【高校物理】スペースシャトルはどこから飛ぶの?|授業中の雑談から広がった物理の話
2025/5/24
授業中のちょっとした雑談から
先日、物理の授業をしているときに、生徒がふと
「ロケットって、どこからでも飛ばせるんですか?」
と尋ねてきました。
そのとき扱っていたのは「円運動」の単元で、ちょうど“遠心力”の話をしていたタイミングでした。
せっかくなので、授業の枠を少し飛び出して「スペースシャトルの発射地点」について雑談のように話してみたんです。
意外かもしれませんが、スペースシャトルやロケットの打ち上げには「地球の自転」が深く関わっています。
今日はその理由について、ちょっとだけご紹介してみようと思います。
地球の自転と遠心力の関係
私たちの住んでいる地球は、24時間で1回転しています。
地球の中心を軸にぐるぐると回っているわけですが、その回転スピード、実は赤道上では時速約1700kmにもなるんです。
この「回っていること」によって、私たちには目に見えない遠心力が働いています。
遠心力というのは、回転している物体が“外に逃げようとする力”のことですね。
赤道ではこの遠心力がもっとも大きくなります。
つまり、赤道に近い場所では、物体を地球から“振りほどく”ための助けを自然に得られるということになります。
宇宙開発も「地球の自転」を利用している
スペースシャトルを宇宙に打ち上げるときには、ものすごいスピードが必要です。
地球の引力を振り切るには、秒速8km以上(時速で約28,000km)のスピードが必要と言われています。
このスピードをすべてロケットのエンジンだけでまかなうのは、とても大変です。
そこで役立つのが、地球の自転によってすでに得られているスピード。
赤道近くで打ち上げれば、スタート時点で時速1700km分、すでに“助走”がついているわけです。
だから、スペースシャトルやロケットは、少しでも赤道に近い場所から発射するのが理にかなっているんです。
世界中の発射場に共通すること
例えば、アメリカのスペースシャトル発射基地「ケネディ宇宙センター」はフロリダ州にあります。
フロリダはアメリカの中ではかなり南寄り、つまり赤道に近い場所です。
日本の「種子島宇宙センター」も、国内で最も赤道に近い場所のひとつにあります。
地形や安全面などの理由もありますが、「赤道に近い」という条件はどの国でも重視されているんですね。
こういう話題を通して、「地球が回っている」ことが、実感としてつかめるようになるのは面白いところです。
勉強って、“ちょっとした疑問”からおもしろくなる
教科書には「地球の自転」や「遠心力」といった単元は出てきますが、そこから「宇宙開発」や「発射地点の選び方」まで話がつながることは、あまりありません。
でも、物理って本来は「なんでこうなるんだろう?」という疑問から始まる学問です。
僕の授業では、こういった“雑談のようで雑談じゃない”話題も大切にしています。
生徒が「へえ、そんな理由があるんだ」と思ってくれたとき、物理へのハードルが少し下がったような気がするんです。
学校の授業が難しく感じられるときこそ、こういう角度から物理に触れてみるのもいいかもしれません。
おわりに
今回の話は、あくまで授業中の何気ないひとことから始まりました。
こうした「ちょっとした話題」の中にも、学びのきっかけはたくさん潜んでいるんだと、改めて感じています。
もしこの記事を読んで「物理って意外と面白そう」と思ってくれた方がいたら、嬉しいです。
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