中学受験 算数 解くのが遅い|原因は全部処理速度〈算数の設計図⑫〉
うちの子、算数を解くのが遅くて。この相談を受けたとき、僕はほぼ例外なく同じ答えを返します。原因は処理速度です。理解力でも、才能でも、集中力でもない。そして処理速度は、中学受験に必要な能力の中で最も短期間で伸びます。
このシリーズでは、算数をひらめきに任せません。経営工学を学んだ講師が、解法を設計の問題として扱ったらどうなるか。その記録です。
遅い子は、理解していないのではない
解くのが遅い子を見て、まだ理解が浅いのだと考える保護者は多い。だから解説を増やし、理解を深めさせようとする。ですが、たいてい見当違いです。
遅い子の多くは、理解はしています。ただ、一つ一つの処理に時間がかかっている。計算に時間がかかる、図を描くのに迷う、条件の整理にてこずる。この積み重ねが、テスト全体を遅くしています。
理解の問題なら解説で治りますが、速度の問題は解説では治りません。訓練でしか治らない。ここを取り違えると、いくら時間をかけても速くなりません。
脳はスタミナで動いている
もう一つ、見落とされている事実があります。脳には体力があり、使えば減ります。
試験の前半で、頭の中だけで条件を保持し、暗算で処理し、迷いながら図を描く。この作業を続けると、後半で息切れします。試験の終盤で急にミスが増える子、時間が足りなくなる子は、たいてい前半で脳の体力を使い切っています。
器の容量には限りがあります。だから、頭の中でやることを減らす。紙に書く、図に逃がす、手順を固定して迷いをなくす。処理速度を上げるとは、実は脳の負荷を下げることと同じです。
基本問題が完璧な子が、一番速い
ここが本質です。速い子は、難しい問題を速く解いているのではありません。簡単な問題を、考えずに解いています。
計算、一行題、典型問題。これらが自動化されている子は、前半を一気に抜けて、後半に時間と体力を残せます。逆に、基本問題で一つずつ考えている子は、後半に何も残っていない。
だから、速くなりたいなら難問をやる必要はありません。基本問題を、考えなくても手が動く状態まで反復すること。それだけです。
2時間考えても解けない問題は、解けない
処理速度と関連して、もう一つ書いておきます。解けない問題に長く粘る習慣は、速度を殺します。
2時間考えて解けなかった問題は、3時間考えても解けません。今の学力から遠すぎるからです。そこに時間を使うより、解ける問題の速度を上げるほうが、点数は確実に伸びます。
粘ることが美徳だと教えられてきたお子さんには、これは受け入れにくいかもしれません。ですが受験に限っては、見切りの速さも実力です。
時間を計らない練習は、練習になっていない
速度を上げる方法は、驚くほど単純です。毎日10問、時間を計って解く。目標は1問1分未満。これを続けるだけです。
時間を計らずに解いている限り、速度は一切上がりません。負荷がかかっていないからです。逆に、時間を計った瞬間から、子どもの解き方は変わります。迷う時間を減らそうとし、手順を固めようとし、書き方を工夫し始める。
タイムを計るのを嫌がる子は、本番で時間が足りなくなります。練習で負荷を避けた分は、本番で必ず請求されます。
速くなると、精度も上がる
速さを求めるとミスが増えるのではないか。この心配は逆です。速い子のほうがミスが少ない。
手順が固まっているから迷わず、迷わないから判断ミスが減る。そして前半を速く抜けるから、見直しの時間が残る。速度と精度は、対立ではなく相関しています。
雑になるのは、速さを求めたからではなく、手順が固まらないまま急いだからです。順序を守った速さは、精度を落としません。
明日から親がすべき、非情な決断
もっとよく考えなさい、と言うのをやめてください。
かわりに、ストップウォッチを渡してください。そして毎日の計算練習で、タイムを記録してください。先週より速くなっているか、それだけを見る。
処理速度は、中学受験の能力の中で最も採点しやすく、最も短期で伸び、そして最も点数に直結します。理解を深める前に、まず速くしてください。理解は、速さの後からついてきます。
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