第一志望に挑戦するための中学受験データ活用|合格最低点と併願校の考え方
中学受験で志望校を考えるとき、多くのご家庭がまず確認するのが偏差値ではないでしょうか。
もちろん、偏差値は志望校を考えるうえで重要な指標です。しかし、実際の入試で合否を決めるのは偏差値ではありません。
最終的に必要なのは、入試本番でその学校が求める得点に届くことです。
そのため、志望校を考えるときには偏差値だけでなく、合格最低点や合格者平均点、受験者平均点、倍率などの入試データもあわせて確認しておくことが大切です。
【合格最低点を見ることの重要性】
過去問演習を始めたとき、まず確認しておきたい数字のひとつが合格最低点です。
たとえば、ある学校の合格最低点が300点満点中190点だったとします。
自分がその年度の過去問を解いて170点だったのであれば、「全然できなかった」と漠然と考えるのではなく、「この年度の合格最低点まではあと20点だった」と具体的に考えることができます。
あと20点なら、算数で大問をひとつ取る、国語の記述で数点積み上げる、理科や社会の知識問題の取りこぼしを減らす、といった形で対策を考えることができます。
反対に、複数年の過去問で合格最低点を安定して超えられるようになってきたのであれば、その学校に対して一定の手応えを持つことができます。
ただし、合格最低点は毎年同じではありません。問題が難しい年には下がることがありますし、易しい年には上がることがあります。そのため、前年の合格最低点をそのまま翌年の「必要点」と考えるのではなく、過去問の出来を判断するための重要な基準のひとつとして見ることが大切です。
偏差値だけを見ていると、「偏差値では届いている」、「偏差値では足りない」という話になりがちです。ですが、これでは具体的に何を改善すべきなのかということが見えてきません。
また、同じ偏差値帯の学校であっても、問題の相性の良し悪しによって、思ったよりも点数が取りやすい学校や、逆に思ったよりも点数が取れない学校などがあり得ます。
「偏差値ではこの学校は大丈夫なはずだったのに」、「偏差値では届かないと思っていたのに、実際には受かった!」などのずれが生じる理由のひとつとして、偏差値だけを見て、実際の入試問題や合格最低点などを十分に検討できていないことがあります。
逆に、合格最低点などを見ることで、「この年度ではあと何点必要だったのか」という、より具体的な受験勉強につなげることができますし、第一志望や併願校などについても、より実際の状況に沿った具体的な分析を行うことができます。
【平均点も重要な指標になる】
すべての学校が合格最低点を公表しているわけではありません。
その場合でも、合格者平均点や受験者平均点が分かれば、かなり重要な情報になります。
たとえば、合格者平均が220点、受験者平均が180点だったとします。
合格最低点そのものは分かりませんが、「合格した受験生は平均すると220点程度を取っていた」
「受験者全体では180点程度だった」という位置関係を見ることができます。
自分の過去問得点が225点であれば合格者平均付近、180点であれば受験者平均付近というように、自分の得点がどのあたりに位置しているのかを考える材料になります。
ただし、平均点だけから合格可能性そのものを判断することはできません。平均点では、受験者の得点がどのように分布していたのかまでは分からないからです。
そのため、「合格者平均を超えたから大丈夫」、「受験者平均付近だから難しい」と単純に判断するのではなく、ひとつの参考材料として見ることが大切です。
また、合格者平均点と受験者平均点が科目別に公表されている場合には、どの科目で両者の得点差が大きかったのかを見ることもできます。
それによって、「この年度では算数で合格者と受験者の平均点差が大きかった」などの特徴を捉えることができます。
このように、合格最低点が公表されていないから何も分からない、というわけではありません。公表されている数字を組み合わせて見ることが重要です。
【データは一年だけで判断しない】
入試データを見るときには、一年分だけで判断しないことも大切です。
合格最低点は毎年動きます。倍率も同じです。前年に人気が高かった学校の倍率が翌年に下がることもありますし、反対に前年の倍率が低かった学校に受験生が集まることもあります。
ですから、「去年の最低点が高かったから難しい学校だ」、「今年の倍率が低かったから安全な学校だ」などと単年度の数字だけで判断するのは避けた方が良いでしょう。
できれば3年から5年程度の推移を確認し、「例年どのくらいの得点で合格しているのか」、「倍率はどの程度で推移しているのか」を見ておくことが大切です。
また、倍率は重要なデータですが、倍率だけから合格の難しさや安全性を判断することはできません。それよりはむしろ、合格最低点の方がお子様の現状を知る上では重要な指標だと言えるかと思います。
受験では、ひとつの数字そのものだけでなく、その数字がどのように動いてきたのかを見ることに意味があります。
ただし、ここにも注意が必要です。年度によって、「募集区分が変わった」、「コース制が変更された」、「試験科目が変わった」、「満点が変わった」、「入試回が再編された」といった場合には、単純な比較ができないことがあります。
数年分を見ることは大切ですが、前提となる入試制度が同じかどうかもあわせて確認する必要があります。
【第一志望は簡単に動かさない】
ここまで数字の話をしてきましたが、中学受験は数字だけで決めるものでもありません。
とくに第一志望校は、できるだけ大切にしてほしいと思います。
第一志望は、単なる受験予定校のひとつではありません。
「あの学校に行きたい」という具体的な目標は、長い受験勉強を続けるうえで大きなモチベーションになることがあります。
