算数がわからない時、説明しません〈算数の設計図②〉
算数の授業で、お子さんが分からないと言ったとき。多くの先生は、そこで説明を始めます。僕はしません。かわりに、似たような問題を何問も見せます。今回は、その理由と具体的なやり方を書きます。
このシリーズでは、算数をひらめきに任せません。経営工学を学んだ講師が、解法を設計の問題として扱ったらどうなるか。その記録です。
三角形の面積が分からない子に、公式を説明しない
具体例から始めます。三角形の面積の求め方が分かっていない子がいたとします。
普通なら、底辺かける高さわる2だよ、と説明します。僕はそうしません。かわりに、三角形をいくつも描いて、こう聞きます。これとこれをかけたら、この面積になるよね。じゃあ、これは。これは。これはどう。
形を変え、向きを変え、数字を変えて、何問も続けます。すると、あるところで子どもが気づきます。あ、そこの2つをかけて半分にすればいいんだ、と。
気づいた瞬間に、僕は何も言っていません。本人が見つけたルールです。
子どもは、演繹より帰納で理解する
なぜこの方法を取るのか。理由があります。
大人は、原則を聞いてから個別の事例に当てはめることができます。演繹的な思考です。ところが小学生は、この方向がまだ弱い。公式を先に言われても、目の前の問題にどう当てはめるか分からない。
逆に、たくさんの事例を見せられると、その中から共通するルールを自分で取り出せます。帰納的な理解です。こちらは子どものほうが得意なくらいです。
だから僕は、原則を説明しません。見本を大量に見せます。子どもの得意な方向から入るほうが、速いからです。
説明された知識は、忘れます
もう一つの理由は、定着の差です。
説明されて理解した公式は、聞いた直後は分かった気がします。ですが、それは他人の言葉です。1週間後には抜けています。
一方、10問の見本から自分で取り出したルールは、本人の発見です。忘れにくいし、少し形が変わった問題にも応用できます。ルールそのものではなく、ルールを見つけた過程を覚えているからです。
だから、分からないと言われたときこそ、説明したい気持ちをこらえます。
ただし、最初の基礎だけは細かくやります
ここは誤解されやすいので、はっきり書きます。何もかも生徒任せにしているわけではありません。
新しい単元の最初、基礎を入れる場面では、僕は一緒に手を動かします。しかも、かなり細かくやります。
線分図の線をどこから引くか。長さの比をどう反映させるか。数字をどの位置に書くか。同じ長さには同じ印をつける。分かっている数は実線、分からない数は点線。ここは少しずらして書く。答えはこう書く。
こうした作法を、例題で一緒に書きながら徹底します。ここを曖昧にすると、後で必ず崩れるからです。書き方が汚い子は、思考も混線します。
基礎の型は細かく。応用の理解は本人に。この使い分けです。
例題4問のあとに類題4問、はやりません
教材の進め方にも、こだわりがあります。
よくあるのは、例題を4問続けて解説し、そのあと類題を4問解かせる形式です。僕はこれをやりません。
例題1問、類題1問。また例題1問、類題1問。この小刻みの繰り返しにします。
理由は単純で、4問も続けて説明を聞いた子は、最初の1問を忘れているからです。1問聞いて、すぐ自分でやる。この間隔が短いほど定着します。しかも、できたかどうかがその場で分かるので、つまずいた瞬間に止められます。
まとめて教えてまとめて解かせると、どこで分からなくなったかが分からなくなります。
解かせて、少しだけ直す
基礎が入ったら、あとは解かせます。ここからは口を出しません。
やるのは、少しだけの訂正です。全部を直すと、本人の考え方まで壊してしまう。決定的に間違っている部分だけを指摘し、あとは残します。
そして分からないと言われたら、また似た問題を並べます。説明には戻りません。
明日から親がすべき、非情な決断
お子さんが分からないと言ったとき、説明したくなる気持ちをこらえてください。
かわりに、同じタイプの問題をもう3問、解かせてみてください。教材から探してもいいし、数字を変えるだけでも構いません。3問目あたりで、子どもの手が動き始めることがあります。
説明は、教える側の満足です。子どもが自分で見つけたものだけが、本番で使えます。
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