【参考書レビュー】入門・英語長文問題精講(旺文社)
2025/2/13
今回は私が担当する授業でも扱ったことのある問題集をレビューしたいと思います。主として大学受験を念頭に置いて勉強する高校生を対象として書かれています。教材選びや勉強法の参考になれば幸いです。
今回紹介する問題集はこちらです。
(https://www.obunsha.co.jp/product/detail/034573)
この問題集は「入門」「基礎」「標準」のレベルに分かれた問題精講シリーズの入門編(ただし、「基礎」「標準」編とは著者が異なるので雰囲気はだいぶ違います)ということで、高1・高2の基礎固めや、高3の共通テスト〜私立中堅レベルの受験対策に有用と言えます。
とりわけ、学校で習った文法知識を活かしてある程度まとまった量の英文を丁寧に読む訓練をしたい人にオススメです(より短めの英文で、文の構造を把握することに重点を置いたトレーニングをしたい人は「英文問題精講」のシリーズがオススメです)。
入門編ということもあり、「できなくていい問題」「知らなくていい単語」がほとんどなく、「英文読解のポイント」として文法事項の詳細な解説が付いた良い問題集です。リスニング用の音源があるのもGood。
問題は私大の過去問から取ったものが多いですが、和訳・記述の問題も著者の判断で追加されているので、国公立大を受けようとしている人にとっても役に立つと思います。
解説編を熟読し、スラスラ読めるようになるまで反復して練習すれば、基本事項はほぼ身につくはずです。これを終えたら、後は自分が受験する大学や民間試験の過去問演習にシフトすれば良いと思います。
ただ欠点を挙げるとすれば、(こういうレベルを落とした問題集にありがちと言うか、仕方のないことではありますが)英文の内容がそれほど面白くない(有り体に言えば、当たり障りのないことばかりを言っていて薄っぺらい)ものが多いです(主観ですが)。語学の勉強として割り切れる人向け。
解説は概ね良質ですが、ごく一部、引っかかる所もありました。例を挙げると、3訂版の解説編17ページでit appears that...のitを「文脈上示される状況を漠然と指す」としていますが、これは一般には虚辞(expletive)のitと言われるもので、主語位置を埋めなければならないという文法上の要請から現れる、意味のない(あるいは、that節を指す)itなので、必ずしも正確な説明とは言えないと思います。
和訳もごく稀に間違っているようです。たとえば、演習問題18の第3段落最終文は自由間接話法であると見抜けなければいけません。
とは言え、いずれも受験レベルであればそれほど深く気にする必要はないでしょう。
最後に、この教材のオススメの学習法を記しておきます。この教材に限ったことでもないのですが、問題をただ「解き散らかす」だけでは高い学習効果は見込めません。英文はスルメイカのようなもので、噛めば噛むほど味が出るのです。よく問題集は3周やれと言われますが、ただ漫然と同じことを繰り返すだけではダメで、たとえば以下に示すように、周回ごとに目標を設定して勉強すると、より高い効果をあげることができます。
- 1週目はひとまず問題を解き、答え合わせをして解説を読み、文の構造や知らない単語を確認する。この段階で全てが身につくなどとは思わずに、ひとまず英文の内容を把握することを重点におく。
- 2週目は付属の音源を聴いてディクテーションをしてみる。できれば全文を書き取ることが望ましいが、忙しければ「英文読解のポイント」の部分のみ(問題編の末尾に“Let’s Try Listening!”というコーナーがあり、空所補充の形で書き込めるようになっている)でも良い。リスニング力がつくだけでなく、単語の綴りや文法事項なども改めて確認できるはず。何度も聴いて、シャドーイングなども行ってみると良い。
- 3週目は、「精講」の右ページにある和訳と語彙リストを見ながら、元の英文を復元してみる。スクリプトと見比べて答え合わせをすると、十中八九ノートが真っ赤に染まるが、そこでへこたれないこと。冠詞や前置詞などの細かい事項も含めて精緻にブラッシュアップするチャンスである。ここまでやれば、英文に含まれる全ての単語と文法が完璧に身に付くはず。
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初めまして。2023年度よりマナリンクで英語の講師をさせて頂いております、優生と申します。今回は初めてのブログ記事となりますので、簡単に自己紹介と講座のご案内をさせて頂きます。来歴と自己紹介東京大学卒。現在は東京大学大学院で言語学を専攻しています。言語学の中でも、とりわけ皆さんが「文法」と呼ぶものを...