世界地図が変わる? イコールアース図法の地図とメルカトル図法の違い
私たちが世界地図として目にすることの多い図法のひとつに、「メルカトル図法」があります。
学校の地理でもおなじみの図法ですが、2026年9月、国連総会で世界地図の表し方について興味深い決議が採択されました。
そこで注目されているのが、「イコールアース図法(Equal Earth projection)」です。
(※ 地図画像はイメージで、厳密ではない可能性があります。)
では、これまで広く使われてきたメルカトル図法と、イコールアース図法は何が違うのでしょうか。
【そもそも、地球をそのまま平面にはできない】
まず知っておきたいのは、「完全に正しい世界地図を作ることはできない」ということです。
地球は球体です。それを一枚の平らな紙の上に広げようとすれば、どこかに必ずゆがみが生まれます。
たとえば、みかんの皮を破らずにきれいな長方形に広げようとしても難しいでしょう。地図も同じです。
そのため地図には、
・角度を正しくする
・面積を正しくする
・ある地点からの距離を正しくする
・ある地点からの方位を正しくする
など、何を重視するかによってさまざまな図法があります。
「どの図法が一番正しいか」というより、「何のために使う地図なのか」が大切なのです。
【メルカトル図法は何が優れているのか】
メルカトル図法は、16世紀にゲラルドゥス・メルカトルが考案した図法です。
(※ 地図画像はイメージで、厳密ではない可能性があります。)
この地図の大きな特徴は、角度を正しく表せることです。
また、同じ方角に進む航路を地図上で直線として表しやすいため、航海に便利な地図として利用されてきました。
しかし、大きな弱点もあります。高緯度になるほど、面積が実際よりも大きく表されるのです。
代表的なのがグリーンランドです。一般的なメルカトル図法の世界地図を見ると、グリーンランドはアフリカ大陸にかなり近い大きさに見えます。ところが実際には、アフリカ大陸の面積はグリーンランドのおよそ14倍もあります。
また、南極もこの地図だと、とんでもなく大きくなってしまいますが、実際にはこれほど広大ではありません。
つまり、メルカトル図法の世界地図を見て受ける「国や大陸の大きさの感覚」は、実際の面積とはかなり違って見えることがあるのです。
【イコールアース図法とは?】
そこで注目されているのが、2018年に発表された「イコールアース図法」です。この地図の最大の特徴は「正積図法」であることです。
正積図法では、国や大陸どうしの面積の比率が正しく表されます。
そのためイコールアース図法で世界を見ると、メルカトル図法に慣れている人は、アフリカ大陸がずいぶん大きく感じられるかもしれません。
しかし、アフリカが大きくされたわけではありません。イコールアース図法では、実際の面積の比率が正しく表されているのです。
逆に、メルカトル図法で非常に大きく見えていたグリーンランドなどの高緯度地域は、かなり小さく見えるようになります。
【メルカトル図法は「間違った地図」なのか】
ここで注意したいことがあります。
今回の動きを、「今まで使っていたメルカトル図法は間違っていた」と理解するのは適切ではありません。
メルカトル図法には、角度を正しく表せるという大きな長所があります。
一方、イコールアース図法は面積を正しく比較することに優れています。
つまり、
○ メルカトル図法=角度を重視する地図
○ イコールアース図法=面積を重視する地図
というように、それぞれ得意なことが違うのです。
球体である地球を平面に描く以上、すべての条件を同時に完全に正しくすることはできません。
【なぜ今、世界地図が話題になっているのか】
2026年9月4日、国連総会では、世界各地域、とりわけアフリカなどの面積をより適切に表すため、イコールアース図法などの正積図法の利用を促す決議が採択されました。
これは「今後、メルカトル図法を使ってはいけない」という決定ではありません。
国連の議論でも、メルカトル図法が航海などで果たしてきた役割は認められています。
また、特定のひとつの図法だけをすべての用途で使うよう求めているわけでもありません。
大切なのは、目的を考えずにメルカトル図法を「世界の大きさをそのまま表した地図」のように受け取らないことです。一部の地図だけが正しいと思われると、それが当たり前のように受け取られてしまい、誤った理解につながってしまうかもしれません。
特に世界各国や大陸の面積を比較するときには、どの図法を使っているのかを意識する必要があります。
【地図を見るときに「何が正しいのか」を考えてみよう】
中学受験や中学校の地理では、「メルカトル図法は角度が正しい」、「正積図法は面積が正しい」といった知識を覚えることがあります。
もちろん、こうした知識は大切です。
しかし今回のニュースは、その一歩先を考えるよい材料でもあります。
「この地図は何を正しく表しているのだろう?」
「逆に、何がゆがんでいるのだろう?」
「なぜこの場面では、この地図が使われているのだろう?」
そんな疑問を持って地図を見ると、地理は単なる暗記科目ではなくなります。
私たちが当たり前だと思って見ている一枚の世界地図にも、実は「世界をどのように表すか」という工夫と選択があります。
メルカトル図法とイコールアース図法の違いや、今回の国連における決定は、地図についてあらためて考える格好の題材なのかもしれません。
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