英語

東大の和訳をしよう(2023年)2

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2023/3/26

大問4のBを訳してみよう。著作権の問題からここに英文の全部は挙げないが、以下のURLで見つけられる。ただし、ここでは完全な訳は示さない。受験生諸君、各自まずは自分なりに頑張ってみよう。

https://www.yomiuri.co.jp/nyushi/sokuho/k_mondaitokaitou/tokyo/mondai/img/tokyo_zenki_eigo_mon.pdf


次は下線部(イ)だ。

英文は「旧情報から新情報へ」と流れるのが基本だ。だから主語のThe power of sugar to soothe「砂糖の和らげる力」は旧情報であって前出内容を表すと考えられ、from the very beginning「まさに初めから(=出生した瞬間から)」は新情報となって、直後のカンマ以降で詳しく説明されることになる〔明瞭化の原則〕。さて、sootheは何を和らげるのかと言えば、文頭の主語The power of sugar to sootheの一部であって旧情報なので、前出内容につながっている。直前のwhereas以下を見れば、suggest (that) SVとあって、重要情報はthat以下にあるので〔重要情報のthat節〕、その意味をとれば、「チョコレート・ケーキはフラれた後で丸ごと食べたくなる代物」とある。チョコレート・ケーキは甘い砂糖が使われているので、下線部(イ)のthe power of sugarとも内容的に合致する。だからsootheはフラれた時のような悲しい感情を和らげるのだ、と知れる。


下線部(イ)のカンマ以下のwith句は付帯状況だ。Demonstrate[V] effects[O]で「効果を示す」と訳せるのでeffects demonstrated in~「~で示された効果」といった意味となり、ざっと「生後一日の乳幼児にさえも効果が示される」といった意味だろう(なお、those+後置修飾は「~人々」となる。かの有名なthose present「出席者たち」などがある。ここでは、as young as one day oldが後置修飾に相当する)。そして付帯状況は一種の分詞構文と考えられ、文末の分詞構文も付帯状況も文の補足説明の役割がある。ここでは、「砂糖の感情を和らげる力は出生時から存在する」の補足説明になる。


なお、「as ~ as 数字」という言い回しは、ふつうは数字の主観的な大きさ(あるいは小ささ)を強調するものだ。例えば、I've got as much as 10,000 yen with me now!とあれば、「いまは1万円も持ってるよ!」となって、話し手の主観にとって1万円がかなりデカい金額だということが示され、as much as~が「~も」と訳される。大金持ちならば、1万円はたいしたことのない額となるので、I've got as little as 10,000 yen with me now!「いまは1万円しか持ってないよ!」となり、as little as~「~しか~ない」となる。さて、本文ではas young as one day oldとなり、youngやone day oldが小ささを表すので、全体的にはas little as~と同様にいかに小さいか、いかに幼いか、を強調するものとなっており、「生後一日の幼さでもうすでに」といったイメージとなる。


付言すれば、「旧情報」や「新情報」は便宜上の言い回しでもある。例えば、from the very beginning「まさに(人生の)初めから(=出生した瞬間から)」は、第1パラグラフのRight from the start「まさに初めから」の言い換えとなっており、その意味では「新」情報ではなくて旧情報なので、本来ならば文の先頭あたりに置かれてもおかしくはない。しかし第2パラグラフでは「出生した瞬間」へ言及はなく、読み手の脳裏からもそのことはほぼ抹消されたとみなされるので、改めて「新」情報として扱われるのだ。(困ったことに、「旧情報」や「新情報」といった言葉遣いは文字通りに理解してはならないのだ。これ以上はここでは詳しくは言わない。知りたい方は私の授業を以下略)


下線部(イ)を自由かつ柔軟に訳せば、「砂糖の悲しさなどの感情を和らげ癒す力は、私たちが出生した瞬間からすでに存在しており、その効果は生れてまだ一日しか経っていない乳幼児にすらも、示されるのだ」となろうか。

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