過不足算がわからない原因は「箱が余る」の一文にある

過不足算がわからない子の多くは、問題文の「箱が余る」「最後の1箱は3個しか入らない」という一文で止まっています。線分図や面積図の描き方以前に、条件の単位がそろっていないことに気づいていないのです。
過不足算そのものは、中学受験算数の中では素直な単元です。それでも模試で落とす子が後を絶たないのは、入試問題がわざと単位をずらしてくるからです。
過不足算がわからないのは「個」と「箱」が混ざっているから
基本の過不足算は、こういう形をしています。
何人かの子どもにみかんを配ります。1人に5個ずつ配ると8個余り、7個ずつ配ると4個足りません。子どもは何人いますか。
余りも不足も「個」で書かれています。1人あたりの差は 7 - 5 = 2個、全体の差は 8 + 4 = 12個、よって人数は 12 ÷ 2 = 6人。予習シリーズの基本問題レベルなら、ほとんどの子がここまでは解けます。
ところが、少しレベルの高い問題集や入試問題になると、こう変わります。
みかんを箱に入れます。1箱に8個ずつ入れると12個余り、1箱に10個ずつ入れると箱が4箱余ります。
片方は「個」、もう片方は「箱」。単位の違う2つの数を、そのまま足したり引いたりしようとした瞬間に、この問題は終わります。12 + 4 = 16 という、意味のない数を平然と書く子を、僕は何人も見てきました。
過不足算は「そろえてから比べる」が鉄則
やることは1つです。単位を「個」にそろえます。
10個ずつ入れると4箱余る、ということは、あと 10 × 4 = 40個あれば、その4箱もぴったり埋まったということです。つまり「40個足りない」と言いかえられます。
ここまで来れば基本問題と同じ形です。1箱あたりの差は 10 - 8 = 2個、全体の差は 12 + 40 = 52個、よって箱の数は 52 ÷ 2 = 26箱。みかんは 8 × 26 + 12 = 220個。検算すると、10個ずつなら 220 ÷ 10 = 22箱で、26箱のうち4箱が余る。合っています。
もう1つよく出る変化球が「最後の1箱は6個しか入らなかった」という書き方です。これは10個入るはずの箱に6個なので、4個足りないという意味です。「箱が余る」「最後の1箱は」「1人だけ3個になった」。表現は変わっても、中身はすべて「何個足りないか」への翻訳問題です。
模試で過不足算を落とさないための翻訳ルール
僕の生徒には、過不足算の問題を見たら式を書く前に、条件を2行に書き直すよう指示しています。
8個ずつ → 12個余る
10個ずつ → 40個足りない(4箱余る = 10 × 4)
この2行が「個」だけで書けたら、あとは差を差で割るだけです。書き直しにかかる時間は20秒ほど。ところが、この20秒を惜しんで頭の中で処理しようとする子に限って、2分かけて間違えます。
もう1つ、過不足算で見落とされがちなのが「余る」と「足りない」の組み合わせです。
片方が余り、片方が足りない → 全体の差は足し算
両方とも余る、または両方とも足りない → 全体の差は引き算
この区別を公式として丸暗記させるご家庭も多いのですが、僕はおすすめしません。数直線を1本引いて、ちょうどの位置からどちら側にどれだけずれているかを書けば、足すのか引くのかは見れば分かります。暗記した公式は、問題の形が少し変わっただけで使えなくなります。
両方とも余る過不足算で差がつく
5年後半から6年にかけて、過不足算はもう一段ひねられます。両方とも余る、あるいは両方とも足りないという形です。
画用紙を何人かに配ります。1人に6枚ずつ配ると20枚余り、1人に8枚ずつ配っても4枚余ります。
ここで反射的に 20 + 4 と足した子は、公式を「余りと不足は足す」とだけ覚えていた子です。両方とも余っているのですから、全体の差は 20 - 4 = 16枚。1人あたりの差は 8 - 6 = 2枚。人数は 16 ÷ 2 = 8人、画用紙は 6 × 8 + 20 = 68枚です。8枚ずつなら 64枚で4枚余る。合っています。
さらに入試では、この両方余りの形に「箱が余る」をかけ合わせてきます。単位の翻訳と、足すか引くかの判断を同時に要求されるわけです。1つずつなら解ける子が、2つ重なった瞬間に崩れる。模試の過不足算で正答率が急に下がる問題は、たいていこの二重構造になっています。
逆に言えば、翻訳してから数直線で判断する、という手順を持っている子にとっては、何が重なっても同じ作業のくり返しです。難問に見えるのは、手順を持たない子の側から見たときだけです。
明日から親がやめるべきこと
過不足算がわからないと言うお子さんに、過不足算の公式を唱えさせるのは今日で終わりにしてください。必要なのは公式の暗記ではなく、問題文の「箱」「人」「最後の1つ」を「個」に翻訳する作業です。
皮肉なことに、公式を完璧に覚えている子ほど、単位のずれた問題で盛大に転びます。覚えた公式が「とりあえず足せ」と命令してくるからです。公式に忠実な子は、出題者にとって実に扱いやすいお客様です。
過不足算は、単位をそろえてから比べる。このひと手間を習慣にすれば、模試で落とす単元から、確実に点を拾う単元に変わります。
こうした単元ごとのつまずきを答案から見つけ出して直す指導は、マナリンクの僕のプロフィールにある「中学受験プロによる予習シリーズ専門の算数サポート」で行っています。無料の相談も受け付けていますので、お子さんがどこで止まっているのか知りたい方はプロフィールをご覧ください。
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