中学受験算数の家庭教師、「うちの子に合わせて」が危うい理由
中学受験の算数で家庭教師を選ぶとき、多くの保護者が「うちの子に合わせて教えてくれる先生」を探します。気持ちはよくわかります。ただ、僕はこの言葉を聞くたびに少し身構えます。合わせ方を間違えると、その日の満足度は上がっても、成績は上がりにくくなるからです。
中学受験算数の家庭教師選びで「合わせる」が危うくなる構造
子どもに合わせるというと、多くの場合「その子がやりやすい解き方で教える」ことを指します。つるかめ算は面積図が苦手だから表で、速さは比がわからないから公式で、図形は補助線が引けないから別の方法で。1問ずつ見れば、どれも親切な判断です。
ところが、これを積み重ねると何が起きるか。単元ごとに解き方の考え方がばらばらになり、算数が一本の体系になりません。今日の問題は解けても、来週の応用問題に今日の解き方がつながらない。授業は毎回わかりやすいのに、模試の点は動かない。場当たりの授業が生む、典型的な結果です。
和食屋で、フレンチとスペイン料理と中華が出てくる
たとえ話をします。和食の店に入ったら、ジャガイモはスペイン風、炒め物は中華風、スープはフレンチ風で出てきた。一皿ずつはおいしいかもしれません。でも、その店で何の腕が磨かれるのかはわかりません。作る側も、食べる側もです。
算数も同じです。一本の考え方で貫かれた解き方は、使うほどに磨かれていきます。比で考える子は、速さでも図形でも比を使い、使うたびに比の扱いがうまくなる。解き方がばらばらな子は、どの道具も中途半端なまま受験を迎えます。
その日のわかりやすさは、6年のわかりやすさではない
もう一つの落とし穴は、わかりやすさの基準です。かけ算を習う前の1年生には、4×2は4を2回描いて数えるのが一番わかりやすい。でも6年生にそれを教える先生はいません。
中学受験の講師が教えるのは、6年の入試で一番速く、一番確実な解き方です。4年生にとっては、少しやりにくく感じることもあります。そこで「この子にはまだ難しいから」と4年生向けのやり方に切り替えると、いずれ使わなくなる解き方を、わざわざ体に染み込ませることになります。しかも子どもは、一度慣れたやり方をなかなか手放しません。
幹は譲らず、枝葉は任せる
誤解してほしくないのですが、僕は子どもに合わせることそのものを否定していません。合わせていいところと、合わせてはいけないところがある、ということです。
譲ってはいけない幹は、解き方の型、図の描き方、ノートの取り方です。ここは学年が上がっても使い続けるものなので、最初から6年で使う形にそろえます。
一方で、進むペース、説明に使う言葉やたとえ、宿題の量、声のかけ方は、その子に合わせるべき枝葉です。むしろここは、どんどん合わせたほうがいい。
体験授業で確かめる3つの質問
家庭教師を選ぶときは、体験授業で次の3つを聞いてみてください。
この単元の解き方は、6年の入試問題でどうつながりますか
塾の解き方と違う場合、どちらに合わせますか
ノートの取り方や図の描き方に、決まった型はありますか
答えに迷いがなく、理由まで説明できる先生には、幹があります。反対に「お子さんのやりやすいほうで」としか返ってこない場合は、少し慎重に考えたほうがいいでしょう。塾と家庭教師で解き方が違うときの優先順位
塾に通いながら家庭教師をつける場合、よく起きるのが解き方の衝突です。塾では比で解き、家庭教師は線分図で解く。子どもは毎週、2つのやり方を行き来することになります。
僕の考えは明確です。原則として、塾の解き方に合わせます。子どもが週に何時間も過ごすのは塾の授業であり、テストも塾の解き方を前提に作られているからです。家庭教師の役割は、塾の解き方を補強することであって、別の体系を持ち込むことではありません。
ただし、塾の解き方がその子の志望校の出題と合っていない場合は、話が変わります。その判断ができることも、幹を持った講師の条件の一つです。
その日わかりやすい授業は、保護者の満足度を確実に上げます。子どもの偏差値を上げるかどうかは、また別の話です。毎回「今日もわかった」と笑顔で終わる授業が1年続いたのに、模試の数字が動かない。これは珍しい話ではありません。
中学受験算数の家庭教師を選ぶなら、合わせてくれるかではなく、何を合わせないかを見てください。そこに、その先生の指導の芯があります。
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