「成績が少し下がった」、「一度の模試で判定が悪かった」、「合格可能性が思うように上がらない」など、こうしたことがあるたびに第一志望を変えてしまえば、子どもにとって目標そのものが揺らいでしまうことがあります。
たとえば、より上の大会への出場を目指して野球に励んでいる人が、「一度の試合に負けたから」、「ここ数試合の打率が悪いから」、「練習してもなかなか上手くなれない」ということがあるたびに、「上位の大会なんか、目指すのをやめよう」となるでしょうか。
このように考えた場合、第一志望を目指すことは簡単に変えるようなものではないのだとお分かりになるのではないかと思います。
もちろん、本人の意思、通学条件、学校への理解、健康状態、入試日程、家庭の事情などから、最終的に第一志望を見直した方がよい場合もあります。
また、学校見学などを通して、従来の第一志望よりも「こちらの学校の方が○○という点で自分に合う」、「この学校の○○が好きだから、ぜひこちらの学校に変えたい」など、前向きな変更の場合もあります。こうした変更まで避けた方が良いとは申しません。
ですが、たとえば「今回の模試の判定が悪かったから」という理由だけで、第一志望をすぐに動かす必要はありません。
第一志望は、「今の実力で確実に受かる学校」ではなく、「そこを目指して実力を伸ばしていく学校」でもあるからです。
大切な目標を持ち続けることには、子どもにとっても大きな意味があります。
【第一志望を守るために、併願校が重要になる】
第一志望を簡単に動かさないためにも、重要になるのが併願校です。
中学受験では、第一志望だけを見るのではなく、「どの学校を組み合わせれば、受験全体として無理のない形になるのか」を考える必要があります。
たとえば第一志望がかなり難しい学校であっても、適切な併願校を準備しておけば、第一志望に挑戦しやすくなります。
反対に、併願校を十分に考えていないと、「ここに落ちたら進学先がない」という不安が大きくなり、第一志望への挑戦そのものをあきらめざるを得なくなることがあります。
つまり、併願校は第一志望をあきらめるために選ぶ学校ではありません。
むしろ、第一志望に挑戦するために必要な学校と考えることができます。
ただし、併願校は単に偏差値が低い学校を選べばよいというものではありません。
実際に合格した場合に進学する可能性も考えて、「教育方針」、「校風」、「通学条件」、「学習環境」、「進学方針」なども含めて、「ここなら通ってみたい」と思える学校を選んでおくことが大切です。
こうした学校を選んでおけば、仮に第一志望ではない学校に通うことになった場合でも、前向きに中学生活を楽しみに新しい生活に臨むことができるはずです。
【併願校の過去問にも意味がある】
併願校を考えることには、過去問演習の面でも意味があります。
学校によって、「問題量が多い学校」、「記述問題が多い学校」、「算数で差がつきやすい学校」、「基本問題を正確に取ることが求められる学校」など、出題傾向はさまざまです。
そのため、併願校の過去問に取り組むことで、第一志望校だけでは経験できない形式の問題に触れられることもあります。
入試本番では、完全に予想通りの問題だけが出るわけではありません。
異なるタイプの問題に対応した経験は、受験全体の対応力を高める助けになることがあります。
ただし、併願校の数を増やしすぎて、第一志望の過去問対策が薄くなってしまっては本末転倒です。あくまで第一志望対策を中心に据えながら、必要な範囲で併願校の過去問にも取り組むという考え方で臨むのがよいでしょう。
【入試データを活用する意味】
第一志望を考えるときにも、併願校を考えるときにも、重要になるのが客観的な入試データです。
偏差値だけではなく、合格最低点、合格者平均点、受験者平均点、実質倍率、過去数年間の推移などを確認していくことで、その学校の入試がどのようなものなのかが少しずつ見えてきます。
たとえば、「偏差値では少し高いが、過去問では合格最低点付近まで取れている」という学校があるかもしれません。
反対に、「偏差値では十分届いているのに、過去問ではなかなか得点できず、合格最低点まで遠い」という学校もありえます。
中学受験では、偏差値と実際の入試問題との相性が完全に一致するわけではありません。
だからこそ、模試の偏差値と実際の入試データの両方を見ることが大切です。
【まとめ】
入試データを見る目的は、数字だけで子どもの可能性を決めることではありません。
むしろ、第一志望という大切な目標を簡単に動かさないためや、子どもがより自分の力を適した形で発揮できるようにするために、「現在どのくらいの位置にいるのか」、「あとどのくらい得点力を伸ばしたいのか」、「どの学校を併願すれば受験全体の安全性を高められるのか」、こうしたことを冷静に考えるためにデータを活用するのです。
第一志望は、受験勉強を続けるための大切な目標になり得ます。
そして併願校は、その第一志望に挑戦するための重要な支えになります。
感覚だけで受験校を決めるのではなく、偏差値、合格最低点、平均点、倍率、過去数年の推移などを確認しながら、「第一志望への挑戦」と「受験全体の安全性」を両立させていく。
そのために、時には入試データと向き合ってみるのも良いかと思います。
最後になりますが、入試データをまとめたブログを運営しています。
・「中学入試データ図鑑」(https://chugaku-juken-data.doorblog.jp/)
学校ごとに、偏差値だけでなく、倍率、合格最低点、合格者平均点、受験者平均点など、公表されている入試データをできる限り整理していますので、機会があればご覧ください。
(数値は正確にご紹介することを心がけていますが、本当に重要なデータはそれぞれ公式のデータを発表している発表元の情報を必ずご確認ください。)
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