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「教えられる」と「できるようにする」は、まったく別のスキルだ

2026/6/5

小4の内容なら自分で教えられる。でも小5になったら追いつけなくなって、小6からお願いします——そういうご家庭と、僕はこれまで何度も面談をしてきた。

気持ちはよくわかる。子供が困っているのを見ていられないし、塾に丸投げするより親が関わった方が子供のためになると信じている。その誠実さ自体は否定しない。

ただ、率直に言う。

「教えられる」と「できるようにする」は、まったく別のスキルだ。

この違いを理解しないまま小4・小5と家庭で進めると、小6からプロが関わっても「修正するための時間」が先に消えていく。受験本番に間に合わないケースが、ここから生まれる。

親が「教えた」とき、何が起きているか

解き方を説明することはできる。問題文の意味を噛み砕くことも、図を描いて見せることも、計算の手順を教えることも——これらは多くの親御さんが実際にやれている。

でも「教えた」直後に子供が「わかった」と言っても、翌週のテストで同じ問題が解けない、ということが頻繁に起きる。

これはなぜか。

「わかった」と「できる」の間には、相当な距離がある。さらに「できる」と「速く正確にできる」の間にも距離がある。そして「速く正確にできる」と「中学受験の難問で使える」の間には、もうひとつ崖がある。

親が家庭で届けられるのは、多くの場合「教えた(知識を伝えた)」の段階までだ。問題はその先にある。

市販教材・塾教材の「不完全さ」という現実

もうひとつ指摘しておきたいのが、教材の問題だ。

書店で売っている参考書にせよ、大手塾のテキストにせよ、あれらには様々な制約がかかっている。「方程式は使わない」「面積図に統一する」「解説のページ数は限られている」——そういった制約の中で作られているから、図が省略されていたり、解説が端折られていたりする。

それ自体は仕方のないことだ。あの分量に全員のための完全な解説を詰め込むのは物理的に不可能だし、使う解法を統一しないと教材として成立しない。

問題は、その教材をそのまま教え込まれた子供の解き方が「実践的ではない」ことが多い、という点だ。

面積図で習ったから面積図しか使えない。方程式を知らないから、方程式を使えば一瞬で終わる問題を、遠回りな手順で解いている。教材の制約が、そのまま子供の思考の制約になる。

これに加えて小5・小6になると「癖」が完成している。今まで使ってきた解き方や考え方に習熟しているから、別の方法を示されても頭ではわかっていても体がついてこない。感情的な抵抗もある。

大人でも同じだろう。長年染み付いたやり方を途中で変えるのがどれほど難しいか。子供ならなおさらだ。

方程式問題という、よくある過ちについて

ここで少し寄り道する。

「方程式で解けば簡単なので、子供に教えています」というお父さん・お母さんが一定数いる。

落ち着いて考えてほしい。あなたが方程式を習得するのに、何年かかったか。

公立中学校では中1から中3の3年間をかけて、方程式を段階的に学ぶ。その3年間の積み上げがあるから、あなたは今それを「使いこなせている」。さらにその上に高校数学があるから、より深く理解できている。

その前提知識ゼロの小学生に「x=□とおくんだよ」と言って、さあ解いてごらんと言っても、解けるわけがない。3年分の学習がどこにもないのだから。

「教えることはできる」と「できるようにすることができる」は別だ——この話を方程式でもう一度確認してほしい。

指導の段階を分解する

整理する。子供が算数の問題を「解けるようになる」までには、少なくとも以下の段階がある。

  • 知識を伝える(概念の説明)

  • 解き方を教える(手順の提示)

  • 解き方をできるようにする(反復と定着)

  • 効率的な解き方をできるようにする(速度と精度の向上)

  • 中学受験の難問を解けるようにする(応用と変形への対応)

親御さんが家庭で担えるのは、現実的には上の2段階、良くて3段階目の入り口まで、というケースが多い。

そしてプロの仕事が本当に必要になるのは、3段階目以降だ。定着させ、速くさせ、難問に対応できる状態まで引き上げる——ここが技術の見せ所であり、同時に時間のかかる工程でもある。

「小6からでは間に合わない」の正体

もう一度、最初の話に戻る。

小4・小5の2年間を家庭で進めて、小6から外部に委ねた場合、何が起きるか。

受験まで残り1年を切った状態で、プロはまず「修正」に時間を使わなければならない。習い方の癖、定着していない解き方、使い物にならない面積図への固執、途中で放棄された単元——これらをリセットしながら新しい積み上げをするのは、単純に時間の二重投資だ。

小4から外部に任せた子供と比べると、小6からの子供は初期状態でビハインドを負っている。勉強量や理解力の問題ではなく、「修正コスト」の問題として。

これが「間に合わない」の正体だ。

何を家庭でやり、何を外部に任せるか

では、親御さんには何もできないのか。そんなことはない。

家庭でできることは、家庭でやればいい。具体的には、計算練習の習慣管理、日々の勉強時間の確保、問題を解かせる環境づくりなどだ。これらは外部の講師には担いにくい部分でもある。

ただし「解き方を教える」「理解させる」「定着させる」「難問を解けるようにする」という工程については、自分がどこまで担えるかを冷静に評価してほしい。

「教えた」と「できるようにした」を混同したまま進めると、子供が気づかないまま時間を使い切る。

親の誠実さが、子供の受験を圧迫するケースがある。これが今日、一番言いたかったことだ。

明日から考えてほしいこと

お子さんの算数を見るとき、次の問いを立ててみてほしい。

いま自分がやっているのは「教えている」のか、それとも「できるようにしている」のか。

「教えた」のに「できない」のであれば、その差分をどこで埋めるのか。

その差分に、受験本番は間に合っているか。

感情論ではなく、これは純粋に戦略の話だ。自分が担える工程と担えない工程を切り分けて、外部資源を正しいタイミングで投入する——それが合格率を上げる唯一の合理的な行動になる。

熱心に教えてきた親御さんが、最後にそれを一番認めにくいのは知っている。でも、認めた方が子供のためになる。

個別に受験戦略を組みたい方はこちらから。お子さんの現状と目標をうかがった上で、何をどの順番で、誰が担うべきかを一緒に整理します。

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