相対主義について —プロタゴラスとマハーヴィーラ
2021/6/18
相対主義といえば、古代ギリシアのプロタゴラスが有名です。彼は「人間は万物の尺度である」と言いました。ここでいう人間とは個人個人の感覚を指し、尺度とは善悪の判断基準をいいます。つまり、何が善であり何が悪であるのかは、すべて個人個人の感覚が判断基準である、という意味になります。
例えば、冷風です。冷風が善であるのか、あるいは悪であるのかは、個人個人によって異なります。病人にとっては、病気を悪化させるので悪になりますが、運動を終えたばかりのアスリートにとっては、体を心地よくするので善となるのです。
善悪は万人にとって共通なのではなくて、個人個人によって異なるのです。このような考え方を「相対主義」といいます。このような考え方は、高校倫理では少数派の見解でありますが、他には古代インドのジャイナ教の創始者マハーヴィーラも採用しています。
マハーヴィーラは、物事にはさまざまな側面があり、人間にはそのすべての側面は知り得ないので、ある物事について判断するならば、「ある観点からすると」という言葉を付け加えるといい、と主張します。
この考え方を「冷風」に応用すると、次のようになります。冷風にはさまざまな側面があり、人間にはそのすべての側面を知ることができません。そこで、観点をしぼってみます。すると、次のようになります。
冷風は病人の観点からすると病気を悪化させるから悪であり、運動を終えたアスリートの観点からすると、体を心地よく冷やしてくれるから善である、と。
もちろん、プロタゴラスとマハーヴィーラは、その思想体系も文化的背景もまったく異なります。プロタゴラスは古代ギリシアのソフィストで、ソクラテスの思想的ライバルです。マハーヴィーラは古代インドの自由思想家の一人であり、ブッダの思想的ライバルになります。しかし、両者には相対主義的視点といった共通点があったのです。
思想の比較って、面白いですね。私の倫理の授業では、このような比較思想の視点も時に盛り込んでいきます。皆さんのご参加をお待ちしておりますm(__)m
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