予習シリーズの解説を写すだけ勉強が成績を止める理由
予習シリーズの解説を写すだけの勉強は、いちばん楽で、いちばん成績に効きません。
お子さんのノートに、解説と同じ文章がきれいに並んでいて、赤ペンで丸もついている。親としては安心します。ところが組分けテストになると、また同じような問題で落とす。この組み合わせに心当たりがあるなら、原因は努力の量ではなく、勉強の形にあります。
なぜ解説を写すと、頭に何も残らないのか
予習シリーズの解説は、文章になっています。つまり、写しやすい。ノートに写して、答えが合っているかを見て、丸かバツをつける。作業として完結するので、やった気分にはなれます。
しかし、あの解説は、すでにやり込んだ人が自分用に残すメモ書きに近いものです。式の一行一行の間には、本来、本人が悩んで通り抜けるはずの道があります。その道を歩かずに、通り抜けた後の足跡だけを写している状態です。
小5くらいの子が、よく分からないまま「とりあえず写しておこう」と手を動かす。ここで厄介なのは、本人にも親にも、勉強しているように見えてしまうことです。授業中に先生が「1問前でこうやったよね」と確認して、はい分かりましたと答えたのに、ほとんど同じ問題でまた分かりませんと言う。これも、写す勉強の典型的な副作用です。分かったのは、その場の説明であって、自分の手が覚えたわけではないからです。
算数の復習は、漢字テストと同じ発想でいい
では何をするのか。僕が勧めるのは、算数の復習を、漢字の勉強と同じ発想に寄せることです。
漢字を覚えるとき、書き順の意味を深く考える子はあまりいません。覚えるまで書いて、テストで確認する。それだけです。
週テストや復習テストの範囲くらいまでなら、算数もこれで通用します。この問題はこう解く、と見た瞬間に手が動く。理解というより、覚えているか覚えていないかの確認になるところまでやり込む。ここまで到達すると、点数は動き始めます。
偏差値が伸びないお子さんの多くは、実力がないのではなく、やり込みが足りません。ヒントをもらえば、ああそうかと言ってすらすら解ける。でも自力で完璧に解けるまでは繰り返していない。この状態を放置すると、テストのたびに点数が上下して、親子で振り回されます。
意味は後でいい。式の丸暗記は、むしろ武器になる
ここで、真面目な保護者ほど引っかかるのが、意味も分からず式を丸暗記させていいのか、という点です。
僕の答えは、いいです。理由は単純で、少なくとも式を覚えているからです。覚えているものがあれば、後から「この式はこういう意味なんだよ」と説明したときに、頭の中で結びつきます。覚えているものを少し直して、アレンジすることもできます。
反対に、何も覚えていない子には、どんなに良い説明も着地する場所がありません。順番は、反復が先、意味が後。この順番にしたほうが、遠回りに見えて結果は早いことが多いです。
親が算数を教えない、という有効な分業
もう一つ、現場で何度も見てきたことがあります。
親御さんが気合を入れて、ネットで見つけた裏技を子どもに教える。その問題は確かに解けるようになります。でも、その裏技が使えるのは、その1問だけ。別の問題になると、もう通用しません。
さらに僕のような講師は、プリントの中に、絶対に落とせない問題だけを選んで残しています。親御さんが良かれと思って別の解き方を教えると、そこが崩れることもあります。
だから、算数が苦手な保護者のほうが、実はやりやすいと感じることさえあります。やることは三つだけです。
・丸をつける。
・バツならやり直させる。
・解説は、講師が出したものだけを見る。
教えなくていい。管理だけしてください。これが、家庭学習で親が果たす最も有効な役割です。
今日のプリント、明日のプリント、を作る
では具体的に、何を反復するのか。
僕が使うのは、演習問題の数ページを、毎日同じ形で用意するやり方です。今日の分、明日の分と、日付ごとにプリントを分けておく。お子さんが自分で「どこをやるか」を選ぶ余地をなくします。
得意な単元の復習を飛ばして、苦手だけをやる。理屈ではそのほうが効率的です。しかし自己判断に任せると、苦手から逃げて、得意な問題ばかり解く子が出てきます。選択の余地を消して、全部やる。ストレスは増えますが、量が増えて、力がつきやすくなります。
順番を入れ替えたプリントを混ぜるのも効果的です。問題の順番で答えを覚えてしまう子がいるからです。シャッフルされても解ければ、それが本物の定着です。
親子で消耗する前に、決めてしまう
最後に、少し意地の悪いことを言います。
勉強は自分から進んでやるものだ、という考えは、大人にとっては正しい。ただ、小学生が受験を自分ごとにして、自発的に進めることは、まずありません。だから、やることを全部決めて、やるまで言い続ける親御さんのやり方は、間違っていません。成績が上がって、本人が「もう覚えたからいい」と言い出したときに、少しずつ手を離せばいいのです。
今日からできる非情な決断はこれです。解説を写す時間をゼロにする。その時間を、同じプリントをもう一周する時間に回す。
解説を写して満足しているうちは、その時間は、成績にとってほぼ空白です。空白に丸をつけて安心するのは、そろそろ終わりにしましょう。
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