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東大英語を読もう(2023年) 4

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2023/3/20

英語長文の読解方法について、ベテラン講師の視点から説明していこう。今日用いるのは東大の問題だ。東大は、我が国では一、二を争う最高峰だが、その英文には素直なものが多く、問題の出題のされ方も正統派で、決してひねくれたところはない。しかしながら、正確に読み解かない限り、真の理解には達するのが難しい、といった英文だ。これを解説していこうかと思う。なお著作権の問題もありそうなので、ここでは英文は記さない。下記リンクから問題文を入手されたし。受験生諸君、頑張って見られよ!


https://www.yomiuri.co.jp/nyushi/sokuho/k_mondaitokaitou/tokyo/mondai/img/tokyo_zenki_eigo_mon.pdf


では、私の解説を読みながら、令和5年の東大の英語の問題を見てみよう。大問1のIn the 2010sから始まる長文問題だ。第4パラグラフへと向かおう。


・列挙

明瞭化の原則に従って、第3パラグラフで述べられた「余暇が増えたにもかかわらず、そうは感じられないいくつかの理由がある」とあるが、その理由が第4パラグラフから明瞭化されていく。先に第5パラグラフの冒頭を見ると、Nextとある。そして第6パラグラフの冒頭にはAdd to this「これに加える」とある。いずれも列挙の記号だ。列挙とは、1つ1つ理由なり何なりを挙げていくことをいう。ということは、第4パラグラフから列挙が始まっているのだ。ふつう、最初に列挙する場合にはFirstなどを使うが、ここではそういった副詞がないにもかかわらずに列挙が始められているのだ。そこを見抜くと、パラグラフ相互の関係が理解できるだろう。


・精読の試み

では、ここでは何が列挙されているかといえば、余暇(ここではfree timeを「余暇」と訳している)があってもないように感じられる理由だ。第4パラグラフの第1文では「寿命は伸びたが、それ以上に購買力が圧倒的に伸びた」とある。そのために余暇の増加が感じられないのだ。どういうことか。それが次の文だ。少し難しい英文なので、精読をしてみよう。


It makes it difficult to stuff all the things that we want and can now afford into the growing, but increasingly relatively much more limited, time that we have available to purchase and to enjoy them over our lifetimes,…


冒頭のItは前文内容の「寿命は伸びてもそれ以上に購買力が伸びたこと」を表す。以下のmakes it difficult to stuff A into Bは仮主語構文だ。Stuff A into Bは「AをBの中へ詰め込む」という意味で、全体としては「寿命が延びてもそれ以上に購買力が伸びたので、AをBに詰め込むことは難しい」となる(無生物主語構文的に解釈した)。


Aにはall the things (that we want and can now afford)「我々が欲しいと思い、そしていまでは購入もできるものすべて」がある。Bにはthe growing, but increasingly relatively much more limited, timeが相当する。が、これはちょっとわかりにくい。この形は「形容詞① but 形容詞②+名詞」というもので、ざっと「①だが、しかし②でもある名詞」となる。つまり、「増えているが、しかし(伸びた購買力と)比べればますます限られている時間」となるだろうか。時間(=寿命)は増えているが、同時に購買力の伸びと比べればごく限られてもいるわけで、そこにある種の意外性や矛盾、つまり皮肉がある。ちなみにtime以下のthat節は関係代名詞節だ。We have available「我々が利用できる」であり、to purchase and enjoy themは「them(=all the things that we want and can now afford)を購入して享受するために」となり、that節全体としては「欲しいものを購入し生涯ずっと享受するために我々が利用できる時間」となり、そのような時間(=寿命、余暇。つまり、free time[第2パラグラフ]→life spans→time[どちらも第3パラグラフ]という言い換えだ)は「増えているが、しかし(伸びた購買力と)比べればいっそう限られている(=少ない)」のだ。


要するに、寿命が伸び我々の使える余暇は増えているが、それでも購買力の増加と比べれば微々たるものであり、この矛盾によって、我々は余暇が増えたにもかかわらず、そうとはどうにも感じられないのだ。以下は訳例だが、少し意訳してみた。


It makes it difficult to stuff all the things that we want and can now afford into the growing, but increasingly relatively much more limited, time that we have available to purchase and to enjoy them over our lifetimes,…

「我々が欲しいと思っていて、しかもいまでは買えるものすべてを、増えてはいるが(購買力の伸びと)比べればずっと限られた余暇、つまり我々が欲しい物すべてを購入して一生享受するために利用できる時間へと詰め込むのは難しいのだ。」


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