11月、私は授業のアクセルを踏みます|生徒を信じるということ
11月が近づいてきました。あと9回日曜日をやれば「あけましておめでとうございます」です。で、すぐ共通テストです。
この時期になると、毎年、授業の雰囲気が少し変わります。
今期も多くの生徒を教えていますが、いまはほぼ全員が「やる気あり」の状態になっています。
もちろん、最初からそうだったわけではありません。
最初の授業では、お互いのことがよくわかりません。
私はその生徒がどんな人なのかわからない。
生徒も、私がどんな先生なのかわからない。
だから最初から、
「さあ、全力で行くぞ!」
とはしません。
まずは話します。
文章を一緒に読みます。
問題を一緒に解きます。
ときには勉強とは関係のない話もします。
何が得意なのか。
どこで止まるのか。
どういう言葉なら届くのか。
どのくらい負荷をかけても大丈夫なのか。
そして何より、この生徒は本当はどこまで行きたいのか。
それを探りながら授業をします。
私は、この期間を教師と生徒の「チューニング」だと考えています。
教師と生徒にも「チューニング」がある
楽器にはチューニングがあります。
音が合っていなければ、どれだけ上手に演奏してもきれいな音楽にはなりません。
授業も少し似ています。
教師が正しいことを教えているだけでは、うまくいかないことがあります。
教師がどんどん先へ行って、生徒を置いていってもダメ。
反対に、生徒に合わせることだけを考えて、いつまでも同じ場所にいてもダメ。
「この先生についていってみよう」
と生徒が思う。
同時に、
「この生徒なら、ここまで連れていける」
と私も思う。
この二つが重なったとき、チューニングが合ってきます。
今は、まさにそういう時期です。
だから、ここから私はアクセルを踏みます
チューニングが合ったら、私は授業のアクセルを踏みます。
感覚としては、生徒にこう言う感じです。
「ここから、いまのあなたの実力の3倍くらいの場所まで行くから、ついてきてね」
もちろん、本当に学力が一瞬で3倍になるという意味ではありません。
いま自分が「このくらいまでしかできない」と思っている場所より、ずっと先まで行ってみよう、という意味です。
現代文なら、正解できたところで終わらない。
「なぜ、この選択肢ではダメなの?」
「この一文と前の一文はどういう関係?」
「そもそも、この筆者は何を問題にしているの?」
と、さらに深く読む。
英語なら、和訳できたところで終わらない。
文の構造を取り、文と文の関係を取り、段落と段落の関係を取り、
「結局、この英文は何を言っているの?」
まで考える。
小論文なら、400字や800字を書けたところで終わらない。
「なぜそう考えるの?」
「その根拠は?」
「先行研究ではどう考えられている?」
「では、あなた自身の問いはどこにある?」
と、さらに掘っていく。
総合型選抜なら、きれいな志望理由書ができたところで終わらない。
「本当にあなたが知りたいことは何?」
まで行く。
ここからの授業は、少しずつ要求するものが高くなります。
高い要求をすることも、生徒への敬意だと思っています
私は、生徒を大切にすることと、生徒にやさしい課題だけを与えることは、同じではないと思っています。
もちろん、できないことを一方的に押しつけるのは違います。
生徒を置き去りにして教師だけが走るのも違います。
でも、
「この子には無理だろう」
と最初から低いところにゴールを設定することも、私はしたくありません。
その生徒と何か月も一緒に勉強して、
考え方を知って、
得意なところも苦手なところも知って、
「あ、この生徒なら行ける」
と思ったら、私は要求します。
もう一段深く考えてみよう。
もう一回読んでみよう。
その答えで本当にいいのか考えてみよう。
もっと上まで行けるよ。
そう言います。
それは、生徒の可能性を信じているからです。
「あなたなら、ここまで来られる」と考えることも、生徒への敬意だと思っています。
「ついてこい」ではなく、「ついてきてね」
ただ、私の感覚では、
「黙ってついてこい」
ではありません。
「ちょっと速くなるけど、ついてきてね」
です。
教師が少し前を走る。
生徒がついてくる。
少し苦しそうなら速度を調整する。
でも、できそうなら、またアクセルを踏む。
そして、気がついたら、
「最初はこんな問題、絶対できないと思っていた」
という場所に立っている。
私は、そういう授業が好きです。
最後は、私を追い越してほしい
そして、ここが大切です。
ずっと私の後ろを走ってもらいたいわけではありません。
以前、このブログでも書きましたが、私の授業のゴールのひとつは、
「先生がいなくてもできる」
ことです。
最初は私が、
「ここを見て」
「なぜ?」
「根拠はどこ?」
と声をかけます。
でも、そのうち生徒自身が、
「ここが対比ですね」
「この根拠はここです」
「先生、私はこう考えます」
と言い始める。
そうなったら、私が前を走る必要は少しずつなくなります。
最後は、自分で走ればいい。
むしろ、私が想定していた場所より先まで行ってくれたら、それが一番いい。
11月は、そういう時期です
春や夏から一緒に勉強してきた生徒たちとのチューニングが、だいぶ合ってきました。
生徒もやる気がある。
私も、それぞれの生徒がどこまで行けそうなのか、かなり見えてきた。
だから11月からは、少しアクセルを踏みます。
簡単なことばかりはやりません。
ときには、
「先生、それ難しすぎます」
と言われるかもしれません。
そのときは笑いながら、
「大丈夫。あなたなら行けると思って出してるから」
と言おうと思います。
生徒に敬意を払う。
だからこそ、その生徒がいまいる場所だけを見ない。
その少し先、さらにその先を見る。
そして、
「ここまで行ってみよう」
と誘う。
11月。
今年も、そういう授業をする時期になりました。
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