカリキュラムの勉強がしたい方
- 教材を一緒に確認しながら、分からない部分の補強を中心に学習したい方
- 海外駐在中・帰国された生徒さん担当経験講師をお探しの方
- 中学生の数学基礎をやりたい、まずは計算を得意にしたい方。
- チャット機能を使って、計算の間違いのクセを直したい方
- 過去問で解けそうな問題をピックアップ。効果的に解いて合格点を取りたい方