転塾 成績|どの塾に移っても上位2〜3人にいれば合格できる、という不都合な真実
転塾を検討している保護者の方に、まず一つ問いたい。塾を変えることで解決しようとしている問題は、本当に「塾の問題」なのか。
中学受験の相談を受けていると、「今の塾が合わないので転塾を考えています」という話が定期的に出てくる。カリキュラムが速すぎる、先生との相性が悪い、クラスが上がらない。理由は様々だが、僕が観察してきた限り、転塾で劇的に成績が上がったケースはそれほど多くない。一方で、どの塾にいても上位クラスをキープし続けた子は、ほぼ例外なく第一志望に届いている。
これは偶然ではない。
転塾しても成績が上がらない本当の理由
塾を変えると何が変わるか。教材が変わる。先生が変わる。通う校舎が変わる。では何が変わらないか。その子の学習習慣と、家庭での関わり方だ。
偏差値40台で低迷している原因の大半は、塾の外にある。授業の理解度ではなく、授業後の反復回数。テキストの難易度ではなく、同じ問題を何周するか。これらは塾を変えても変わらない。
もちろん、明らかに子どもに合っていないカリキュラムや、指導力に問題のある塾というのは存在する。そういう場合は転塾すべきだ。ただし「合格実績が豊富な大手に移れば伸びるはず」という発想は、少し危うい。
どの塾でもトップにいる子が強い、という構造的な話
僕がいつも保護者に伝えていることがある。どんな塾でも、上位2〜3人の子は行きたい学校に行ける、という話だ。
なぜか。塾側の動機の問題だ。合格実績を作りたい塾にとって、上位の子は「広告塔」だ。だから上位クラスの子には、無料の補講を組んだり、個別に声をかけたり、塾側から積極的に手を差し伸べる。偏差値が高い子を難関校に送り込むことが、塾の集客に直結するからだ。
逆に言えば、中位以下の子は、制度上は同じサービスを受けていても、実質的な熱量の配分で差をつけられている。これは教育倫理の話ではなく、ビジネス構造の話なので、善悪の問題ではない。ただ、現実として知っておく必要がある。
転塾を検討するより先に考えるべきことは、「今の塾でトップ2〜3人になれるか」だ。
上位クラスを維持するための戦略
ここで重要になるのが、クラスとカリキュラムのズレを意識することだ。
たとえば12人規模の小規模塾に転塾する場合、クラス分けがない可能性がある。1クラスの指導になると、どうしても平均値に向けた授業になる。上位の子には物足りなく、下位の子には消化不良になる。講師の意識は必然的に「ついてこられていない子」に向く。上位の子には「この問題やっておいて」と課題を渡すだけになりがちだ。
一方で規模が大きい塾では、クラス分けがある分、同じ志望校を目指す子と競える環境になる。ただしトップクラスに入れなければ、前述の「塾側の熱量」を引き出せない。
どちらの環境にいるにせよ、まず保護者がすべきことがある。転塾先の塾長や担当講師に、志望校とその本気度を明確に伝えることだ。
「最低でもこの学校に入れたい」「この学校より下は考えていない」と伝えた時の反応を見てほしい。自信を持って「うちで対応できます」と言えない塾、あるいは明らかに志望校の難易度を下げようとしてくる塾は、少なくともその目標に対しての実績か覚悟が不足している。どちらにしても、その塾でトップになっても得られるものが限られる可能性がある。
「転塾か、残留か」の判断基準
整理すると、転塾を検討すべき本当の条件はこういうことだ。
今の塾でどれだけ頑張ってもトップに近づけない、という場合ではなく、今の塾の指導体制が、目標校の合格に必要な内容をカバーしていない、という場合だ。
たとえば、使っているテキストの難易度が目標校の出題レベルと乖離している場合。担当講師が志望校の問題傾向を把握していない場合。これらは環境の問題なので、転塾で改善できる可能性がある。
一方で、「子どもが塾に行きたがらない」「友達がいない」「授業がつまらないと言っている」といった理由は、転塾より先に解決すべき別の問題だ。
転塾の是非を考える前に、現在の塾で上位に食い込めているかどうかを確認してほしい。上位にいれば、塾側が動いてくれる。上位でなければ、どこに移っても同じ構造の中に入るだけだ。
どこに移るにしても、最初にやること
転塾を決めた場合でも、決めていない場合でも、今すぐできることがある。
目標校への志望を、担当講師や塾長に口頭で明確に伝えることだ。「安田学園に入れたい」「青山学院を目指しています」と言った時の反応が、その塾の本気度を測る一番簡単な方法だ。
講師が自信なさげな顔をしたり、「まずは偏差値を上げてから考えましょう」とはぐらかすようなら、それはその塾がその目標に対して実績を持っていないか、指導の自信がないかのどちらかだ。
逆に「それなら今から何を準備すべきか」という話が具体的に出てくる塾は、信頼できる。
塾の質は、合格実績の数よりも、志望校を口にした時の講師の反応で測れる。転塾を検討している保護者の方は、次の体験授業で一度試してみてほしい。
中学受験は情報戦だ。最大の情報源は、塾の講師が何を言うかではなく、何を言わないかにある。
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